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堀江翔太、8強入りのワールドカップ前に語った海外での苦労とは。【ラグビーあの日の一問一答】

向風見也ラグビーライター
昨年のスコットランド代表戦。味方のトライに喜ぶ。(写真:アフロ)

 昨秋のワールドカップ日本大会で初の8強入りを果たした日本代表には、単身で海外にわたって苦労を重ねてきたベテランがいた。

 当時33歳の堀江翔太は、2013年にスーパーラグビーのレベルズ入り。身体をぶつけ合うフッカーのポジションを務めながら、屈強な海外選手のバトルに参戦した。

 帝京大学を卒業したばかりだった2008年からの約2年間も、単身でニュージーランドへ渡っている。当時、ワールドカップ通算1勝の国で代表に入ったことのなかった堀江は、「勇気なくして栄光なし」の思いでラグビー王国に足を踏み入れていた。

「我慢してでもやらんと」

 あの大会の登録メンバー決定から約1年が経ったいま、堀江が大会直前に語った渡航時の苦労を明かしている。9月7日、都内ホテルでの共同取材でのことだ。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――海外へ渡った過去を振り返ってください。

「(大学卒業後の)1年目はクライストチャーチボーイズハイスクールの用務員をしていました。朝から美術室の展示を変えたり、寮の壁の苔取りをしたり。夕方からはアカデミーの練習。あの時はフッカーになりたてだった。いまもそうですけど、常にうまくなりたいという気持ちは常にあった。

(用務員としての給与は)出ていました。週給だった気がします。家は用意してもらっていたので食べるには困らなかったですけど、先がわからないので…。その時は三洋電機などから日本人選手が留学してきていたので、よくご飯をおごってもらいました」

――当時は、ニュージーランド代表になりたい気持ちもあった。

「ありました、ありました。で、(一時帰国を経て迎えた)2年目にセントビーズカレッジで日本人留学生をコーチングしながら現地のアカデミーに行って…という生活。カンタベリー州代表になりたかった。2年で結果が出なかったら帰ると自分のなかで決めていたので、帰りました」

――当時の苦労を振り返って。

「ホンマに海外の生活は嫌いだし、苦痛だったな、としか思っていないです(周囲、笑う)」

――そうはいっても、ラグビーはうまくなりたい。

「そうっすね。我慢してでもやらんと、と。英語が全く喋れなかったし、あの時は日本人が活躍していることを、皆、知らない。なめられている状態で行っているので、肩身狭い感じはあります」

――当時の財産。

「その時の海外行きを選んだ時など、分岐点になった時に思う座右の銘があるんですけど、それが『勇気なくして栄光なし』。失敗しようがしまいが、勇気を出して行動をせんと何も見えない。2012年にオタゴに行った時も、その後レベルズに行った時も…。サンウルブズの時もそうです」

 堀江は2011年のワールドカップニュージーランド大会で未勝利に終わったのを受け、ニュージーランドのオタゴ州代表入りへの挑戦を決断。それが2013年のスーパーラグビー・レベルズ入りに繋がっている。

 さらに2015年のワールドカップイングランド大会で歴史的3勝を挙げた翌年には、スーパーラグビーに日本から挑むサンウルブズで初代キャプテンを務めている。

 ここから先は、ジェイミー・ジョセフ率いるチームの歩みと大会の展望を語っている。

――堀江さんにとって、いまの栄光とは。

「栄光なんて、常に変わっていくものだし。いまの栄光はワールドカップでベスト8に行って、ラグビー人気(の向上)を後押しできればいいかなと思います」

――現体制下の歩みは。

「初めの方は、ヘッドコーチやコーチのやりたいことに、選手が追いつくのが大変で。僕も求められているのと違う動きをして怒られた。お互いに理解するために映像を見て、自分が何をやるのかを話し合うということを、その頃(発足当初)に比べると、大分、やっている。(現体制の目指すラグビーは)高度。でも、できたら絶対に強いと、途中から思い始めました。いつくらいからかなぁ…いつの間にやらです。

(本番では)1戦、1戦、全選手が、すべてを駆けて、その試合に挑む、ってところです。先を見て戦うということは、選手は、しなくていいと思います。その辺は、スタッフがしてくれる。4年間やって来たことを、どんだけ出せるかってところだと思いますよ」

 こう話した9月のうちにアイルランド代表を下し、翌月には予選プール全勝で決勝トーナメントに進んでいる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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