ラグビー日本代表陣営にとって今回最大級の大仕事のひとつは、相手側にベン・ガンターを派遣したことだろう。

 6月12日、静岡・エコパスタジアム。2019年のワールドカップ日本大会以来の実戦へ臨む。「JAPAN XV」の名儀で、長らく代表の強化機関を担ったサンウルブズに挑む。

 8日まで約2週間実施の別府合宿に最後までいた35名中9名を、サンウルブズへ引き渡していた。

その1人が、今回初代表のガンターだった。

 日本大会組を13名並べた「JAPAN XV」を向こうにタフに突進を重ね、何より、接点で圧をかける。

 4点リードで迎えた前半27分頃には、自陣中盤で低くかがんで向こうの球へ絡む。反則を誘って敵陣深くまで進むと、用意された攻めの形を利してこの日の2トライ目を奪う。3―14。

 挑む側が波乱を起こす雰囲気を醸した一因には、長髪のナンバーエイトが間違いなく挙げられよう。

「チームメイトがいいタックルをしてくれたから、いいジャッカルをするチャンスがあった。皆のおかげでした」

 サンウルブズはガンターのほか、やはり代表勢でロックのヘル ウヴェ、サンウルブズ専任でフランカーのリアキ・モリら海外出身者がグラウンド中央付近で強烈なタックル、ジャッカル、カウンターラックを仕掛ける。

おかげで「JAPAN XV」は球出しを阻まれた。その領域で一定の役割を課されていたフッカーの坂手淳史は、こう反省する。

「最初の20分でテストマッチ(代表戦)のインテンシティ(強度)を…と話していました。ただゲームを進めるなか、最初の1歩の遅れが出て、それが前半に影響したかなと」

 日本代表は26日、ブリティッシュ&アイリッシュライオンズ戦に挑む。相手は欧州4協会の連合軍で、力強い。静岡での80分は結果として、そのリハーサルとしての役割を果たしたのである。ガンターらの奮闘に苦戦を強いられたのは、かえって好都合とも取れた。

 フランカーのリーチ マイケルキャプテンが戦前に「トップリーグを終えてすぐに代表に集まってきたので、体力的には前回(2019年)といまとでは差があって。そこを維持することはできないです。強化しなくちゃいけない」と現実を直視していた一方、インサイドセンターの中村亮土は試合後にこう述べた。

「(きょうは)相手にいいプレーヤーがいたこと、自分たちのサポートが遅れて強度がもっと必要(な状態だった)。そこの2つが重なってプレッシャーを受けたのかなと。今回のレビューを(もとに)改善していくだけです」

 前向きな点には他に、このゲームを逆転で制したことがある。「JAPAN XV」は、32―17のスコアでノーサイドを迎える。

「ハーフタイムには、率直な意見を話した」とジョセフ。送り出された代表戦士は徐々にメンバーを入れ替えながら、蹴り込んだ先への圧力、向こうの反則を誘ってのモールをスコアに繋げる。序盤、大いに手こずった接点でも、突進役がより踏ん張り、サポート役のボールを守ろうと意識して状況を変えられた。

 ジョセフは戦後、「(今後のために)プレッシャーのなかで(試合を)やることが必要だった」とも話していた。実際、チャレンジャーであるサンウルブズとの試合で心理的なプレッシャーがあったのかとの問いに、中村はこう応じる。

「間違いなくサンウルブズよりメンタル的にタフな状況のなかでやらなければいけなかったですし、そこへの準備はしました。ただ、サンウルブズにもいい選手が揃っていたのでうまくいかないことがあった。それも含めて、いい勉強になったと思います」

 今度の「JAPAN XV」は接点の質に加え、前に出る防御の裏へキックを蹴られた際の反応も改善点に挙げる。許した先制点はまさにその形だった。リーチは本質を突く。

「課題はやったことを試合に活かすこと。(練習で)言ってきたことは正しいけど、実行力が足りていない」

 スターターに日本大会組を13名並べたジョセフは、「今まで長い間試合ができていなかったので、コンビネーションが合わない、スムーズにいかない部分があると想定していました」。言葉のニュアンスに即せば、これまで長らく起用してきた経験者への信頼感は保っていそうだ。

 ただしこの午後は、ガンターらサンウルブズ組に加えて「JAPAN XV」の控え組も好アピール。ハーフタイム明けから左プロップのクレイグ・ミラーが突進力を示し、特に後半11分から出たスクラムハーフの齋藤直人がテンポを上げたのも事実だった。

「継続性」と「コネクト」をキーワードに再出発した日本代表は、世界最大級のビッグゲームへ今度の宿題をどう処理するだろうか。