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日本代表、南アフリカ代表に完敗の現実。どう前を向く?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
タッチライン際での快走が光ったリーチ(写真中央)。本番ではさらに暴れたい。(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 9月20日からのラグビーワールドカップ日本大会で初の決勝トーナメント進出が期待される日本代表は、6日、埼玉・熊谷ラグビー場で南アフリカ代表に7-41で完敗した。

 4年前のワールドカップイングランド大会では34-32で勝って世界中から注目されたが、今回は優勝候補の力強さを前にミスを重ねた。ウイングの福岡堅樹、ナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィが故障するアクシデントにも見舞われた。

 試合後、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチとリーチマイケル主将が会見。かねて「マストウィンではなくマストパフォーマンス」としたジョセフは、この日のパフォーマンスをどう見たか。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

ジョセフ

「今日の選手たちのパフォーマンスは誇らしい。強豪に対しスコア持っていけるチャンスは作ったが、自分たちのミスでやられたところがある(敵陣22メートルエリアまで攻め込みながらも反則や被ターンオーバーに泣いた)。今回はワールドカップの準備へ必要な試合だった。

 今回はセットピースにこだわったが、スクラムが機能した。あの南アフリカ代表のストロングパックに対していいスクラムを組めたのは、長谷川慎さんの献身的なコーチングのおかげだと思います。感謝したい。

 いい準備もできたが、アンラッキーなプレーもあった。2本ペナルティーをもらえたようなところをレフリーに見逃され、もらえなかった。ティアとの試合ではそこでプレッシャーをかけるのが重要なのに、そこをもらえなかったのは残念です。

 そしてふた通りのゲームの組み立て方が見られたと思いますが、南アフリカ代表は攻撃を拒否していました。1度攻めたらすぐにキックし、ディフェンスでプレッシャーをかける、そしてセットプレーでもプレッシャーをかけるという戦術で挑んでいました。私たちは最後10~15分で引き離された。そこで我々はチャンスをものにして、守りに入らず攻撃的に攻め続けることがしたかったが、最後にミスが出て、トライを取られた。懸命に努力したのにそうなって残念です。

 怪我に関して気にされていると思いますが、現在は明確なことは言えません。福岡は試合の序盤だったので残念。それが(チームの)パフォーマンスにも色々な影響を与えました。マフィは1~2週くらいで戻れる。フィジカルなゲームだった故にこのような怪我が出たと思いますが…。これしか、言えることはありません」

リーチ

「今年振り返ってみると、PNC(国際大会のパシフィック・ネーションズカップ、7~8月におこない環太平洋諸国などから3戦全勝)からスタート。徐々にこのチームはステップアップしてきて、最後にティア1(強豪国)の強いところとやって、自分たちが何をしなきゃいけないかはっきりわかってきました。負けてしまったけど、これで自分たちが何をしなきゃいけないか(わかった)。自信は下がったから、この2週間でどう自信を取り戻すかが大事になってきます」

――リーチさんがフィールド上で受けたインタビューでは「キックでプレッシャーをかけられた」と話していましたが。

リーチ

「僕らがディフェンスでプレッシャーをかけられなかった。それで相手はどんどんキックを蹴ってきて、自分たちのウイングにプレッシャーをかけてきた。フィフティ・フィフティのボールを相手が多くとったという感じがありました」

――相手がキックを蹴ってきたのは想定内だったか。

ジョセフ

「そういう戦いをしてきたことにサプライズはないが、どこで相手が優勢だったかと言えばハイキック。競り負けして失点した。相手のアウトサイドバックスはスキルが高く、大きくて、ダイナミックな空中戦ができる。我々のウイングは大きくないので、そこで劣勢になったところがありました。(ワールドカップ本戦でぶつかる)スコッドランド代表もアイルランド代表もそうした戦術で来るので、課題として取り組みたい」

――圧力を受けて余裕なくなったか。

リーチ

「相手が予想通りにフィジカルでやって来た。さっきリーダーミーティングをして、『1個1個ディテールがちょっと落ちたときにやられてしまった』と。今後の修正点はもう1回ディテールにこだわること。この試合でティア1の圧力、強さが改めてわかったので、ワールドカップの準備にはとてもよかった」

――ジョセフさんはニュージーランド代表などからも得点してきたと謡ってきたが、当時のニュージーランド代表はベストメンバーではない。ベストメンバーの強豪国相手に、点は取れるのか。

ジョセフ

「得点はもちろんしたいですが、質問の意図は? 南アフリカ代表は守備、キック主体でミスを誘って…というチーム。ニュージーランド代表は攻める姿勢がすごいので、そういうチャンスに賭けるチームはディフェンスでミスが多い。なので、我々はそこを突けた。南アフリカ代表とニュージーランド代表は比較対象にならない」

――修正する時間は十分か。

リーチ

「十分、あります。このチームの修正能力はとても高いので。スタッフもそれに合った修正練習を考えてくれる。明日の準備もしてあって、リーダーミーティングも常にしている。修正能力は十分あります。強い相手とやってよかったです。改めて、世界の強さ、わかりました」

 リーチがこの夜に導いた結論は、検討課題は細部にあること、改めて自信を取り戻す必要性があることだった。常にクリアな指針を示すこの人らしい。いかなる時も首脳陣へのリスペクトを強調するのを含め、得難き船頭だ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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