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決勝掴むジャッカル。ベン・ガンター「怖いと思われる」けど怖くない?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は昨季トップリーグ決勝時。(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 上腕二頭筋は「チョモランマ」で上腕三頭筋は「メロンパン」。

 民放のニュース番組に登場し、身長195センチ、体重120キロのフィジカリティをこのように紹介された。そのインタビューでは、普段のお茶目な一面ものぞかせた。好きな日本語は「食べたい」と答えた。

 ベン・ガンター。オーストラリア出身でタイ国籍を持つ24歳。初めてプロ契約を結んだ埼玉ワイルドナイツの中心選手として、昨秋、日本代表デビューを果たしている。

 5月22日、東京は秩父宮ラグビー場。加盟するリーグワン1部のプレーオフ準決勝にフランカーで先発する。クボタスピアーズ船橋・東京ベイを24―10で下すまでの間、強靭さを活かしてジャッカル(接点の球に絡むプレー)を連発する。攻守逆転を決めたり、相手の反則を誘ったり。

 試合後はミックスゾーンに現れ、周囲で取材を受ける仲間に目配せをしながら思いを語った。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――たくさんいいジャッカルを決めました。

「確かに非常にいいジャッカルがいくつかありました。ただ、それは他の選手たちがいいタックルをしてくれたおかげです。チームの仕事(の成果)だと思っています」

――前半22分頃、自陣22メートルエリアで球に絡んだところ、相手選手に担ぎ上げられ、地面に落ちました。ビデオ判定の結果、向こうの反則となりましたが、ガンター選手に痛みが伴いそうです。

「まぁ、楽しいことではないですが、あれもラグビーの一部。往々にして起こることです」

――その一撃を食らった後も立ち上がり、プレーを続けました。

「きっと、いまよりも明日の朝、起きた時に身体が痛いのだと思います。S&Cコーチ、メディカルスタッフをはじめ、いいリカバリーをしてくれるスタッフが揃っています。1週間を通して問題なく(次の試合へ)行けると思います」

――続く33分頃には、自陣ゴール前左で相手のモールを崩し、孤立したボール保持者へジャッカル。フランカーでコンビを組むラクラン・ボーシェー選手とともにターンオーバーを決めました。

「私とロッキー(ボーシェー)で球出しを遅らせるのが仕事。それによって、他の選手がラインを整えて前に出られることに…。そうなっていれば、うれしいと思います」

――後半11分頃に敵陣10メートル線付近で繰り出したジャッカルは、だめ押しに近いペナルティーゴールを生み出しました。スコアはここで17―3。

「あのプレーで、もう一度、チームに勢いを取り戻せた。いい仕事ができた」

 今季のワイルドナイツは、レギュラーシーズン実戦全勝。しかもそれは苦境からスタートしての結果だった。開幕時、部内のパンデミック発生により2試合連続で不戦敗を喫している。

「今季はフィジカル面では問題なかった。メンタルの部分でいかに準備するかが大切でした。なぜなら他のチームが試合経験を積むなか、我々は最初の2試合ができなかった。そのあたりで精神面を整えなければいけなかった。パナソニックらしいプレーができたことは、よかったです」

 5月28日、東京・国立競技場で東京サントリーサンゴリアスとの決勝に挑む。昨年度のトップリーグに続き、2連覇が期待される。

「まずは自分のリカバリーに集中。体力を戻す。そして火曜日にチームに戻った時(練習再開時)、チームとしてどう決勝を戦うかにフォーカスしたいです」

――それはそうと、民放のニュース番組。反応はいかがですか?

「日本の番組に出ることも楽しんでいます。私をグラウンドだけで見ると怖いと思われるかもしれませんが、グラウンドの外では周りを笑わせるように心がけています。楽しい人間なんだと見せられたのはよかったです!」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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