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日本代表の姫野和樹、職場から帰りやすいニュージーランドに学ぶ。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
2019年のワールドカップ日本大会での姫野(写真:アフロ)

 ラグビー日本代表の姫野和樹が、自身のツイッターでこのようにつぶやいた。

 現在はニュージーランドのハイランダーズの一員として、国際リーグのスーパーラグビーに参戦中。今回は、海外でのプレー中に感じた精神的疲労について吐露した。

 6月5日、本拠地のダニーデンでの試合後、オンライン会見でその思いを明かした。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——ワラターズに59―23で勝利。3試合ぶりの先発で後半32分までプレーしました。

「久しぶりに長い時間、試合をしたので疲れました! チームは2位。得点も獲れたし、ただ反省する点もたくさんあったので、次のブランビーズ戦が勝負になると思うので、しっかり疲労をとりながらいい準備をしたいと思います」

——攻守に充実していたようだが。

「そうですね…いい部分も、あまりよくない部分もあった。タックルの精度が低かったのは反省点なので、そこは修正したいと思っていますね、はい」

——3試合ぶりの先発。

「長くプレーできて嬉しい限りではあります。ただ、いい選手がたくさんいて、(控えの)フォワードが(一般よりも)1枚多い戦術がある。プレー時間に関しては、長くもらえたらいいですが、チームが勝つために必要なら60分でもいいし、その60分のなかで自分が出せることを出すことにフォーカスしている。プレー時間は気にしない。リザーブにもリザーブでやることがあるし、チームで勝つことが最優先。与えられた時間で役割、仕事を全うする。それが大事かなと思います」

——コンディションは。

「コンディション的にはいい。身体的にも走れているし、ラグビー勘、試合勘も戻っている。代表に向けてもいいステップアップができているのかなと思っています」

——現在、日本代表も活動を本格化させていますが。

「(グループ)ラインに入っているんで、少なからずの情報はもらっていますけど、ジェイミー(・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ)も『まずはハイランダーズにフォーカスしてやれ』と言われているんで、気にしていないです」

 ここから、当該のツイートについて語る。

——ツイッターで、精神的に苦しかった時期のことを告白していました。

「まぁ、しんどいですよ、やっぱり。ひとりでこっちに来て、悩みを打ち明ける人も近くにいないし、慣れない環境のなかで毎日、毎日、毎週、毎週、結果を残さなきゃいけないなか、自分自身にプレッシャーをかけ、自分の甘えというのを抑え、毎週、毎週、メンタルを作っていくというのが…。日本にいる時よりも私生活でも多くストレスがたくさんあるし、言語も違うなか、心身ともに疲れて…。すごくしんどい時期がありましたけど、いまは『自分にプレッシャーをかけ過ぎていた。プレッシャーをかけるのは大事ですが、かけ過ぎても自分がつぶれちゃう』と、トランスタスマン(5月中旬からのオーストラリアチームとの交流戦)からは自分の結果にはとらわれず『自分がラグビーを楽しめているか』にフォーカスしてやれているので、いまのメンタル状態はいいです。

 コンタクトスポーツなので恐怖と戦って、毎回、毎回、その恐怖に打ち勝つメンタルを慣れない環境のなかで作っていくというのは、日本にいる時よりしんどい部分がありました。

 でも、それは自分が選んだ道だし、そういうことがあるのは自分でもわかっていたんですけど。

 そのなかでもがいて、もがいて。刀でもそうですけど、叩いて、叩いて、叩いて、強くなるという…。狙い通りではあるとは思いますけど」

——これと関連して「ONとOFFの切り替えが大切。NZ(筆者注・ニュージーランド)の選手はそこが上手」ともツイートしています。

「仕事、練習が終わったら帰って家族の時間を大切にする。練習が始まる前はしっかりリラックスする…。そういう風に、プライベートと仕事との区切りをはっきりつけている。

 オフもゴルフをしたりとか、コーヒーしたりとか、ニュージーランドならではの過ごし方で。自然、リラックスする方法がたくさんあるのがニュージーランド。

 ブラウニー(トニー・ブラウンヘッドコーチ、日本代表のアタックコーチでもある)もこっちにいる時はゴルフをよくしていました。他にも午前中にゴルフを8ホール回って、練習が終わったら8ホール回るという選手もいる。

 日本だとそういうことはなかなかない。やっぱり、(職場から)帰りづらかったりするじゃないですか、日本では。でもこっちでは、自分が残ってやりたいのなら残ってやればいいし、帰りたいのなら帰ればいい。個人を尊重していると感じました」

——姫野選手の趣味は。

「カフェめぐりが好きになりました。日本ではスタバしか行っていなかったですが、いろんなカフェがあるので、朝行って朝ごはん食べるというのが趣味になりました」

 自身の心と向き合い、同僚の心との向き合い方に学んでいる。会見ではこんな話題にも触れた。

——専門誌のインタビューで、もし今後スーパーラグビーでプレーするとしてもハイランダーズ以外は選ばないといった趣旨で話されています。意図は。

「普通に、色んなチームを行き来したくない、という。スーパーラグビーならハイランダーズ。愛着があるし、人として一途じゃないのが僕は嫌なので。僕は、ハイランダーズのジャージィを着たのであれば、(今後)スーパ―ラグビーではハイランダーズのジャージィを着る。それが僕のなかの美学というか。ありえないですね、スーパーラグビーの他のチームに行くのは」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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