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サントリー・沢木敬介監督、「日本人をインターナショナルレベルに」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
流は入社2年目でキャプテンとなり就任3季目(写真は昨季)。(写真:築田 純/アフロスポーツ)

 日本最高峰のラグビートップリーグで3連覇を狙うサントリーは9月7日、東京・秩父宮ラグビー場でNTTコムとの第2節を20-18で制し、開幕2連勝を決めた。

 もっとも試合内容には沢木敬介監督、流大キャプテンとも不満足。序盤にスコアラッシュもミスをきっかけに相手に流れを渡し、指揮官は「まだまだチームに甘い部分がある」とした。1日、愛知・豊田スタジアムでの初戦もトヨタ自動車を27-25という接戦を演じている。

 試合後の会見では、クラブの日本人選手強化などに対する考えも明かした。

 以下、共同会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

沢木

「はい、皆さん、お疲れさまでした。前半の入りは悪くなかったのですけど、まぁ、ご覧の通り。ひとつのプレーで流れを相手に渡してしまっていて、まだまだチームに甘い部分がある。自分たちがどうなりたいかをもう1回、考えて、来週、神戸さんとの試合です。神戸さんの試合は中止になっていますけども(第2節が地震の影響で中止)、1週間空くのがプラスになるか、ハンディになるかは、僕らの今週の準備にかかっているので、しっかり勝てる準備をしたいと思います」

「ありがとうございました。よかったことは勝ったことぐらいで、あとはないです。今季はクロスゲームが増えていくと思うのですが、そのなかでもチームがひとつの方向を見て勝っていくしかない。勝ったことはよかったですが、このレベルでチャンピオンになれるかと言ったらそうではない。しっかりと自分たちを見つめ直し、日曜日からいい準備をしたいです」

――先週は土曜に、今週は金曜に試合が組まれた。準備時間の短さについて。

「言い訳できないです。最初から決まっていたことなので、そこに選手がどうコミットするか。スタッフからもプランニングが出ていて、身体の疲れを取るプログラムも出ている。選手の意識だけです」

――今日、うまくいかなくなったわけは。

「最初のようにボールを持ってダイレクトにプレーすれば、NTTコムさんに対していいアタックができたと思うのですけど、簡単にボールを失うと相手もアタックのいいチームなので…(相手の持ち味が出る)。

 メンタル的にも隙を与えた。ペナルティーを犯した後に早く10メーター後ろに下がって次に備えないといけないところ、相手に背中を向けて戻って、その間にアタックされて大きくゲインされたりとか。それは、サントリーにとってあってはならないことなので。プレーに関してはもう1回レビューしたいですが、まずメンタル的な隙を与えたことが(苦戦の)原因だと思います」

――あまりトライを取れていないこと。

「もっとトライは取りたいです。取れるだけのオプションは持っていますし、練習もしてきているのですが、それが結果に出ていないということは選手がもっとこだわらないといけない。ただ、前半入りのようにしっかりとコントロールできた状態でアタックできていれば(点が取れる)。今日の後半も、崩しかかっているところでフィフティ・フィフティのパスをしてノックオンで終わっている。どこもサントリーのアタックを研究している。一発で取ろうと思わず、しっかりとボールを持ってスペースを探していくようにしたいです」

――フッカーの先発は前回の北出卓也選手に代わって中村駿太選手でしたが、前半で交代。

沢木監督

「駿太もスクラムは弱くないですけど、今日はレフリングに対応できていない。そこですね。あのままでは印象が悪いので。あのぐらいのレフリングには対応しないといけない」

――中村選手の先発入りのわけは。

沢木監督

「先週、まぁまぁいいパフォーマンスだったからです」

――話題に挙がった新人の梶村選手。この日も2トライ。評価は。

沢木監督

「まぁ、見ての通りです」

――新人が活躍しています。

沢木監督

「今日もリーダー陣がもう少しパフォーマンスが出せるな、というところ。そこは次節に期待したい。(流を見て)別に、悪くはないよ」

――試合全体を振り返り、不満足な点は。

沢木監督

「我慢強さがない、雑、以上。最後の場面(点差を詰められて迎えた終盤)のようにならないと危機感が出てこないなど、隙が出ているのがチームの弱さです」

 サントリーは現在、選手の判断力強化などのために練習の設計を複雑化。例えば2チームに分かれての実戦練習をおこなう前、室内でのミーティングで「片方のチームは××(プレーの名前)を禁止。もう一方は〇〇をしてはならない」など条件を提示。「そして、その時点では誰がどちらのチームに入るかは言われていなくて、グラウンドに出た後に(振り分けがわかる)。10秒くらいしかハドル(チーム間での円陣)を組ませてもらえないなか、(ミーティングの内容を)話して、そのなかですぐに実行できるかどうかを(試す)」と、ある選手は言う。

 平時からタフな課題をこなし「インターナショナルスタンダード」を希求。相手の好プレーに伴い苦戦を強いられれば、その相手の好プレーを引き出した「メンタル的な隙」を悔やむのである。

 なお、この「インターナショナルスタンダード」という強化哲学は、外国人選手の能力に左右されがちなトップリーグの潮流にも風穴を開けるのだろうか。サントリーでは開幕節でマット・ギタウ、この日はショーン・マクマーンとオーストラリア代表経験者が相次ぎ怪我。その状況について問われた沢木監督は、「うちは日本人を鍛えているので」と即答する。

「今日も和製バックスだった(9番から15番まで日本人選手が占めた)。外国人を獲って補強するより、しっかりと日本人を鍛えてチーム力を上げるという考えがあります。ただ、プロテクト節(ルール上、代表選手を試合に出せない節=第7節)になると、プロップ(スクラム最前列)は絶対、3枚必要になってくるんですね。そうなると外国人を獲るしかなくなるんですよ(1名が代表に選ばれた際、試合を成立させるために最低2人以上をチームに残さなくてはならない。先日、セミセ・タラカイを獲得)。あと、いまだったらセンターも、中村亮土が代表に入っていて、これでもし梶村(祐介)が入ったら、日本人で(その穴を)カバーできなくなる。そうなると、どうしても(外国人選手を)入れなきゃいけなくなるというのがあります。ただ、うちは日本人をインターナショナルレベルに育てるという考えです」

 今季のトップリーグでは、特別枠の拡張などで外国人選手の活躍の場が増えている。例年の頂上決戦でも、多くの大物たちが効果的なプレーを披露してきた。

 とはいえチームの日常は、控え選手やコーチ陣など、レギュラー選手以外の多くの人間によって作られる。在籍選手の大半を占める日本人選手の資質が各クラブの完成度や土壌を左右するのは、確かかもしれない。

 沢木監督の「日本人をインターナショナルレベルに」は、ナショナリズムの発露というよりも優勝のための最善手と捉える方が自然だ。

――ちなみに、ギタウ、マクマーン両選手の状態は。

 沢木監督

「もう走れるんじゃないですか、はい」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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