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スーパーラグビー除外後も「経験」の場を。サンウルブズ初代主将・堀江翔太が語る【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ドレッドヘアが目立つ(筆者撮影)。

 スーパーラグビー(国際リーグ)のサンウルブズ(日本)で初代キャプテンを務めた堀江翔太が、同クラブが2020年限りで同リーグを除外させられる件について語った。

 日本代表でキャプテン経験もある33歳の堀江は、4月21日にチームへ合流し、22日、報道陣に対応。26日の第11節(東京・秩父宮ラグビー場でのハイランダーズ戦)への意気込みも明かした。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――20日までは日本代表候補によるウルフパックとしてキャンプや対外試合をおこなっていました。ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチの意向で、サンウルブズへの合流が決まったのでしょうか。

「(言い渡されたのは、先週の)木曜くらいかな。チームの状況というより、『(自身に)高いレベルで(のプレー機会を与えたい)』ということだと思います。どこかでは、スーパーラグビーでやることになっていた。早めにそういうところを経験し、パシフィック・ネーションズカップ(7~8月に日本代表が参加する大会)、ワールドカップへと入っていきたいです」

――何を見せたいか。

「ウルフパックでやったことは出したい。運動量もそうです(該当する)し、『自分が何をしているかわからん』ではなく、(チームで定められる)自分の仕事はやっていきたい。セットプレーを安定させて、しっかりアタック、ディフェンスをして、サポートにも行ってと、全てのところでやっていく」

――今季のサンウルブズは、惜しい負けを重ねている。

「あと少しのところ。最後の最後のところ。僕は先発で出るのかリザーブで出るのかはわからないですけど、クロスゲームのところでどれだけ落ち着いてやれるか(が鍵)。落ち着いてやっていれば何も言うことはないですけど、もしチームがパニックになっていたら(落ち着くよう)言っていきたい」

――昨秋負った疲労骨折からの復活度合いが心配されています。身体の状態は。

「大丈夫。足も全然、大丈夫です。(痛みなどは)全然、気にしていないです」

――サンウルブズとウルフパックは主要戦術を共有していますが、スクラムだけはそれぞれ別な取り組みをしています。サンウルブズでは新入閣のマーティ・ヴィールさんが指導するなか、ウルフパックでは長谷川慎さん(昨季までサンウルブズと日本代表のスクラムコーチを兼務)が「コアの短い選手に合った組み方」を丁寧に落とし込んでいます。

「僕はいままで慎さんのスクラムを組んできて、こっちに来た。慎さんのやってきたことをこっちでできたらいいなとは思います」

――いまのサンウルブズの形に、長谷川コーチ流のエッセンスを注入する。

「そうですね。こっちのやっていることがすべて悪いとは、全然、思わないので。こちらのやっていることをやり(遂行し)ながら、慎さんのやっていることを(採り入れる)というところです」

――サンウルブズは、来季限りでスーパーラグビーから除外されます。

「1年目からやっているので、それがなくなるのには寂しい部分があります。僕が何やかんや言うたところでどうなるわけでもないと思いますが…。僕とフミさんがスーパーラグビーに挑戦するのは、すごく大変なことやった。サンウルブズがあったことで、挑戦、経験を(多くの日本人選手が)早くできるようになった。それがなくなることで、若い人たちの経験をする(場所)がなくなる。それは何というか、マイナスだと思う。その部分は、どこかで補うような動きがあれば。それは、(然るべき人が)何か考えてくれているとは思いますけど」

――「補う」とは、高いレベルでの試合経験ですか。

「そうですね。高いレベルの試合を1回することは、練習10回分くらい(の意味がある)。若い人たちのためには、そういう場所ができればいい。まぁ、なければ自分たちでどんどんどんどん海外へ行って経験して欲しいですけど、(選手の事情によっては)そういうことができない状態であったりもする。協会の方でそういう場所を作ってくれたらとは思います」

――4年前といまを比べ、日本代表選手の成長は感じるか。

「うまくいっていると思いますよ。チームとしては、(今年は)まだ1つのチームにはなっていないのでわからないですけど、個々人としてはうまくいっていると思います。山中(亮平=2015年のワールドカップ日本大会時はバックアップメンバーに止まるも、現在は神戸製鋼やサンウルブズの活動でレベルアップを強調)とかも4年前と比べたらレベルは全然違いますし、調子もいい。ひとりひとり、サンウルブズの経験を経てよくなっているんじゃないかと思います」

――ワールドカップ日本大会まであと150日。

「まだ(大会の)スコッドは発表されていないです。1日1日やっていきたいと思っています。(一方で)常にワールドカップの相手を想定しながらやっている。ロシア代表、アイルランド代表、サモア代表、スコットランド代表を頭に入れながら練習に取り組んでいるという感じです」

 堀江と「フミさん」こと田中史朗は、2011年のワールドカップニュージーランド大会で未勝利に終わるや海外志向を強めた。2012年にはニュージーランドの地域代表選手権へ挑み、2013年、田中はハイランダーズ、堀江はオーストラリアのレベルズでの契約が叶った。スーパーラグビーに挑戦する難しさやスーパーラグビーでの試合経験の尊さを、皮膚感覚で知っている。

 だから常時10名以上の日本代表資格者と契約するサンウルブズのスーパーラグビー除外には、言葉を選びつつも「マイナス」と私見を提示。現代表選手のレベルアップもサンウルブズのおかげだと認めた。

 激動の時代の生き証人の言葉を、現統治機関はどう受け止めるか。

 日本協会側は今度の除外を「(膨らむ予定だった参加費の支払いという)条件をのめない」とし、新たな強化計画には「ネーションズ選手権(各国代表による対抗戦)」の成立への注力を挙げる。しかし一部の理事やサンウルブズの関係者は、「条件」が言い渡されるまでの交渉力を問題視。「ネーションズ選手権」も、大会中の昇降格を嫌う欧州側の意向次第では不成立となりうる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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