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帝京大学、京都産業大学との接戦で日本一を確信?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真左が細木(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 帝京大学ラグビー部は1月2日、大学選手権の準決勝で京都産業大学に37―30で勝利。9連覇を達成した2017年度以来11度目の決勝進出を果たし、史上10回目の日本一を狙う。

 この日は関西王者のひたむきさに手こずり、前半を10―23とリードされる。しかしねじを締めた後半は着実に加点し、残り2分で勝ち越した。

 試合後、岩出雅之監督と細木康太郎主将が2年の奥井章仁とともに会見。一時的に故障で戦列を離れていた細木は、この日の後半20分に途中出場していた。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

岩出監督

「スコア、試合の流れが、そのまま選手たちの今日の心の状態(と一緒)と言いますか…。気持ちは入っているし、素晴らしいグラウンドでできることで前向きな状態でしたが、ここまで厳しいゲームを体験していなかったので、そこからくる隙というか、全てが悪いわけではなくて、少しの隙を指導者としては恐れていました。ただ、そこを突っつきたくなかったというか、厳しさの方が出てくれるように期待をして臨んだのですが、まぁ、予想通りというか、予想以上に、京都産業大学さんの勢いがあった。そこに、なかなか厳しさを持てたタックルがなかった。それに尽きると思います。

 ハーフタイム。もう1度自分でできることを見直して、きちっとしたプレーをしようと送り出しました。その通り、建て直してくれて、前半を取り返すだけの根気強さを示してくれた。きょうのゲームは次の決勝戦に向けて、欠かすことのできないゲームだったのではないでしょうか。京都産業大学さんが、我々を厳しいプレーヤーの集まりにしてくれたと思います。成長できる、内容のあるゲームだったと思っています」

細木

「本日の試合といたしましては、負けたら終わりのトーナメントで、ファイナルに駒を進めたい気持ちもありますが、まずは目の前の試合に、京都産業大学さんとの戦いに集中しようと意識し、臨みました。

 監督が仰ったように、自分たちの甘い部分、隙、気を抜いてしまう部分が多くあって、前半をリードされて、ハーフタイムを迎えたのですが、グラウンドに立っている選手たちがポイントを押さえて話してくれていた。後半は、前半と違うチームになって出ていこうという風に出て言った。後半から痛いところ、苦しいところにがつがつ行けるようなチームになれたかなと思った。

 結果として点数で勝ち越しできたというのも、自分たちの力を信じてやり抜いた結果。自信になるゲームだと思いました」

——後半20分に登場。

細木

「僕がグラウンドに入る前から、グラウンドに立っている選手というのは前半と違う雰囲気になっていて、僕がグラウンドに入ってからは僕の復帰戦ということもあって温かく迎え入れてくれて。その時の皆の顔は、『ここから勝負だ』。何ひとつ負ける気のしない空気感で、僕としてはここに立っている選手全員で勝てると思いながらいました」

——細木選手の投入時期について。

岩出監督

「できたら、本人は10~15分と、僕は5分で済ませてしまおうと思っていました。正直に言って。ただゲームの状態を見て、持ち時間を考えて、クロスゲームのなかで、そこが一番の分かれ道かなと思い、細木には20分間出るということでアップをしっかりするようにと言っていました。そうは言っても入れ替えには時間がかかるのですが、その通りのチャンスが来た(敵陣ゴール前でのスクラムのシーン)。『持っているな』と。帝京大学としても、勝利を確信できるようないい出番だったと思います」

——本人の出場希望時間は10~15分。意外に聞こえる。

細木

「体力的な面、僕ひとりが投入されることでリズムが崩れるのではということで、不安なところはありました。ただ、ハーフタイムが終わってから『20分から行く』と言われ、僕自身、気持ちを整理して、最後の最終調整という形で色んなコミュニケーションを取って、いい感じでゲームに入り、溶け込めたかなと。

 先週の練習からスクラムのライブ練習に参加していて。きょうは久しぶりに帝京大学の味方ではない相手とスクラムを組んだ。僕は本当にスクラムにプライドに持っているので、ゲームの緊張感、プレッシャーの受け方、色んな駆け引きがあるなかで、勝とうという思いでした。あと、やはり、面白いなぁ、楽しいなぁとも。レフリーのクラウチ、バインド、セットのコールを聞きながら、色んな感情がわきました」

——スクラムについて。

細木

「京都産業大学さんのスクラムは少し、変わっていて。3番と2番(右プロップとフッカー)のバインドのところで(前に出ている)3番が勝負を仕掛けるスクラムだと分析していて。その通り、京都産業大学さんの3番の選手が動いてきて、それに僕たちは対応できず、揺れてしまった。組み込めることが少なかった。僕が入ってからは、そのスクラムの全体的なムーブメントを止めようという思いで、止められるような姿勢と方向性を、2番の江良颯、1番の照内寿明、後半から入ってきた津村大志とのショートなトークで話して、最後の方は少し安定できたと思います」

——試合後、相手の右プロップの平野叶翔主将と話していた。

細木

「試合中のスクラムの話を少ししていて、お互いプライドがあったなかでレフリーさんの介入があったり、うまく自分たちの形で組めないことがあったりしたので、冗談交じりで『どっちが動いてたじゃん』っていう話をしながら…」

岩出監督

「あまり余計なことは…(一同、笑う)」

細木

「…まぁ、スクラムの話をしていて。平野君は負けたチームの主将として、僕に『頑張れよ。スクラム強かった』と声をかけてくれた。僕だったら負けに打ちひしがれて何も言えなかったかなと。(平野は)心の強い主将だなと思いました」

——リハビリ期間中は。

細木

「チームの助けがあってラグビーをしている。感謝しかないです。出たい気持ちもあったのですが、また受傷してしまうとそれまでのサポートが無駄になってしまう。サポートが身に沁みるなか、きちんとしたプロセスを踏んで、ゲームに復帰したいなと思い、復帰できました」

——次の決勝戦では明治大学と対戦する。

細木

「明治大学さんだからと言って僕たちが変えることはなくて、帝京大のプライドを持って、1年間積み上げてきたものをゲームで出すだけだと思っています」

岩出

「…その通りです。一番のプレーを生み出す芯の部分をしっかりさせるのが大事。その意味で今日は、素晴らしい、我々に必要なことをいただいたゲームだと思います。(決勝も)気持ちを作って臨みたいなと」

——4大会ぶりの選手権決勝戦。9連覇時代と比較してどうか。

岩出監督

「そこは比べなくてもいいのかなと思っています。時々はそういう話はしたこともありますが、そんなに意識しない。(現在の学生は)知らないし、その話はしていません(両隣頷く)。強いて言えば、連覇のキャプテンも素晴らしいキャプテンばかりでしたが――これは比べるつもりではなくて――細木のキャプテンシーはチームを逞しくしてくれている。それに尽きるかなと。

 3年間、決勝戦に出られなかった。そのうち2回はベスト4なのですが、低迷とか言われるので(一同、笑う)。そうか、やはり連覇というのは自分たちで(ハードルを)上げるところを上げてしまった。光栄なことなのですが。

 誰しも負けを望んでいるわけではないですし、勝ち上がっていかなくてはいけないという刺激にはなっている。冗談っぽく言ったことなので、大丈夫です。

 ファイナルのステージでできる。学生たちの頑張りを称えたい。ファイナルの素晴らしさをすでに感じているんじゃないかと思います。目の前のことにしっかりと視線を向けて、喜び、(決勝では)今季で一番、元気な状態で、やってきたことを出す。それと学生にはまだまだ未来があるので、成長できていると実感できるようにしたいです」

 苦しいゲームをものにする、貴重な経験を積めた。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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