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「ベン・ガンターなぜ入らない?」の解から哲学。日本代表、アイルランド代表戦へ【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
B&Iライオンズ戦で光った齋藤。パスの精度と運動量に期待(写真提供=JRFU)

 ラグビー日本代表は7月3日、敵地ダブリン・アビバスタジアムでアイルランド代表と戦う。

 日本時間1日夜、出場メンバーを発表。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが会見した。

 チームは今年5月下旬、約1年7か月ぶりの活動再開が叶っていた。アイルランド代表との通算戦績は1勝7敗。2019年のワールドカップ日本大会で対戦時、19―12のスコアで初勝利を挙げている。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「アイルランドに来て、いい週を迎えられています。ブリティッシュ&アイリッシュ・(B&I)ライオンズ戦(後述)で学んだことがたくさんある。自分たちにとって大きなチャレンジ。アイルランド代表はホームゲームでの勝率は84~5パーセントです。楽しみな気持ちです。

オンライン会見に応じるジョセフ(スクリーンショットは筆者撮影)
オンライン会見に応じるジョセフ(スクリーンショットは筆者撮影)

 本当にアイルランド代表は自分たちを誇りに思っている。相手はスタートのところでかなりアタックしてくる。若い選手がチャンスをもらえていて、新しいコーチ陣もいる。自分たちとしてはいい準備をして戦いたいです。

自分たちは毎試合、変わらず、自分たちのラグビーをする。ただし相手が変わることで、やるべきことに多少の変化があります。B&Iライオンズに対し、アイルランド代表は長い期間、準備しているチームです。自分たちのなかでも変更を加えなければいけない点もある」

 メンバーは以下の通り。

★は6月26日のB&Iライオンズ戦の先発メンバー

※は8強入りしたワールドカップ日本大会の登録メンバー

◎は主将

( )内は身長/体重/キャップ数=代表戦出場数

1 稲垣啓太(186/116/35)★※

2 坂手淳史(180/104/22)★※

3 具智元(183/118/14)★※

4 ヴィンピー・ファンデルヴァルト(188/112/7)★※

5 ジェームス・ムーア(195/110/9)★※

6 リーチ マイケル(189/113/69)★※◎

7 ピーター・ラブスカフニ(189/106/9)★※

8 姫野和樹(187/112/18)※

9 齋藤直人(165/73/1)

10 田村優(181/92/64)★※

11 シオサイア・フィフィタ(187/105/1)★

12 中村亮土(181/92/25)★※

13 ラファエレ ティモシー(186/100/24)★※

14 セミシ・マシレワ(184/93/―)

15 松島幸太朗(178/88/40)★※

16 堀越康介(175/100/2)

17 クレイグ・ミラー(186/116/1)

18 ヴァル アサエリ愛(187/115/15)※

19 ジャック・コーネルセン(195/110/1)

20 テビタ・タタフ(183/124/4)

21 茂野海人(170/75/11)★※

22 松田力也(181/92/24)※

23 シェーン・ゲイツ(183/95/―)

 6月26日にはエディンバラ・マレーフィールドでイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの名手からなるB&Iライオンズと対戦。8強入りした2019年のワールドカップ日本大会に登録されたメンバーを14名、先発させるも、10―28で惜敗した。

 今回は先発を3名、入れ替え。日本大会組でニュージーランドのハイランダーズ所属の姫野がナンバーエイト、姫野とともにB&Iライオンズ戦でインパクトを与えた齋藤直人がスクラムハーフ、今回が代表デビューとなるセミシ・マシレワがウイングでそれぞれ先発。B&Iライオンズ戦でウイングだった松島は本職のフルバックに回った。

 ジョセフは会見では、出場選手の配列に関して問われた。

――齋藤選手について。

「前回、素晴らしい試合をした。彼のエナジー、判断を評価しています。これから先発としてプレッシャーがかかると思うが、ポテンシャル、可能性を見たい。彼にとって大きな試合になると思います。

 彼に特別に何かを期待するというより、9番として自分の仕事をしてもらうことを求めます。ラン、パスを精度高く。B&Iライオンズ戦という大きな試合で、若い選手であるように見せないプレーをしてくれたことには感心しています。

 田村はB&Iライオンズ戦でいい活躍をしてくれた。練習でも齋藤選手とのコンビネーションがいい」

――マシレワ選手、ゲイツ選手について。

「マシレワ選手は(5月下旬から約2週間の)別府合宿では怪我をして、そのリカバリーを(していた)。ただ、彼のスキルセットは素晴らしい。当日はキッキングゲームが予想されますが、彼はハイボール(捕球)のスキルが素晴らしい。プレッシャーのもとでプレーできるかを見てみたい。

 また今回はリザーブの構成(フォワードとバックスの割合)を6:2から5:3に戻しました。そこでゲイツがミットフィルダーに。トップリーグで素晴らしいプレーをしているが、それをプレッシャー下でできるかを見たい」

――松島選手のフルバック起用について。

「まず、B&Iライオンズ戦でフルバックだった山中亮平はで素晴らしい一貫性のあるプレーをしてくれました。可能性がある選手です。今回は(メンバー外となり)がっかりしていると思います。

 松島は(国内合宿を経ず)直接チームに合流。フランスやサントリーで務めた、彼のプレーのしやすいポジションに。プレッシャーのなかで成長途中のサイア(フィフィタ)と一緒にプレーしてもらうところを見たいとも考え、このメンバーにしました」

 計2試合が組まれた今度のツアーでは、タタフが現体制にあっては初めてとなる代表戦を経験。齋藤、フィフィタとともに2試合連続での出場が叶いそうだ。

 一方、今回、初めて代表資格を得た海外出身者では、プロップのクレイグ・ミラー、ロックのジャック・コーネルセンも初陣を飾り、センターのシェーン・ゲイツもその瞬間に近づいている。

 かたやフランカー兼ナンバーエイトのベン・ガンター、ウイング兼フルバックのゲラード・ファンデンヒーファーの代表デビューは現状ではお預けの様子。特に6月12日の強化試合でも活躍したガンターが選外だったことには、ファン、メディアも驚きを隠さない。

 この話題に触れる際、ジョセフは自らの哲学を明かした。

――ガンター選手、ファンデンヒーファー選手について。

「自分として答えはシンプル。ガンターはリーチ、マフィと、ゲラードと松島と同じ位置です。彼らはその選手よりもいいプレーをしなければ。ここはトップリーグではなくテストマッチ。『ただ単にジャージィを与え、プレーしてもらう』ことではない」

――ガンター選手らについての話を伺うと、「いい選手」と「テストマッチで戦わせたい選手」との間に厳然とした差があるのではと感じさせられます。ジョセフさんは、どんな選手に日本代表のジャージィを与えたいと考えられますか。

「その質問は、狭い考え方ではないでしょうか。彼らは日本代表として活躍していく選手です。彼(ガンター)を入れることによって、キャプテンを外すことになる。彼は、これから活躍する若い、新しい選手です。今後、テストマッチに出てくることはあると考えています。

 B&Iライオンズ戦ではプレッシャーがかかりました。その意味では、タタフは大きなインパクトを出してくれた。彼らには今後の活躍を期待している。出ている選手を評価しているのであって、出ていない選手を評価していないわけではありません」

――改めて、次戦で結果以外に求めるものはありますか。

「本当にB&Iライオンズ戦からの改善点がある。あの日はソフトモーメント、つまり自分たちが気を許した時間帯がありました。その部分は自分たちの組織がオーガナイズできていなかった。ただ、私たちはまだ1ゲームしかしていない。ポジショニングをセットする、オーガナイズする…ということで修正できる。

 B&Iライオンズ戦では4~5回チャンスを作れたが、そこで(プレーの)ミス、判断ミスでトライに繋げられなかった。ライオンズが挙げたトライは自分たちのミスで与えたもの。それを修正するのが重要です。B&Iライオンズ戦はフィジカルでハードな試合でした。その意味では(次戦でも)経験のある選手を使っていくのが重要だと考えています」

 ちなみにアイルランド代表の顔ぶれは以下の通り。ロックのジェームズ・ライアン主将ら日本大会の直接対決時にぶつかった猛者も多く、力強いスコッドと言える。

★はワールドカップ日本大会の日本代表戦登録メンバー

●はワールドカップ日本大会の登録メンバー

◎は主将

1 デイブ・キルコイン(183/111/43) ★●

2 ロナン・ケレハー(183/105/11)

3 フィンレイ・ビーラム(188/119/14)

4 アルタン・ディラン(196/112/18)

5 ジェームズ・ライアン(203/116/35) ◎★●

6 ピーター・オマホニー(191/107/75)★●

7 ジョシュ・バンダーフリアー(183/102/31) ★●

8 ケーラン・ドリス(193/106/7)

9 ジェイミソン・ギブソンパーク(175/80/9)

10 ジョーイ・カーベリー(183/86/22)★●

11 ジェイコブ・ストックデール(191/103/34)★●

12 スチュアート・マクロスキー(193/111/4)

13 クリス・ファレル(191/110/14)★●

14 ジョーダン・ラーマー(178/87/29)★●

15 ヒューゴ・キーナン(185/92/11)

16 ロブ・ハーリング(185/106/21)●

17 エド・バーン(180/114/4)

18 ジョン・ライアン(183/120/23)●

19 ライアン・ベアード(198/112/3)

20 ギャヴィン・クームズ(198/110/―)

21 クレイグ・キャシー(165/76/1)

22 ビリー・バーンズ(183/87/6)

23 シェーン・デイリー(191/92/1)

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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