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昨季日本一の早稲田大学・相良南海夫監督、コロナ禍の開幕に何を思う?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
昨季の選手権決勝後。今年も歓喜の瞬間を迎えられるか。(写真:つのだよしお/アフロ)

 関東大学ラグビー対抗戦Aが10月4日、各地で開幕する。

 昨季、大学選手権で11シーズンぶり16度目の優勝を果たした早稲田大学は、東京・秩父宮ラグビー場で青山学院大学と対戦。試合に先立ち、就任3年目の相良南海夫監督が心境を明かした(2日・早稲田大学上井草グラウンド)。

 

 チームは今季、4月から6月にかけ一時解散も経験。夏は毎年恒例の菅平合宿へも行かず、特異なプレシーズンを送ってきた。「今年は例年以上に、選手層が大事になる」と、開幕メンバーへの期待も口にした。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「いまは『Go To』とも言っていますが、世の中に色々な制限があるなか開幕を迎えられる。本当に幸せなことだと思います。学生、特に4年生にとっては最後のシーズンの舞台が整ったことはありがたいです」

――9月には実戦機会も得ました。

「それまで内輪でしか練習できなかったので、相対的にやってきたことがどこまでできるかにフォーカスしました。意味があった。去年を通じてスクラムが大事だとわかっていた(昨季も夏場に練習時間を割いて向上。試合結果に反映された)ので、こういう状況下でも基本的なことをコツコツやってきた。それが、練習試合のなかでもある程度、成果が見えた。あとはディフェンス――特に個々のタックル――をやってきた。(実戦でも)いいタックルが見られた」

――きょうの実戦形式練習でも、レギュラー組が防御側に入る時間が長かった。

「当面はディフェンスをテーマにしている。それで時間が長くなったところがある」

――開幕戦のメンバーについて。昨季のレギュラーだった下川甲嗣副将、相良昌彦選手、長田智希選手、河瀬諒介選手が登録から外れています。

「コロナ禍です。関東ラグビー協会にも体調(に関する報告)を提出しなければいけませんし、体調が悪くなればそれがコロナと関係がなくても(公式戦に)エントリーができず、休まざるを得なくなります。その意味では、例年以上に選手層が大事。(序盤戦のうちに)チームの底上げをするために、広く経験を積ませたいというところです。

 本当なら2チーム分くらい(主力組を)作りたいくらいです。寮にいない選手は2部練習ができず、それは難しいところなのですが。とにかく、今後は色々な組み合わせが生じることを想定しなければいけない。それは早い段階から、主将、コーチ陣たちとも共有しています」

――河瀬選手や長田選手はコンディション調整中で、下川選手、相良選手はプレー可能な様子。欠場者のコンディションはまちまちですが、この日先発する選手にとっては大きなチャンス。

「そう思ってやってもらいたいですし、お互いにいい刺激になれば」

――桐蔭学園高校前主将の新人、伊藤大祐選手も練習試合で怪我をしました。

「復帰する時期に大事な試合がある。復帰させられるかどうか…。能力は高いですが、ユニットで動く時間も短いので」

――改めて、今回のコロナ禍で見つめ直したことは。

「彼ら(選手)がどう感じているかはわかりませんが…。普通にできていたことが普通にできなくなり、いまも感染が続いていて、明日も何が起きるかはわからない。そんななかでは目標も見えづらいですが、1回1回の練習がどれだけ大事かを考え、感じて欲しいと話してきました。あとは、彼らがそれをどう感じているか…。うちに限らず、失われた時間が長い。時間がないことは、間違いない」

――どんなシーズンを過ごしたいでしょうか。

「最後のゴールはぶらさずに行ければ。おそらく、自分たちが1日1日、積み上げているつもりでも、(試合では)相手がいる。対抗戦でもうまくいかないことがあると思うんですよね。そんななかでも、1回1回の出来、不出来に一喜一憂せず、『最後、どこにたどり着くか』を(見据えて)ぶれずにやり切りたいですね」

 昨季も、明治大学には12月の対抗戦で敗れながら1月の選手権決勝では制している。日本一奪取の背景には敗戦のレビューや地道な積み重ねがあっただけに、相良監督の「1回1回の出来、不出来に一喜一憂せず」との言葉に説得力がある。

 世界の常識が塗り替わったなか、できる準備をし続ける。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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