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目指すは「力の証明」。姫野和樹ハイランダーズデビュー直後に語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
2019年のワールドカップ日本大会で8強入り(スクリーンショットは筆者作成)

 ラグビー日本代表の姫野和樹は日本時間3月26日、ニュージーランドのフォーサイドバースタジアムでスーパーラグビーアオテアロアの試合へ初出場した(国際リーグだったスーパーラグビーへは日本のサンウルブズの一員として経験済み)。

 この日はハイランダーズの一員として7―24で迎えた後半9分に登場し、得意のジャッカル(接点でボールに絡むプレー)を披露。約1年ぶりという公式戦で持ち味を発揮した。勝負はハリケーンズに19―30で落として「チームを勝たせるためにもっとハードワークしたい」とするも、「自分らしさが出た」と総括した。

 試合後は現地からオンライン取材に応じた。

 以下、共同取材時の一問一答(編集箇所あり)。

――感想は。

「まずはこれだけ(報道陣が)集まっていただいてありがとうございます、試合に関しては自分らしさが出たかなと思います。1年ぶりの公式戦で不安な点は多々あったんですけど、ただ自分のやれるプレーにフォーカスした結果、自分のプレーができた。ただ、ここには経験をする目的で来たわけではないので、チームを勝たせるためにもっとハードワークしたい」

――メンバー入りについて。

「素直に嬉しかったです。1年ぶりのラグビー。20番。チームの流れを変えられるプレーをやろうと感じました。今日に関しては自分に合格点をあげたいなと」

――ピッチに立って。

「ラグビーが戻って来たなと。アップの時から、人前で走るのがこんなに面白いのかなと思っていた。今日の会場は過去に2回怪我していて不安だったんですけど、しっかり怪我無く終われたのでハッピーです」

――すぐにジャッカルを決めた。身体の状態は。

「味方がいいタックルをしてくれた。うまくボールに絡む形になったと思います。身体の状態としてはいい感じです。というのも、去年ラグビーができなかった分、自分の身体作りにフォーカスしてやって来たので、そこは自信を持って、試合に臨む前に『これだけやって来たんだ』という自負があった。1年ぶりの試合でも自分のラグビーができたのは、いい積み重ねができたからだと思います。あとはラグビー的な感覚のところをもっともっと積み上げて、研ぎ澄ましていかないといけないなとは思います。これからもっと試合ができると思うのでそこは不安に思っていないですけど」

――後半10分で投入されたことは。

「呼ばれた時に驚きはなかったです。チームも流れが悪かったので、僕をここで入れるという意図を汲み取って、ボールキャリー、ブレイクダウンで仕事をして流れを変えなきゃいけないと思いました」

――海外のチームでスーパーラグビーを体験するなか、新たに生まれた課題や発見は。

「コミュニケーションが難しい部分はあります。半年で英語ができるとは思っていない。コミュニケーションで苦労することはあるので、そこは伸ばさないといけないかなと率直に思います。あとは――先ほども言ったんですけど――ゲーム感覚を研ぎ澄ませて行けたらと思います」

――試合中、英語で話していたようにも映りました。

「試合のなかで自分のパッションを出していくのは自分のなかのリーダーシップ。チームが落ち込んでいる時こそ声をかける。本当に簡単なことでいい。エナジーをさらけ出すことでチームにもっといい影響を与えられると考えているので、パッションを出して他のメンバーに伝染させる。それは英語が喋れなくてもできること。意識しています。

 英語…。上達していると思います。1か月英語しか喋ってない、上達していなかったらショックです!」

――入国後、2週間の隔離期間があった。

「隔離期間中は大丈夫かなと思いました。正直。朝に30分のランの時間があって、コインパーキングの駐車場をぐるぐる回る。その後は部屋で過ごす。身体的にはいい準備ができたかと言われたら、できなかったのは確か。

ただ自分の立ち位置、自分がいまからどんなチャレンジをするのか、いまから何を得たいのかと言ったメンタル面の準備では、2週間を有意義に使えたかなと思います。

 力の証明です。日本人としての力の証明。自分の力の証明。それが一番、得たいものだと思います。今後、ラグビーを日本になくてはならないものにする。海外で日本人がやれると証明すれば、もっともっと日本での人気、競技人口(の向上)にも繋がるし、子どもたちが夢を持てることにもつながる。現役選手の自信をニュージーランドから発信していきたい。

 ボールを触れないので、トップリーグとかプレシーズンマッチを見てイメージを高めるのが大事だと思っていた。イメージトレーニングは毎日していました。あとはこっちに合流してからは、S&Cコーチから課されるウェイトのほか、エキストラで(トレーニングを)やったり、グラウンドで最後まで個人練習するとか、ボールに触れあう時間も大切に考えながらやっていました」

――日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチはハイランダーズの指揮官でした。現在のヘッドコーチは、日本代表のアタックコーチでもあるトニー・ブラウンさん(通称ブラウニー)です。

「ジェイミーに関しては『がんばってね』とメッセージをもらったので『楽しみます』と。ブラウニーは多くは語らなかったですが、メンバー発表で握手した時、ブラウニーが一番喜んでいたかなと思います」

――チームでは。

「(同じフォワード第3列の)シャノン・フリゼルは年が近くよくしてくれる。仲もいいんですが、ノニに負けたくない思いでやっています。オールブラックス(ニュージーランド代表)で最近凄いいいプレーをしている彼より、いいプレーをすることを意識している。いい意味で切磋琢磨しています。

 アーロン・スミス選手も知識が豊富で、個人練習ではフォワードの個人練習のメニューを提示してくれる。スクラムハーフ目線で『こうして欲しい、ああして欲しい』というのは、日本ではなかなかない。新鮮でいい経験ができていると思います」

――リフレッシュは。

「ダニーデンは小さな町ですが、自然がたくさんある。時間がゆっくり感じられますし、僕は好きです。ゴルフをやったり、ハイキングに行ったり、コーヒーがうまいのでコーヒーを飲んだり。ゆっくり時間を使うのに適した街。毎日楽しんで過ごしています」

 日本を代表するバックローは、メッセージを練るアスリートと化した。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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