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ジャパンラグビーリーグワン、発足。議論紛糾も「次の制度設計へレビューを」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
24チームの顔ぶれ

 国内ラグビーの新リーグ発足会見が7月16日に都内であり、新リーグの名称は「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE(ジャパンラグビーリーグワン=リーグワン)」に決まったと発表された。

 森重隆氏(日本ラグビーフットボール協会=JRFU会長/一般社団法人ジャパンラグビートップリーグ=JRTL理事長)、東海林一氏(JRTL専務理事)、太田治氏(JRTL業務執行理事)、池口徳也氏(JRFU共同最高事業統括責任者/JRTL理事)が都内で会見した。

 従前のトップリーグは発展的解消。かねて新リーグに参戦を希望していた24チームのチーム名、ディビジョン分け、リーグ概要も以下の通りにリリースされた。

<チーム名およびディビジョン>

■ディビジョン1=12チーム

グリーンロケッツ東葛(旧NEC)

シャイニングアークス東京ベイ浦安(旧NTTコミュニケーションズ)

NTTドコモレッドハリケーンズ大阪

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

コベルコ神戸スティーラーズ(旧神戸製鋼)

埼玉ワイルドナイツ(旧パナソニック)

静岡ブルーレヴズ(旧ヤマハ発動機)

東京サンゴリアス(旧サントリー)

東芝ブレイブルーパス東京

トヨタヴェルブリッツ(旧トヨタ自動車)

横浜キヤノンイーグルス

ブラックラムズ東京(旧リコー)

■ディビジョン2部=6チーム

釜石シーウェイブス

花園近鉄ライナーズ

日野レッドドルフィンズ

スカイアクティブズ広島(旧マツダ)

三重ホンダヒート

三菱重工相模原ダイナボアーズ

■ディビジョン3部=6チーム

九州電力キューデンヴォルテクス

クリタウォーターガッシュ昭島

清水建設江東ブルーシャークス

中国電力レッドレグリオンズ

豊田自動織機シャトルズ愛知

宗像サニックスブルース

<大会フォーマット>

 今度のジャパンラグビーリーグワンでは、各クラブに収益化を要求。ディビジョン分けの際は競技力に加え、自治体との連係度合い、ホームスタジアムの有無や使用頻度の見込み、小中学生向けてのアカデミーの有無や稼働実態が審査対象となっていた。

 ここ数週間、情報発信のあり方で課題が生じていたのを受けてか、森氏、池口氏らは日本ラグビー協会の定例理事会があった14日、オンラインで取材に応じていた。

 今回の会見でも、14日に説明した内容を繰り返し強調。紛糾したディビジョン分けや理念の崇高さとその伝わり方とのミスマッチについて、改めて説明がなされた。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——ディビジョン1上位2チームが参加するとされる「クロスボーダーマッチ」について。

太田

「クロスボーダーにつきましては相手のあることで、交渉中でございまして。南半球と交渉しています。コロナの状況の中、先方とスケジュールを交渉している」

——「クロスボーダーマッチ」に「ディビジョン1の上位2チーム」以外が出ることは絶対にないという認識で間違いないか。

太田

「いまのところは2チームと設定しています。将来的にはわかりませんが、初年度は2チームを予定しています。ただ、相手のことがありますので変更がある」

——ホストエリアの偏り、ホストスタジアムの発表がなかった点について。

東海林

「ホストエリアはチームの皆様が活動を広げていただくラグビーの商圏。大切に考えています。現時点では(エリアに)重なりがある。最初の3年間を色々な試行錯誤を進める期間(フェーズ1と定義)として定め、各チームの取り組みによって適切な見直しを考えさせていただいています。ホストスタジアムは各チームで定義を進めさせていただいている。準備期間の問題から、初年度に(ホストスタジアムを)十分に獲得できないことはある。こちらにつきましても、3年間でリーグもサポートさせていただきながら、獲得に動いていただく次第です」

——JRTL理事長とJRFU会長が兼任。利益相反の指摘も生まれかねない。

東海林

「現時点ではJRFUとJRTLの定款により、森理事長が協会会長を兼務することは問題ない。今後はリーグの発展とともに検討していくことはある」

——フェーズ1では競技力重視、フェーズ2では事業性を打ち出すとのこと。フェーズ2ではどこに着眼点を置くか。

池口

「今回の24チームとも、基礎参入という要件は満たしていただいていて、ディビジョン間の入れ替えは競技力で定める。そうしていきながら、リーグ全体の事業性を高めたいと考えています。

 そして、その先に置いて重要視をする部分と申しましては、リーグ、もしくはラグビー界全体として大きいのは、スタジアム確保だと考えています。

 これは各参入チームのみならず、今回の新リーグであるジャパンラグビーリーグワンもそうですし、JRFUとしても、ラグビーで活用できるスタジアムを確保し、そこを中心として、各チームに事業性を高めていただく。それをこの3年間で進めたいと考えています。明確な数字目標は現段階では確定していません。基礎参入要件の変更はありませんが、この先どんな事業、社会連係のあり方があるかを、試行錯誤をしながら定めたいと思っています」

——ディビジョン分けでは事業性を重視しながら、入替戦は競技力のみの判断となったわけは。

池口

「今回のディビジョン分けにつきましては、審査基準のなかでも競技力、事業性、社会性の3つのバランスを持った形で基礎参入をしていただく、という形で定めました。当然、事業力、社会性を含め、それが最終的にはチームの力になっていくと想定しました。

 今回のディビジョン分けについてはその3点のバランスを見ました。逆に言うと、過去の戦績、過去の力というより、未来における力というもの、その潜在力を、事業性、社会性とともに評価させていただいたのが、今回の審査となります。

 よって、今後3年間においては、リーグ、各チームともさまざまな制度設計をしていくなか、チームが競技力を高めつつ、その間、リーグがいわゆる単純な競技力以外の参入要件を、ライセンスの制度に発展させていくという風にさせていただきたい」

——14日にご説明いただいた最終審査の過程について、改めて。

池口

「14日もご説明させていただいた通り、審査委員会から(順位の)決定ではなくて、報告を、いただきました。その報告で示されている審査の順位等、審査の内容について、ラグビー協会として検証をおこなわせていただきました。今回はこの発表を含め、できるだけ早く審査を確定させよう…。その時間軸のなかで、動かせていただきました。審査の報告をいただいたものについて、JRFU内のなかでは何か特別な第三者委員会のようなものは作っておりませんで、森会長と中立的な検証をさせていただく補助の弁護士の方を入れ、検証させていただいた。そのなかでいくつか、各チームに事前にお示しさせていただいている評価方法、配点方法などを、実際の審査委員会が作ったものに、一部、整合の取れない部分が(あると)指摘があり、審査委員会と協議をさせていただきました。その協議のうえで最終決定については『JRFUで定めます』と審査委員会と確認を取って、再計算をして、審査を確定させた」

——それを、審査委員会に差し戻しをせずに森会長らがおこなった理由は。

池口

「ひとつは、時間です。ディビジョン分けを早く決定し、お知らせをする(のを目指した)。今回、各チームの皆様にお知らせできたのが7月2日。審査委員の最終業務が6月末でした。6月末までその協議をして、最終的な決定はJRFUでおこなうと、最終確認をしたということです」

——2日前のブリーフィングで入れ替わった箇所がある。最終段階で入れ替わったチームには個別に説明して、了承は得ているのか。

池口

「誤解があるといけないと思うので、審査委員会からは『結果』とか『ディビジョン分け』という形の報告はなく、『その段階においての審査結果の順位』をいただいております。そこから14日にも説明したプロセスを経て、JRFUとして最終順位を決定しました。

途中から審査委員会に示される報告は、対チームには開示されておりません。

あくまで審査委員会、JRFUとしての途中経過とさせていただいております。その現象、結果、過程において、中間報告、途中段階で常に順位は変わっていますが、その都度、順位は皆さまにはお知らせしておらず(12月までの途中順位は各々の順位のみ通告)、あくまで最終結果としてお知らせさせていただいた次第です。ストレートに言うと、それによって順位が変わったところについてご了解をいただいているかといったところでいえば、そのようなことはしておりません」

——リーグの理念そのものは素晴らしく映るなか、伝わってくるのは後ろ向きな情報ばかり。ファンも不満を募らせ、あるチームのスタッフはこのことを「本当にもったいない」と指摘しています。現状をどうとらえ、どんな改善点を用意したいと考えるか。

池口

「これまで新リーグの準備、審査を含め、ファンの皆様への情報発信が少なく、様々な疑問であったり、期待をしていただいているにもかかわらずそうしたコミュニケーションが不十分であったことはご指摘の通りだと思います。審査という性質上、その内容について対外的に公表していくことはなかなか難しい性質のものでありますが、このリーグが目指すもの、理念のうえで審査も、リーグの準備もありました。きょう、この対外発表をさせていただいた後、できる限りの情報発信、ファン、メディアの皆様とのコミュニケーションをより深く、頻度高くやらせていただきたいと思います」

東海林

「本日ご説明しております理念は、リーグが作ったのでなく、4月以降の共同検討委員会にチームの皆様の参画していただき、共同作業で作ったものです。チームの皆様、ご支援をいただいている企業のチームの皆様とも様々な議論をし、協業についてご相談をさせていただいているところです。この発表を機に、取り組みがさらに加速するようリードしたい」

——今回の審査が公正におこなわれたかどうかを検証する第三者委員会の設置はしないか。

池口

「現段階で第三者委員会を新たに設置をする予定はございません。一方で一昨日JRFUのブリーフィングでもお話した通り、今回の審査は難しいものであり、リーグ、ラグビー協会としてこれをしっかりとしたライセンスという制度に昇華させる必要がある。それに向けて今回おこなわれた審査について、全てのものが完ぺきではなかったところはある。自ら次の制度設計へ向けてレビューをし、次の課題があればチームの皆様にも共有する形で進めたいと思っています」

 会見は1時間の予定も、池口氏が「時間があれば」と追加の質問を受け付けたことで約80分となった。

 本欄では別記事により、複数の取材を総合した決定までの流れを報告する。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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