Yahoo!ニュース

古巣との再戦に自信? 大物加入報道へは? イーグルス沢木敬介監督かく語りき【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
チームはここまで7勝4敗(写真:つのだよしお/アフロ)

 ジャパンラグビー・リーグワンでプレーオフ行きを争うイーグルスの沢木敬介監督が、4月4日、オンラインで取材に応じた。現在のチームの歩み、現在ファンをにぎわせるファフ・デクラークの獲得報道について触れた。

 日本代表のコーチングコーディネーター、サンゴリアスの指揮官などを歴任した沢木監督は、昨季から現職に就く。前年度は2016年度以来のトップリーグ(リーグワンの前身)8強入りを果たし、今季のリーグワンのディビジョン1では現在12チーム中4位に位置する。

 話題に挙がるデクラークは、南アフリカ代表の正スクラムハーフとしてワールドカップ日本大会を制している。

 国内外の一部メディアは、もともと獲得に名乗りを挙げていたレッドハリケーンズが活動を見直すのを受け、イーグルスが急接近できたとの趣旨で書く。ただし関係者の1人は、イーグルスはレッドハリケーンズよりも先にデクラークへアプローチしていたと匂わせる。現場責任者の沢木はどう語るか。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――第7節からの交流戦ラウンドを振り返って。

「普通に過ごしました。勝てる試合を落としたこともありましたけど、シーズンを通して、そういうことはあることだと思います。それもいい経験として捉えながら」

――レッドハリケーンズとの第9節(3月12日/東京・秩父宮ラグビー場)では、キックオフ早々に田村優主将が身体を痛めましたが、後半15分までプレーしていました。

「僕はもう少し早く代える予定でいたけど、自分で『もう少しやる』と言っていたから。メディカルを通してコミュニケーションは取れていたと思います」

――本人は会見で「先週の試合で怪我をして途中で交代。一生懸命、頑張っている仲間が悔しい思いをしているのを見ていた(ブレイブルーパスに18―21で敗戦)。きょうは試合が決まるまでは頑張りたかった」と話していました。

「そうじゃないですか。そうだと思います」

――現在は欠場中。復帰はいつ頃になりそうですか。

「どうですかね。まだわかんないです。そこは」

――改めて、レッドハリケーンズ戦ではミスが連鎖したことを課題に挙げていましたが、続くヴェルブリッツ戦ではそれが解消されていました(3月18日/秩父宮/20―9で勝利)。

「癖というのは1、2年じゃ治らない。でも、いまのイーグルスのラグビーではボールを回すし、動かす。ミスのリスクはあるけど、そこにチャレンジしていかなきゃいけない。1個のミスで一喜一憂していたら成長できない。(レッドハリケーンズ戦後の1週間は)いいきっかけにはなったと思います」

――交流戦を締めくくる第11節では、古巣のサンゴリアスと対戦。27―40で敗れましたが、沢木監督は試合後の会見で「特別、意識しているわけじゃないですけども、より勝ちたいなという思いはありますね」と話していました(昭和電工ドーム大分)。

「指導してきた選手もいっぱいいますし、楽しみというか…ね。特別に感情を入れているわけじゃないですけど、自分がやってきた、長年いたチームと対戦したら、勝ちたいと思うのは普通じゃないですか。もちろん、他のどのチームに対してもそうなのですけど」

――プレーオフに進めば、再戦の可能性もありますが。

「もう1回やれば、もうちょっといいゲームができるかなと思いますけど。自分のなかで、戦い方がイメージできていますから。どうやって(相手の)強みを出さないようにするか、というのは、イメージがあります。

 システムがああだの、こうだのではなくて…。人数を余られ、ディフェンスを崩されてトライを取られたというよりは――テビタ・タタフの2トライもそうだし、テビタ・リーのトライもそうだし――個人の強さで取られている。そこは、(次回対戦時は)うまいこと対応できる。彼らの前にいいタックラーを置かなきゃいけないです」

――4月9日の第12節では、現在2位のスピアーズと戦います(大阪・万博記念競技場)。第5節(神奈川・ニッパツ三ッ沢球技場)で21-50と敗れた相手ですが…。

「前回の試合では、準備してきたことがほぼ何もできなかった。今回は自分たちが準備してきたことをしっかり出し切る。そうしたら、結果はついてくると思います」

――第5節を落とした直後は、強度の高い練習をより増やしてもよかったと反省していましたが。

「(練習強度の調整は)その週のスケジュールを見ながらのバランスで決めます」

 リーグワンには、選手の代表資格に応じた出場規定がある。他国代表歴のある選手はカテゴリーCと呼ばれ、メンバー23人中3人までが登録される。

 優勝候補の多くは、故障者がいない限りはカテゴリーCの選手を上限いっぱいに並べる。ただし今季のイーグルスのカテゴリーCの選手は、コリー・ヒル、ジェシー・クリエルの2名のみだ。沢木は言う。

「そりゃ、戦力は整っていた方がいいに決まっています。ただ、ないものねだりをしたってしょうがない。僕らは、いまいる全員で成長していかなきゃいけない。それが、一番、大事にしているところです」

 現有戦力の底上げを責務ととらえる。

 その一方で、大物の存在が周囲にもたらす影響も認識する。サンゴリアス時代はジョージ・スミス、マット・ギタウといったオーストラリア代表のレジェンドを擁し、各人の献身ぶりをたたえていた。

 だからだろう。デクラークについて話題が及ぶと、核心には触れないながらも「日本に来たら、盛り上がるんじゃないですか」と述べた。

――デクラーク選手の加入が報じられています。沢木監督の耳にはどの程度の情報が入っていますか。

「…来たらいいんじゃないですか。日本に来たら、盛り上がるんじゃないですか」

――指導するチームにワールドクラスの選手がいるメリットは。

「スタンダード、ロールモデルになってくれるということがあります。『○○の代表だ』といっても、第一線のレギュラーとしてテストマッチに出ているタイプもいれば、代表にはいっているけどなかなか試合に出られないで悔しい思いをしているというタイプもいる。僕は――気にしていないと言ったらおかしいですけど――そこまで選手のカテゴリーを気にしてなくて。ただ、いまのウチには、本当に代表でバリバリに活躍している選手がひとり、必要なのかな、とは思います」

――急上昇中のイーグルスに「バリバリに活躍している選手」が来る意味は。

「圧倒的にパフォーマンスが違うと思うんです、そういう選手って。チームにいいエナジーを与える。それでまた、外国人のなかでも競争が生まれる。いい刺激になる。(それぞれが試合に)出た時の活躍度合いにこだわるんじゃないですか。出て、いいプレーをする、というね」

 一般論として、選手の獲得は現場ではなくマネジメントサイドが決める。そのため今度の問答が、そのままデクラークのイーグルス行きを決定づけるものではない。

 ただ、いまのイーグルス側は、今回の報道を肯定こそしないまでも否定はしないとのスタンスを貫いている。

 ファン待望の来日、実現なるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事