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明治大学、近所にクラスターが発生しましたが…。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真左から箸本、田中監督、片倉(筆者撮影)

 昨季まで3シーズン連続で大学選手権の決勝戦に出ている明治大学ラグビー部は、10月18日、埼玉・熊谷ラグビー場で加盟する関東大学対抗戦Aの筑波大学戦に挑んだ。相手の激しい圧力を受けながら、33―17で白星を掴む。開幕3連勝を飾った。

 試合後、田中澄憲監督、ナンバーエイトの箸本龍雅キャプテン、マン・オブ・ザ・マッチに輝いたロックの片倉康瑛副キャプテンが会見。試合のターニングポイントなどについて語った。

 会見中は、チームの寮がある世田谷区で発生したクラスターについての質問も出た。指揮官の答えは秀逸だった。

 チームは11月1日、慶應義塾大学と対戦する(東京・秩父宮ラグビー場)。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

田中

「きょうは今季初のスタジアム(過去2戦は練習場での無観客試合)。独特の緊張感、楽しみがあったんじゃないかと思います。

 筑波大さんはタフで、強いことはわかっていた。こちらとしても強いプレーを前半から選択して、後半、勝ち切るというのが今日のゲームプランでした。

 前半は想定内。ただ後半は、筑波大学さんのいいプレッシャーもありましたが、こちらのAゾーン――敵陣22メートルエリア――に入ってからのミスがあったり、(点を)取り切れなかった部分があったり。筑波大学さんに最後まで粘られた。

 今季初めてこういうタフなゲームを経験した。今年は1試合、1試合、成長していけるかがキー。この経験を慶應義塾大学さんとの試合に活かして、1試合、1試合、成長していきたい」

箸本

「お疲れ様です。点差は広げられなかったですが、個人的にもチーム的にもいい試合ができたと思っています。まぁ…今日の試合を観てもらったら『メイジ、やられてるな』と思われがちですけど、個人的には1点差でも勝てばいい。対抗戦なので。

 勝ち切れたのはいい経験になったと思いますし、そのなかでも課題が見つかったので、それはプラスに捉える。これから次のゲームへ調整し、チームとしても厳しさを持ってやっていこうという、気が引き締まるゲームになった。プラスに捉えています」

片倉

「試合は久しぶりのスタジアム開催で楽しくやれました。副キャプテンとしてユニットの部分で今年は引っ張っていきたいと思っていて。前半のスクラム、ラインアウトですごくいい精度を出せた。練習でやったことが出た。ただ、モール、リザーブが入ってからのスクラムなどで課題がいっぱい出た。八幡山(本拠地グラウンド)に帰ってレベルアップしたいです」

――スクラム最前列のメンバー(フロントロー)は前年度から大きく入れ替わった。

箸本

「前3列は総入れ替え。でも、僕たちがフォローするというより、前3人(に入る選手)がリザーブを含めて危機感を持ってやっている。引っ張っていけるくらいの3人が揃っていると思います」

片倉

「今年は去年と比べるんじゃなく、自分たちのスクラムを組もうとしています。(中央の)フッカーの選手を中心に僕らを引っ張ってくれている感じです。スクラム練習ごとにその(時々の)フッカーがリーダーになって話してくれている。いまのところいいスクラムが組めています」

――後半途中、味方に一時退場処分(シンビン)が出た。

田中

「特別な対処法はなくて、普段、八幡山でやっている、ラインブレイクされたら戻ってパニックにならないでディフェンスする…ということができた」

箸本

「筑波大学さんにはいいランナーがいるので、(防御では)クイックセットで前に出ようと。よりコミュニケーションを取ろうと話しました。シンビンが出た時の方がいいディフェンスができたと感じました(その時間帯は無失点)」

――その時間帯、箸本選手がボールを持つシーンが増えた。

箸本

「僕自身、ボールキャリーが強み。ボールを継続したい。こっちがアタック側でいられれば時間も使える。自分がアタックの起点となれるよう、たくさんボールをもらうよう意識しました」

――「この経験を慶應義塾大学さんとの試合に活かして、1試合、1試合、成長したい」。具体的には。

田中

「筑波大学も慶應義塾大学さんも接点が激しいと思います。きょうもブレイクダウン(接点)でターンオーバーされた部分があった。それは次戦に向けて取り組まなきゃいけないと思います。相手のディフェンスプレッシャーがあるから、なかなか(トライを)獲り切るのは難しくなってきます。ただ、数少ないチャンスを仕留めるところはプレッシャーゲームになれば大事になる。個々は、精度を上げないといけない」

――ブレイクダウンの圧力を受けた感触について。そもそも、筑波大学の防御圧力が強いところに攻め込んでいたような。

箸本

「強いところに当てていたのは意図的なところがあって。そこでフォワードを当てて速い球出しをすればバックスが広いスペースを活かしてくれる…という意図でアタックしていたんです。ただ、準備していたつもりのブレイクダウンを(ボールを)越えていく質で課題があって。アタックがうまくいかなかったのは、ブレイクダウンで筑波大学さんにプレッシャーをかけられたからかなと思っています」

――スタンドオフ。先発が1年生の池戸将太郎選手。後半14分からは2年生の齋藤誉哉選手が交代出場しました。

田中

「池戸はよくやっている。普段は山沢(京=副キャプテン)が務めるポジションを1年生がやるのはプレッシャーもかかるし負担も大きいんじゃないかと思います。今週は、筑波大学さんからのプレッシャーもかかる。後ろに去年(の1軍)を経験している齋藤がいたら、そのプレッシャーも軽減すると思ったので、齋藤、池戸という形のメンバー構成にしました」

――近隣にある日本大学の運動部寮でクラスターが発生しましたが…。

箸本

「えーと、やはり目の前の寮でクラスターが出たのは、怖いことです。近くに2つの寮がよく行くコンビニがあるので、そこにはなるべく行かないようにしよう、自転車を使えば3つくらい(通える)コンビニがあるので、そこに行くようにしよう…と。あとは、これ以上厳しくするところがないくらいやっている(原則的には公共交通機関を使わず、八幡山エリアから外へ出ないよう徹底)。気は引き締まりましたけど、ルールの改正は考えていないです」

田中

「(箸本からマイクを託され)片倉に、聞きます」

片倉

「ニュースを見た時はびっくりしたんですけど、さっき龍雅が言った通り。ストレスがたまるなか、結構、厳しくやっている。気は引き締まりましたけど、ルールは変えずに…という感じです」

田中

「(再度、マイクを引継ぎ)今回、近くの寮で起こりましたけど、どこで起きてもおかしくないと思っています。主将はいつも言っていますけど、やるべきことはラグビー。ラグビーができるのはどういうことかというのをひとりひとりが考えて行動してくれています。ルールはありますが、ルールだけで縛るのではなく、ひとりひとりが深い部分を理解して、行動してくれていると私は感じます」

 指揮官の「ルールはありますが、ルールだけで縛るのではなく…」の言葉に、このクラブの文化がにじむ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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