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早慶戦勝利に早稲田大学のゴールデンルーキーは「50点」。向上心にじむ。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
序盤戦は故障欠場。シーズン終盤戦にインパクトを示せるか。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 ラグビーの「早慶戦」こと、関東大学対抗戦Aにおける慶應義塾大学と早稲田大学との一戦が11月23日、東京・秩父宮ラグビー場であり、早稲田大学が22-11で勝利。同大の相良南海夫監督、ナンバーエイトの丸尾崇真主将、後半33分から登場した1年生スタンドオフの伊藤大祐(正式なスケは示に右)が会見した。

 社会情勢の変化でチケット販売に制限がかかるなか、会場には公式で9531人のファンが集まる。試合では両軍とも好タックルを連発。タイトな試合展開となった。

 勝った早稲田大学は前半10分に0―3と先制を許すも、ハイパントを多用した攻撃と接点への堅実なサポート、一瞬の隙をついた展開で21、34分に連続トライ。前半を12―6で折り返すと、互いに点を取り合って15―11で迎えた後半26分には3年生フルバックの河瀬諒介が敵陣ゴール前右で豪快に突破。直後のゴール成功もあり、22―11と勝負を決めた。

 伊藤は、桐蔭学園高校の主将として昨年度の全国高校ラグビー大会を制した期待の新人。大学デビュー戦となったこの日は、短いプレー時間ながら相手の猛タックルをかわして好ランを披露した。存在感を発揮した。

 大学選手権2連覇を目指す早稲田大学はこれで対抗戦を6戦全勝とした。12月6日、東京・秩父宮ラグビー場で5勝1敗の明治大学との最終節に挑む。

相良

「このコロナ禍、大勢の観客のもと早慶戦がおこなえたことをうれしく思います。なか、両校とも持ち味の出した引き締まった試合で勝利を収められ、素直に嬉しく思っております」

丸尾

「コロナ禍で伝統ある一戦を迎えられ、嬉しく思います。勝利で終えられたこと、嬉しく思います。本日はありがとうございました」

伊藤

「この伝統の早慶戦という伝統の一戦ができた。楽しく、嬉しい試合でした。まだまだ自分のレベルの低さがわかったので、もっとチームにマッチできるよう、これから頑張っていきたいです」

――試合中、スタンドオフの吉村紘選手がハイパントを多用するシーンがあった。事前に準備していたプランか。

相良

「準備していたことです」

――思うように加点できなかった時間帯もあったと思うが、どう乗り越えたか。

丸尾

「慶應義塾大学を圧倒しようと準備し、臨んだわけですが、出足の早いタックルに(点を)取り切れない場面があったことが競った要因かなと思います。アタックのエラーが起きることは想定内だったので常に『アタックがだめでもディフェンス』と立ち返られる部分を持てたことが大きいかと思います」

――相手にジャッカルをさせない工夫について。

丸尾

「アタックでは2人目の寄りのスピード、強さにこだわろうと言い続けたのですが、何本かジャッカルをされた。よかったというより、改善ポイントかなと、自分のなかでは思っています。いまの思っている感じでは、『結構(ジャッカルを)されたな』と思っている。もっともっと突き詰められる」

――後半26分、吉村選手からパスを受けた河瀬諒介選手がトライ。勝負を決定づけました。両者への評価を。

相良

「吉村に関しては去年までの選手の岸岡(智樹=クボタ)に対してプレッシャーのようなものもあったかもしれませんが、彼なりに1戦1戦、成長しています。ゲームの組み立てに関しても冷静。周りとのコミュニケーションも練習中から活発にしてくれています。今日も非常に冷静にキック、ラン、パスを選択してくれたと思います。河瀬はボールキャリーが魅力。ああいうところ(分厚い防御網)をこじ開けて、スコアしてくれたのは彼のよさが出たと思います」

――河瀬選手は以前スタンドオフで起用されたが、やはり本職のフルバックがよさそうか。

相良

「河瀬はどこで出てもいい選手たと思いますが、スペースがある方が持ち味が出るかなとは思います」

――伊藤選手の大学デビューについて。

丸尾

「非常に堂々としたプレーをしてくださって…いや、してくれて、心強かった。もっと伸び伸び、自由に、気にせずにやって欲しいなと思います。本当に(隣の伊藤の肩を叩き)頑張って」

伊藤

「点数をつけるとしたら50点くらいかなという感じ。もっと正確なプレーができたところもあったので、そこをしっかりやる。もっと大胆にいくところはチャレンジしてプレーできれば、もっと点数が上がるかなと思います」

――選手起用について。伊藤選手をリザーブに入れた背景は。

相良

「その週、その週で状態のいい選手をいれるのが大前提です。伊藤に関しては、インサイドバックスをカバーできることと、スコアに繋がるインパクトを与えられることが魅力。苦しいゲームになると予想されたので起用しました」

――フォワード第3列(バックロー)の布陣について。大学からがラグビーを始めて今年の帝京大学戦で初先発した4年生の坪郷智輝選手がベンチ外に回り、怪我で離脱していた2年生の相良昌彦選手が復帰しています。

相良

「バックローに関しては、やはりアタックでインパクトが与えられ、かつブレイクダウンでボールを獲り返せる選手ということで、この布陣になりました」

――1年生フランカーの村田陣悟選手について。

相良

「彼も大学ラグビーの強度、スピードに慣れて、彼のフィジカルの強さがゲームのなかで活きてきていると思います。きょうも彼のゲインする場面が非常にあった。推進力があるのが彼のよさかなと思います」

丸尾

「身体の強さ、運動量、アタック、ディフェンスで激しいプレーができる。1戦、1戦、成長していますし、堂々とプレーしています」

――12月6日には明治大学との早明戦があります。

相良

「これからゲームがどんどんタフになる。ひとつひとつのプレーの精度――プレーの選択を含め――を上げる。今日も我慢強いディフェンスができたので、このディフェンスをさらに成長させたい。今日は規律が乱れたところもあったので、その辺は映像を見て課題を洗い出し、改善できればと思います」

丸尾

「(早明戦まで)2週間あるので、課題を修正して臨む。本当に力の出し合いになると思うので、まず自分たちから仕掛け、アグレッシブに行く。そして攻守とも我慢強くやる。それにこだわりたいです」

伊藤

「早明戦へは、きょう出た自分の課題は修正して、もう1回レベルを上げられるように準備して、自分にすべてベクトルを向けて準備するだけです」

――コロナ禍で早慶戦があったことについて。

丸尾

「対抗戦、大学選手権が全くないことも頭にありました。でもそんなことを考えてもしょうがないと思い、大学選手権、対抗戦があることだけを信じて、自粛中もその時できることをやり続けられた。実際に迎えられてうれしく思いますし、全大学に、本当に感謝しています」

――試合後は両軍選手が笑顔で抱擁。

丸尾

「もちろん、慶應義塾大学あっての試合だったと思うので、それはリスペクトします」

――試合前、試合後、スタンドの風景、音はどう感じたか。

丸尾

「多くの人が観に来て下さって…うーん、まぁやはり、非常に、本当に嬉しくて、感動したというか…嬉しかった。それだけです」

――去年は早明戦で大敗しながら最後には大学選手権で優勝した。今年は完成度が高まっている印象で、順調に来すぎているという懸念はないか。

相良

「結果としては勝ちを重ねているので、そういう風に見えるかもしれません。ただ今季は、限られた時間の中で飛躍的に成長するのが難しいと思うので、毎週、毎週、試合で課題を見つけ、よかったところはよりよくし、悪かったところは修正するというステップ(を踏んでいる)。それが、結果としては、うまく行っているという段階です。次は明治大学戦へやれることをやれる日数のなかでどれだけできるか。そういう積み重ねです。結果に一喜一憂しないと選手に言ってきているつもりなので、我々スタッフを含め、今後も自分たちに矢印を向けてやっていきたいです」

 会見中には、シーズンに入ってからチームとして成長した点はとの質問も出た。指揮官は「ゲームで修正する力がついた。1戦1戦、自分たちのやって来たことをゲームで表現するということを、自信を持ってできるようになってきた、とは思います」と返答。試合ごと、もしくは局面ごとに進化し続ける。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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