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日本代表、スコットランド代表戦復調のなぜ。徳永祥尭は「選手主導で」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ポルトガル代表戦では先発(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

 今年約1年8か月ぶりに活動を再開させたラグビー日本代表は、強豪国との試合を全て落とすも最終戦で意地を示していた。

 11月20日、敵地エディンバラのマレーフィールドでスコットランド代表に20―29と応戦した。

 勝利を目指していたとあり陣営は「満足ではない」と振り返るが、同日6日のアイルランド代表戦(ダブリン・アビバスタジアム)は5―60で大敗しており、控え組も多く出ていたポルトガル代表戦(エスタディオ・シダーデ・デ・コインブラ)は38―25と接戦を強いられていた。復調の背景は興味の対象となった。

「アイルランド代表にぼろ負けした後…」

 当時の様子を振り返るのは徳永祥尭。熾烈なフォワード第3列の争いに参加し、秋のツアーで4試合中3試合に出場(うち先発1試合)した29歳だ。

 2019年のワールドカップ日本大会でも、出番こそなかったものの給水係を全うして史上初の8強入りを果たしている。肉弾戦での力強さやグラウンド内外での状況判断力に定評がある。

 話をしたのは12月20日。来年1月からのジャパンラグビーリーグワンのプレスカンファレンスに、東芝ブレイブルーパス東京の代表として参加していた。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——まず、東芝でのことを伺います。18日には、東京サントリーサンゴリアスとの練習試合を29―22で制しています。相手は昨季のトップリーグで準優勝しており、今度の開幕戦でもぶつかります。

「(それまで)負けが続いていたなかで強い相手に勝てた。自信に繋がると思います。やっているなかでも、自分たちにフォーカスしていた。反則、セットプレーの部分でいい改善が見られた。その週にすごくいい練習ができたので、やっていることが間違えていなかったという意味でもポジティブでした」

——スクラムと言えば、昨季は開幕前に湯原祐希コーチが急逝されたことで選手同士での強化が必要でした。今季のスクラムの構築には、どんなアプローチで臨んでいますか。

「シーズン入り前に1個、1個、ポジション別の役割、組み方というベースの部分を積み上げてきて、いま、形になってきている。プラスアルファで、フロントロー(最前列)が早めに出てきて個人練を。地道な努力が、大きいです」

——徳永選手は、9月下旬から11月まで代表活動に参加していました。東芝への合流時期は。

「12月13日に合流。今週末も(練習)試合があります(25日に埼玉パナソニックワイルドナイツと対戦)。出る機会があればしっかりやりたいです」

——秋には、夏に加われなかった代表活動に参加しました。

「ああいうハイレベルなところでやれると成長できます。ブレイクダウンで圧力をかけて、ターンオーバーを狙う。それが、テストマッチレベルでできた。自信を持てた。リーグワンに繋げたいです」

——10月23日のオーストラリア代表戦。試合終了間際のターンオーバーは見事でした。

「あれは、たまたまです。感覚がよかったっす」

——4試合を総括すれば。

「もう1回、自分のスタンダードを上げなくてはいけないという気付きになりました。全ての面で、です。準備、パフォーマンス…。求められる部分が高いので。特に、準備の部分が大事かなと思います」

——日本代表で求められる「準備」とは。

「自分から(戦術などを)学習すること、リカバリー…。それを個人で終わらせるんじゃなく、チームに(共有するなど)いい影響をもたらすことも大事です」

——自分も周りも高められる選手が、ファーストジャージィを託されている。

「日本代表にいる選手は、皆、自分からやる選手ばっかりです。そのなかでちゃんとしていても、環境が戻るとその場に慣れちゃうものなので、そうならないようにという思いが強いです」

——東芝でも、代表帯同期間中のような姿でありたい。

「そうですね。同じように。そういう積み重ね、ルーティーンが、自分にとってよかったのかなと思います。代表でも試合に出た時はそれなりのパフォーマンスができたので」

——その代表活動では、最後のスコットランド代表戦で劇的にチームの動きがよくなった印象です。何がありましたか。

「見てもらってわかるように、ポルトガル代表戦まではディシプリンでの自滅が多かった(反則数が2桁)。そこを修正したのと、さらに、選手達がもう1回、自分たちで動くようになりました。相手の分析などで、です。もともとそうしてきてはいたのですが、(副キャプテンの中村)亮土さんから『2019年の時は、もっと俺らでドライブできてたよな?』という話があり、その通りだなと。そこから、コーチに言われるのではなく自分たちで分析して自分たちで動いて…と、選手主導でできたと思います」

——中村選手の話があったのは。

「アイルランド代表にぼろ負けした後です」

——その話の後、具体的に何をしたのですか。

「それまでもやっていたことの質が、より、上がったというか。例えばですが、メンバー外とメンバーに分かれてアタック&ディフェンス(実戦練習)をする時、(メンバー外は)相手のやってくるアタックのムーブを分析したうえで、『誰が何番(の役割を)やる』という細かいところまで落とし込んで、数少ない練習で相手のストラクチャーアタック、特徴的なディフェンスをやるようになりました」

——やはり、日本代表は本当の意味でハードワークのチームだと感じさせられます。

「ハードワークのなかに、自分がやることの意味、役割を持っておかなきゃいけないと改めて思いました」

 リーグワンは各クラブの事業化、社会化を求める。東芝はチームの法人化に踏み切っており、徳永は「(選手と)マネジメントとの連係は取りやすくなった。いままでは承認を得るのに色んな所を経由しなくてはいけなかったところが円滑になった」。ゆくゆくは、ファンクラブ会員の限定グッズを選手達で考案できたらとも話す。

 8日に東京・味の素スタジアムで、東京サントリーサンゴリアスとの初戦をおこなう。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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