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「結果残さなければラグビー人生無駄に」。慶應義塾大学の申し子、辻雄康が決意。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
空中戦でもキーマンとなる。(写真:アフロスポーツ)

 1899年創部と日本最古豪の慶応義塾大学ラグビー部は、付属校の有力株を擁し1999年度以来4度目の大学日本一を目指す。辻雄康が決意を明かした。

 身長190センチ、体重107キロのロックとして運動量と突進力で魅する辻は、慶応幼稚舎、慶応普通部、慶応高と系列校を経て現在大学4年。4月28日は神奈川・慶大日吉グラウンドで関東大学春季大会・Aグループ初戦をおこない、トンガ人留学生3名を先発させた大東文化大学に12-63と大敗した。

 以下、試合後の単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――試合を振り返ってください。

「前半20分くらいまでは自分たちのやろうとしていたこと、慶応らしさを出すというプレーが皆、できていたと思うのですが、土橋(永卓)君に行かれたところ(前半28分、100メートルゲインによるトライ)、外国人のゲインで差が開きだしてからは、自分たちのやれることをやろうという考えより、思考が止まって、トークも途切れて、セット(防御網の形成)も遅れ、慶応らしさが全然出ていないような動きになってしまった。そこで、リーダーのような人間をもっと増やさなくてはいけないなと思いました」

――確かに前半の終盤、大きな突破からの失点を重ねました。以後は、お互いの声が出ていなかったのでしょうか。

「(グラウンド内の)外側からのコールも出なくなって…。頑張ろうという気持ちはあったと思うのですが、試合の入りのような雰囲気がなかったです」

――相手が擁する留学生も、正面から低くタックルすれば止まっていました。

「外国人相手には刺さって…。最初のセット、ディフェンスををおろそかにしていては勝てない。練習量は慶応の方が多いと思います。ただ、(今日は全体を通して)自分たちの練習の成果が出ていないと感じました」

――外国人同時出場枠は、前年までの2から3に広がりました。

「それは事実なので仕方がない。さっき言ったことにつながると思うのですが、ディフェンスのセットなどで、80分を通して少しでも気を抜いてはいけない。そこを、大事にしていきたいです」

――慶応でプレーするのは今年が最後。

「ここで結果を残さなければ、自分のラグビー人生は無駄になってしまうと思います。大学日本一という目標は変わらないので、それに向けて1日1日を大事にしていきたいです」

――悲壮な決意ですね。優勝するには何が必要ですか。

「やはり、全員が日本一を目指すように。試合中は全員がリーダーに…ではないですが、死んでも勝つという気持ちで早くセットをする、何とかしようと思う…。これを何人かではなく、全員がそうしないと」

 その恵まれたサイズと運動量は、高校時代から関係者の注目の的だった。もっとも当時の新聞紙上では、著名人との血縁関係が主に取り上げられた。元プロテニス選手の松岡修造氏のおいでもある辻は、改めて当時の心境について問われ「誇りには思っています。ただ、(ラグビーとは)関係がないかな…とは」。対象者への敬意を忘れない紳士的な態度を貫きながら、いち競技者としてのプライドを覗かせた。

 昨季の4強だった帝京大学、東海大学、明治大学、大東文化大学のうち3チームは留学生を有し、いずれも国内屈指の実力者を並べる。内部進学者の多い黄色と黒のジャージィは、地を這うしぶとさと作戦遂行時の集中力で風穴を開けたい。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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