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日本代表候補入りの茂野海人、落選した後輩へも「今後の活躍に期待」とエール。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
2015年にはニュージーランドの名門、オークランド代表入りを果たした。(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 2021年度のラグビー日本代表候補に選ばれた茂野海人が4月21日、思いを語った。

 攻撃の起点のスクラムハーフを務める茂野は身長170センチ、体重78キロの30歳。身体の強さとテンポのよい球さばきを持ち味とする。

 日本代表には2016年に初選出され、2019年のワールドカップ日本大会でも大会登録メンバー入り。出場こそなかったが、同国史上初の8強入りを叶えた。

 今回は、所属先のトヨタ自動車の共同主将としてオンライン会見へ登壇。選出された感想を問われれば「今季のプレー内容には納得いかないところも」とさらなる向上を誓い、今季好調を維持しながら選から漏れた若手へは「先のことを見ずに目の前のこと(に集中すべき)」とエールを送った。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――2021年度の日本代表候補に名を連ねました。知った経緯とその時の気持ちは。

「知ったタイミングは皆さんと同じで、発表された時です。気持ちとしては…まだ、今季のプレー内容には納得いかないところもあり、個人的にもっと成長しなければいけない部分もあります。プレーオフではさらに成長して、毎試合、毎試合いいプレーをして、結果的に代表(5月24日に発表される35名の正規メンバー)に入れるようにしたいです」

――チームを率いるサイモン・クロンヘッドコーチは、「茂野選手は成長した」と述べています。

「(首を傾げながら)僕自身は全然、納得いってないです。まだまだ。リーダーシップもリードから学んでいる部分が多いですし。他の選手のリーダーシップが向上していて、それがチームの結果にもつながっています。僕自身、プレーもリーダーシップももっと成長させないといけないと、個人的にも思います」

――話題に挙がった前ニュージーランド代表主将のキアラン・リード共同主将からは、何を学んでいますか。

「チームに対しての話し方。どう話せばチームに伝わりやすいか、というところです」

――チームには、オーストラリア代表主将のマイケル・フーパー選手もいます。2人の存在はプラスになっているか。

「プラスにはなっている。ウィリー・ルルー(南アフリカ代表)を含めた経験値のある選手たちが、その経験を若い人に伝えてくれている。これは今後の日本ラグビー界にとっても、ひとつのチームにとってもいいことだと思います」

――ご自身の話に戻します。冒頭で言われていた「成長しなければいけない部分」は、プレー面でもあるのでしょうか。

「ディフェンスでのコミュニケーションで、明確にオーガナイズしたい。またアタックでは、オプションとして相手の脅威になるように」

――とはいえ、今回の代表候補のスクラムハーフで唯一のキャップ(代表戦出場の証)保持者になっています。

「僕自身も、先のことを考えるタイプではない。毎年、毎年、毎試合、毎試合、しっかりいい結果を出す。(ワールドカップフランス大会開催年の)2023年に選ばれる人たちは、その時に一番いい結果を出している人たちだと思う。まず今季いい結果を出して、その先には日本代表があって、そして次の年…という風に考えている。キャップ数はそこまで気にしていない。若い選手は勢いがありますし、観ていてもいいプレーをしている選手が多い。年齢、キャップにかかわらず争っていきたいです」

――チームの主将であれば、自分のいるトヨタ自動車からもっと代表候補が選ばれて欲しかったと思っても不思議ではありません。そのあたりはいかがでしょうか。

「(笑って)ラグビーの試合を観てもらっていればわかると思うんですが、トヨタ自動車の若い選手はすごくいいプレーをしている。でも、今回の代表候補に選ばれていなくても(今後代表に)選ばれる可能性もありますし、どうなるかはわからない。今後の活躍に期待してもらえればいいかなと」

――落選を悔しがる選手と話すことはありましたか。

「若手で言えば、髙橋(汰一)、秋山(大地)などは、ずっと試合にも出て活躍もしています。だから悔しいとは思いますが、前を向いて…(一部、回線の乱れがあった)…そこでいい結果を出せば、今後に繋がる。先のことを見ずに目の前のことをやる。それがチームとしての考え。そこを変わらずにやってもらいたいです」

――日本代表のメンバーといえば、トヨタ自動車所属の姫野和樹選手が注目されます。いまはハイランダーズの一員として、ニュージーランドのスーパーラグビーアオテアロアで活躍しています。

「活躍は見ています。彼がニュージーランドで活躍することは、チームの元気が出る材料になる。姫野も行く前から『自分が向こうで活躍してチームの活力になりたい』と話していて、有言実行してくれている。

 ニュージーランドでルーキー・オブ・ザ・イヤーを狙える位置にいると聞いています。これを獲れば、日本(2017年度のトップリーグで受賞)でも、ニュージーランドでも新人賞を獲れるということ。持っている力を全て出して獲って欲しいです。いなくても、彼の話題は尽きないです」

 今回の取材で話されたように、チームはまもなく国内トップリーグのプレーオフへ参戦。初陣となる25日の2回戦は、東京・秩父宮ラグビー場であり、相手は日野。悲願の優勝に向け、茂野は「先のことを見過ぎないのが大事」と話した。

「それと、プレッシャーを受け入れることですかね。プレッシャーはどうしても出てくる。それが自分自身にないものだと思っていても、いつかはプレッシャーのかかる場面は来る。その時は、その場に対応できるようにする。プレッシャーは自分を成長させるものだと捉える。…あとは、プロセスを大事にする。日野戦に向け徐々にビルドアップして、準備をしていった結果、勝利に繋がる。その先に次の試合へ…と、持っていきたいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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