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屈指の好カードの見どころは? &ディビジョン1第6節ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
写真右が今季新加入のコロインベテ。破壊力抜群。(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 ラグビーのリーグワンにあって、新型コロナウイルスの話題は避けて通れない。

 2月20、21日にあったディビジョン1の第6節では、なんと6試合中4試合がウイルス禍の影響で中止。特に、関係者がコントロールしづらいと話すメンバー発表後の陽性者発覚が3例あり、まだ今季開幕後の感染事例がないチームはかえって戦々恐々とする。

 ちなみにこの第6節からは、異なるカンファレンスのクラブ同士がぶつかる交流戦が始まった。同じカンファレンスの対戦はホストゲーム、ビジターゲームの2試合ずつが組まれるが、交流戦は一発勝負だ。

 スピアーズの立川理道主将は、26日のヴェルブリッツ戦(東京・江戸川陸上競技場)へ意気込む。

「今季1回の戦いになる可能性もある。しっかりと勝ち切りたいと思っています」

 本稿執筆時の24日時点では、6試合中5試合が開催予定。接戦必至の好カードが多く、昨季のトップリーグで4強同士というスピアーズとヴェルブリッツの80分もそのひとつだ。

 両者は、中心選手の特徴とクラブのスタイルがやや類似しているような。いずれも、テンポの遅い展開にも向く強力フォワードを擁しながら、多彩なスキルでテンポよく攻める思想を貫かんとする。いつ蹴るか、いつ走るかといった状況判断、自陣ゴール前に入られた際の危機回避が勝敗を分けるか。

 もちろん、接点での衝突も見ものだ。特に、スピアーズのフッカー、マルコム・マークスのジャッカル、同ロック、ルアン・ボタのチョークタックル、ヴェルブリッツのピーターステフ・デュトイのハードタックルとワークレートは圧巻。入場料の価値を高めそうだ。

 世界的な大物が確たる理念のもと駆動するのは、昨季のファイナリストも同じだ。

 最後のトップリーグ王者となったワイルドナイツと、同リーグでワイルドナイツなどと同じく最多タイとなる5度の優勝を誇ったサンゴリアス。この2チームもまた、26日の第7節でぶつかり合う。場所は埼玉・熊谷ラグビー場だ。

 複層的な総攻撃が得意なサンゴリアスと一枚岩の堅守を誇るワイルドナイツ。国内屈指の鉾と盾の対決である。

 サンゴリアスのインサイドセンターの中村亮土、ダミアン・マッケンジーが防御を引き付けながら外側、裏側のスペースを活かそうとするのに対し、ワイルドナイツの各人がいかにそのスペースを埋めたり、相手をおびき寄せたりできるか(アウトサイドセンター、ディラン・ライリーの守備範囲!)。

 当日のレフリングへの対応も含め、無形の駆け引きすら注目の対象となる。

 今季はサンゴリアスが中盤戦で多くの主力を欠場させ、かたやワイルドナイツは開幕から初戦が不戦敗と、両者の仕上がりは未知数だ。

 登録メンバーの顔ぶれを見渡せば、不戦勝を含め5戦全勝のサンゴリアスがほぼベストメンバーに映る傍ら、ワイルドナイツは最後の砦を担うフルバックの野口竜司が隊列から離れている。

 スタンドオフが本職の山沢拓也をフルバックに回して対応を試みる。このチャレンジが吉と出れば、この試合の結果はもちろん今後のワイルドナイツを大きく前進させそうだ。

<ディビジョン1第6節 私的ベストフィフティーン>

1、岡部崇人(イーグルス)…ブルーレヴズを相手にスクラムで好プッシュ。28-18で勝つまでの間、モールの推進役、タックラーとして存在感を示した。

2、堀江翔太(ワイルドナイツ)…ブレイブルーパスと後半途中まで18-18と接戦した。後半から登場すると、後述のピアスの突進を正面から受け止めスクラムを安定化。敵陣ゴール前で味方のオフロードパスをもらい、タックルされて孤立するとみるや相手から球を隠すような倒れ方をした。絶妙。

3、松岡将大(イーグルス)…試合開始早々にベンチから緊急投入されながら、スクラムを安定させた。自陣深い位置での強烈なタックルも光った。

4、コリー・ヒル(イーグルス)…自陣ゴール前で相手ボールラインアウトをスティール。自軍セットプレーでも軸をなした。

5、ジェイコブ・ピアス(ブレイブルーパス)…何度もターンオーバー。

6、マット・トッド(ブレイブルーパス)…要所でジャッカル。反則を誘う。相手を押し返すタックルもあった。

7、三村勇飛丸(ブルーレヴズ)…鋭い出足で刺されば相手のミスを誘発。キックオフ早々のアマナキ・レレイ・マフィへのタックルが、前節の大量失点の記憶を払しょくさせるきっかけとなった。

8、コーパス・ファンダイク(イーグルス)…相手の攻めのテンポを鈍らせるチョークタックル、相手をタッチラインの外へ押し出すロータックル、突進。

9、小川高廣(ブレイブルーパス)…鋭いランからトライを演出。長距離のペナルティーゴールの成功で王者と接戦した。

10、田村優(イーグルス)…前半は一時13人でプレーも、敵陣でのスローな試合展開を促し乗り切った。後半は、50/22ルールを利してのキックなどで好機を創出。

11、マリカ・コロインベテ(ワイルドナイツ)…豊かなスピードとパワーは2トライ、強烈なタックルに活きた。後半29分のライリーの勝ち越しトライが生まれたのは、敵陣ゴール前中央の接点でコロインベテがビアスのチョークタックルで締め上げられながら、何とかひざをついてピアスのタックル成立(その場を離れなければ反を取られる状態)を促したのがきっかけ。

12、ティム・ベイトマン(ブレイブルーパス)…鋭い出足の防御、味方のミスボールへの反応。

13、ディラン・ライリー(ワイルドナイツ)…広い守備範囲。死角で球をもらってトライ。

14、マロ・ツイタマ(ブルーレヴズ)…接点脇を駆け抜ける走りでトライ。

15、奥村翔(ブルーレヴズ)…カウンターアタックの際の巧みなフットワーク。相手キックを受けての蹴り返しで首尾よく陣地を獲得。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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