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ダン・カーター関連質問集中に、神戸製鋼陣営は何と?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
橋本ゲームキャプテンはオープンサイドフランカーとしてプレー(著者撮影)。

 日本最高峰のトップリーグで初年度以来の優勝を狙う神戸製鋼は、9月14日、東京・秩父宮ラグビー場で今季第3節に挑み、昨季王者のサントリーを36-20で制した。

 ニュージーランド代表として世界歴代1位の1598得点をマークしたダン・カーターは今季初先発し、マン・オブ・ザ・マッチを受賞。デイブ・ディロンヘッドコーチと橋本大輝ゲームキャプテンが出た公式会見中は、稀代のスターに関する質問が集中した。

 ちなみに神戸製鋼には、元ニュージーランド代表アシスタントコーチのウェイン・スミス総監督がいる。会見時、司会者が出席者を紹介する際、「ウェイン・スミス総監督と…」と言い間違える一幕があった。

 アクシデントに対し、ディロンヘッドコーチが日本語で「43歳」とユーモアを交えて基本的な自己紹介を続けた。続けて語ったのは、フォワード陣の献身ぶりとチームに横たわる課題についてだった。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

ディロン

「…勝つことができて嬉しいです。サントリーさんはクオリティが高いチームで、次回対戦時はさらにレベルの高い状態でプレーしなくてはならないと思いますが、きょうは勝てて嬉しいです」

橋本

「本日はどうもありがとうございました。チャンピオン相手に覚悟を決めて臨みましたが、いい入り(立ち上がり)で試合ができて、ダン・カーターがすごくいいゲーム運びをしてくれた。初めてのゲームだったので不安だったのですが、オールブラックスはだてじゃないなと思い知らされました。観客の方も楽しんでいただけたのではないかと思います」

――カーターについて。

橋本

「今年に限っては外国人選手が多く、ゲームメイクの部分は外国人選手に任せていました。経験者の高い選手が多いので、任せていました。細かいコミュニケーションが多く、練習中もそうですが、本当に細かいコミュニケーションを取っていて、すごくやりやすかったです」

――公式入場者数が17576人。普段と比べ、観客が多かった。

橋本

「こんなにお客さんが入ったのも、私が試合をしていて初めてじゃないかなと。チケットも完売したと聞いていて、ダン・カーター、すごいなと思いました」

――カーターのコミュニケーションについて。

橋本

「動きのなかですと、ディフェンスで隣に立っていると『誰を観ろ』とすごく指示をしてくれます。トライを取られた後のハドルでも次にやらなくてはいけないことを話していて、チームをひとつの方向に導いてくれたと思います」

――目指しているラグビーはできたか。

ディロン

「自分たちのフェーズプレー中、いいオプションを使えたと思います。相手の動きをしっかりと読み、正しいオプションを選べた。ただ、課題がある。さらに成長できる」

――皆、ダン・カーターの質問がしたいと思っているでしょうが、フォワードはどうだったか。大活躍も前半で交代したグラント・ハッティング選手については。

ディロン

「自分も元フォワードなのでフォワードの質問をしてくれるのは嬉しいです。1~8番、リザーブともいい仕事をしてくれた。セットプレーのほかに、フェーズプレー中のスキルの部分でもいい働きをしてくれました。個人として、パックとしての成長も見られました。お互い競い合ったなかで成長している。ハッティングはエッジ(後述)でいい動きをしてくれた。バックス並みのスピードとスキルを見せてくれるなど、特別な存在感を示してくれた。また、グランドが活躍するには他の選手もいい仕事をしなくてはならない。きょうは他の選手がいい仕事をしたおかげで、グラントもいい働きをしてくれた。長いシーズン、これ以上のリスク犯したくないので前半で交代させました」

――カーターが入ってチームのどこが変わったか。

橋本

「スポーツ選手として尊敬すべき部分がとても多く、私生活から普段の取り組む姿勢を含め、24時間、プロ意識が高い選手。どうしていくかを皆に教えてくれて、いい影響を与えてくれていると思います」

――第2節が中止。試合の間隔が空いたが。冒頭での「不安」とは。

橋本

「自分たちでコントロールできないところ。1週間休めることをポジティブに捉え、練習をしていました。彼(カーター)に対しての不安はないですけど、彼がどういうプレーをするかというコネクトの部分での自分たちへの不安はありました。ただ、うまくいくのかという不安がありましたが、5~10分プレーするうちにその不安はなくなりました」

――課題は。

ディロン

「規律の部分は良くない。特に前半最後の20分、あとは後半の最初です。特にブレイクダウンエリアでの規律が悪かったので、これからフォーカスしていきたいです」

 この日の神戸製鋼は、前半からエッジと呼ばれるグラウンド両端の攻で優位に立ち、肉弾戦では何度もターンオーバーを奪った。もっともディロンヘッドコーチの言葉通り、反則がかさむ時間帯にサントリーの猛攻を浴びている。

 元オーストラリア代表のアダム・アシュリークーパーや日本代表入りが期待される身長2メートルのハッティングらタレントは豊富。順法精神やプレーの一貫性など組織に関する領域の質を高めれば、トップリーグ初年度以来の優勝に近づくかもしれない。「カーターのようないい選手がいるチーム」から「カーターのようないい選手を擁して優勝するチーム」になるべく、日々研鑽を積む。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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