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日本代表リーチ マイケルキャプテン、勝利は試合当日の朝に確信?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
快心の勝利(著者撮影)。

 ラグビー日本代表は6月9日、大分・大分銀行ドームでイタリア代表を34―17で破った。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが就任した2016年秋以後、欧州6か国対抗に出場するチーム(他にはウェールズ代表、アイルランド代表、フランス代表と順に対戦)を破ったのは今回が初。試合後は指揮官とリーチ マイケルキャプテンが会見。試合の背景などを語った。

 チームは前半15分に先制点を許すも、続く18分には自陣10メートル線付近左ラインアウトからのクイックスローを起点に攻め続ける。アマナキ・レレイ・マフィのトライなどで7―7と同点に追いついた。17―14で迎えた前半終了間際には自陣22メートル線付近右で組まれたモールを止め、耐えしのいだ。

 17―17と同点で迎えた後半17分には、自陣10メートル線右のスクラムから大きく揺さぶり敵陣10メートル線付近左中間でイタリア代表の反則を誘発。田村優がペナルティーゴールを決め、20―17と勝ち越しを決める。

 続く21分には敵陣中盤右のラインアウトからフェーズを重ね、田村が敵陣ゴール前中央から右にかけてキックパス。右タッチラン際にいた堀江翔太がタップし、レメキ ロマノ ラヴァがとどめを刺すなどして27―17とした。

 27分には連続攻撃から松島幸太朗がフィニッシュ。2019年のワールドカップ日本大会を目指すチームにとって、貴重な成功体験となった。

 ジョセフは今季、スーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズでの指揮官も兼務。日本代表勢の強化を促そうとしていた。この日の会見では、サンウルブズが開幕9連敗を喫するなど苦しんだ時期についても多く言及した。

 以下、共同会見時の一問一答(編集箇所あり)。

ジョセフ

「本日はお越しいただきありがとうございます。結果に嬉しく思います。これまで2年間、こういうレベルの試合をやるため、テストマッチでしっかりと力量を見せるまでハードワークを重ねてきました。今回もテストマッチのもたらすような、1個のミスが失点につながる状況がまさにありました。ハーフタイムには同点に近い接戦でしたが、選手たちがメンタルの強さで戦い切ったことに感心しています。まだまだ課題はありますが、成長した選手たちのリーダーシップに感銘を受けています。

 そしてイタリア代表は我々に多大なプレッシャーをかけてきました。高速でのオフロード、素早いアウトサイドバックス…。何もない状況からプレーを発展させ、あそこまでプレッシャーをかけてきたのはほめたたえたいです。来週はもっとタフな試合になることは覚悟しますが、しっかりした準備をしていきます。

 いままでサンウルブズの結果やパフォーマンスのことでいろんな話が出ていましたが、当初から言っていたように、サンウルブズ参戦の意図はテストマッチへの準備のためであり、選手たちはスーパーラグビーのおかげでここまでパフォーマンスを上げてくれました」

リーチ

「こんにちは。きょうの試合はテストマッチでした。試合中にすごく大事な場面がいくつかあって、それをチームとして乗り越えられたことはすごくうれしく思います。ただ、勝っても反省点がある。ラック周りのディフェンスが少しずつ行かれた(破られた)場面もあって、蹴ったボールへのディフェンスも少し乱れたところがあって。この2つは来週に向けて修正して、来週もっといい準備をしていきたいと思います。

 最後に。大分で初めて代表が試合をしましたが、たくさんの応援があって幸せでした。たくさん裏で動いた人もいたと思うので、これからも代表、次のワールドカップに向けて頑張りましょう。来週の試合は大事な試合。相手は必死にやってくる。それに勝てば自分たちの自信になる。しっかり、準備します」

――サンウルブズと日本代表との指揮官を兼務。

ジョセフ

「非常に試練でした。家族を置いてでも日本に来るということは、長年いい思いをさせてくれた日本に対し(現役時代に日本でプレー)、恩返しがしたいと思ったからです。日本代表のコーチングは、プロのコーチとしても大きなチャンスでもありました。サンウルブズに関しては、選手をもっと近くで見なくてはいけないと思い指揮を執ることにしました。最高峰のレベルでラグビーをするには、色々な犠牲を払わねばいけないと伝えています。それを私もやろうと思います。オンフィールド、オフフィールドで努力をしていますが、こういう成果も出ているので判断は間違っていないと思いました」

――「試合中にすごく大事な場面がいくつかあって、それをチームとして乗り越えられた」。具体的に。

リーチ

「自陣にラインアウトでサインがうまく伝わっていない時にミスをしてしまいましたが、それは後半に修正しました。トライをされた時も、自分たちの優位な状況になるようプランを立ててやりました。次のキックオフでいいキックをして(相手を)下げて、いい位置でボールを取り返そうとしました。田村優、堀江翔太、後半から出てきた流大は頼りになりました」

――勝敗を分けたポイントは。

ジョセフ

「(笑みを浮かべ)いま、ちょっと笑っていたのは質問に対してではなく…。記者の方から『どの瞬間が…』『どのフレーズが…』といった質問が多いと感じるんですが、ラグビーの試合は一言、瞬間にまとめられるようなものではない。テストマッチでは80分間の戦いで、アップダウンがあって、リードしていると思いきや巻き返される瞬間があり、それがだいご味ではあります。総括すると、何があろうが乗り越えたということが顕著に表れた点だと思います。チームでも、そういう意気込みでやっていこうとしていました。それをするためにはフィールド内外でも責任を果たさないといけないと伝えています。何が来ようが立ち向かう。それが勝敗を分ける」

リーチ

「試合前に勝っていたと思わせた時があります。それは、最高の準備ができていたからです。朝食を食べていた時、流と松田力也(ともにリザーブスタート)が喋っていることを耳にしました。『投入時にビハインドを背負っていたらどうするか。エリアを取るのか』と。選手たちは様々なシチュエーションを想定したうえで考えていると感じたので、試合前に勝てると感じることができました」

 ジョセフの言う「ラグビーの試合は一言、瞬間にまとめられるようなものではない」も真理なら、リーチの振り返る「朝食を食べていた時、流と松田力也(ともにリザーブスタート)が喋っていることを耳にしました」という具象もファンの興味をそそるだろう。

 15歳で来日のリーチは普段の会見では日本語を使うが、最後の質疑のみ英語で話していた。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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