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元日本代表キャプテン菊谷崇が語る、これからの選手育成。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
御所工業高校(現御所実業高校)在学時は人間教育の重要性に触れている。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 元ラグビー日本代表キャプテンの菊谷崇は、昨季限りで選手を引退しコーチ業に専念。現役時代から携わっていた若年層世代の指導を通し、早期からの状況判断力育成が必要と感じている。4月25日、都内で思いを明かした。

 この日は、東京都調布市で5月9日から始動するブリングアップラグビーアカデミーの設立会見に出席。小学生を対象としたスポーツ教育事業へ臨む意気込みを明かした。

 2011年のワールドカップニュージーランド大会で日本代表のキャプテンを務めた菊谷は、今年3月、高校日本代表のフォワードコーチとしてアイルランド遠征に参加。同国の19歳以下代表撃破を果たしたが、真っ先に感じたのは相手の組織としての判断力の高さだったという。

「アイルランドの選手は状況判断力が高かったんです。ジャパンが(防御で相手との間合いを)詰めるとわかったら、セカンドフェーズ目で(背後のスペースへ)セカンドフェーズ目でキック蹴られるんですよ。高校ジャパンの選手は素晴らしい。言われたことは絶対にできる。ただ、(スペースが)空いた瞬間にそこへ蹴られるだけの状況判断ができるかと言えば、まだまだ伸びしろがあると思うんです。小学生のうちからゲーム性のある練習で状況判断ができる、コミュニケーションが取れるという礎を築きたいと思っています」

 会見中にこのように語った菊谷は、会見とその後に予定されていた保護者への説明会の合間にも育成面についての思いを語っている。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――会見中のお話について。高校日本代表にもよさはあったのですよね。

「もちろん、勝ちましたから。ただ、アイルランドの選手がすごいな、とも思ったんです。そして、すごいな、と思ったところがそこ(判断力)だったんです。去年のチームの分析をしていたにしても、1試合目でキックオフを捕って、(グラウンドの)真ん中に(ランナーを)当てて、その次のフェーズで(防御の)裏へ蹴ってきているんですよ」

――そうした判断力を、早期から養いたいという思いがあるようです。アカデミーの全国展開などを考えているのでしょうか。

「まず、拠点を安定させる。いくつか候補(今後、新たなアカデミーを開設するための場所)はあって動いていますが、僕も身体はひとつ。(各地での開催を実現するには)コーチの育成が必要になります。事業なので(コーチ候補に名乗りを挙げた人には)ちゃんとした形にしてあげたいし、一方で評価もしなくてはいけない」

――2014年、それまで社員選手としてプレーしていたトヨタ自動車からキヤノンへ移籍。その後はプロ選手としての活動の傍ら、若年層世代の指導や日本体育大学大学院への通学もされていました。コーチを目指すきっかけは。

「最初のきっかけは、JKの時です(JKことジョン・カーワンが日本代表ヘッドコーチを務めていたころ。菊谷は2008年秋から約4年間キャプテンを務めた)。ワールドカップの前のイタリア合宿の時に『代表のキャプテンをしたら、それを経験を伝えることも仕事だろう』と。その時はまだ…という感じでしたけど、ワールドカップがあかんくて(1分3敗)、もう辞めようと思っていたんですけど、エディー(・ジョーンズ日本代表前ヘッドコーチ)と一緒にやっているなか、『伝える仕事をしよう』となりました」

 同アカデミーでは日本代表81キャップ(国際真剣勝負への出場数)を得てきた小野澤宏時、2003、07年のワールドカップで日本代表のキャプテンを務めた箕内拓郎とともに、毎週水、木曜日に小学校低学年、中学年、高学年にそれぞれ70分ずつの指導をおこなう。新たなスポーツ指導法の提案が期待される。入会希望者はこちらへ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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