Yahoo!ニュース

帝京大学の強さの秘密、止められたあの一瞬…。竹山晃暉が語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
今季はゴールキッカーも務める。(写真:築田 純/アフロスポーツ)

 ラグビーの大学選手権の決勝戦は1月7日、東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれ、9連覇を目指す帝京大学は明治大学と対戦する。

 常勝集団で活躍を期待される1人が、3年生の竹山晃暉だ。

 ルーキーイヤーの一昨季は、所属する関東大学対抗戦Aでリーグ2位の18トライをマーク。奈良の御所実業高校時代からユース7人制日本代表となるなど評価されており、甘いマスクも手伝ってか多くのメディアに取り上げられてきた。

 いまも試合中のコミュニケーション、相手防御の隙間を突くポジショニングとランニングスキルを発揮している。

 1月2日、秩父宮での準決勝にも先発。昨季まで2シーズン連続で決勝戦をしてきた東海大学を33-12で下した。試合後は脱水症状のため取材エリアには登場しなかったが、試合後の交歓会などを終えてからグラウンド正門付近で囲み取材に応じた。立て板に水だった。

 以下、共同取材中の一問一答の一部。

――脱水症状だったのですね。

「そうですね。だいぶ、いまは大丈夫なのですけど」

――試合について。

「前半からスイッチが入っていましたし、全員の目も本気でした。前の試合であった隙というものは、この準決勝では克服できたと思っているので、その意味でもいいゲームだったと思います」

――12月23日、同会場での準々決勝では流通経済大学に大勝も反省点が多かったようです。ご自身も序盤、インゴールでトライをし損ねた。

「自分自身にもトライミスなどの隙もあった。東海大学さんに対して隙を突かれないというより、自分たちが隙を見せないラグビーをしようとした。それは試合に出ないメンバーが作ってくれた雰囲気のおかげでもあって。ここで準決勝へ向かってゆくいい文化を作れたとも思うので、これは来年以降も継承していきたいです。

 相手がどうのこうのというより、自分たちの目標に対してやらないといけないことをする。そのムードを作ってくれたのは周りなので、チーム一丸となって勝てたのかなと思います」

――「周り」。具体的には。

「練習で(控え組が)東海大学のアタックを再現してくれたり、身の回りの大掃除をしてくれたりして、Aチームが練習をしやすい環境、ムードを作ってくれた。4年生が、監督に言われる前にやってくれていた。この文化はいいな、と思いました」

――この日は自身もトライを取った。

「前半の最後、眞野(泰地)くんに止められたところが印象に残っていて。どうしたら抜けるかなということを、ハーフタイムで考えていました」

 本人が指摘するのは、14-7と7点リードで迎えたハーフタイム直前のワンシーンだ。

 自陣22メートル線付近左で、フルバックの尾崎晟也が相手のミスボールを拾って目の前の人垣へ突っ込む。タックラーにつかまりながらも、左端へ駆け込む竹山へオフロードパスをつないだ。

 竹山の目の前にはぽっかりと走路が空いていた。敵陣のゴールラインからは距離があるとはいえ、この人にとっては絶好のトライチャンスだった。

 

 しかし、竹山が敵陣中盤あたりまで進んだ先には、東海大学のスタンドオフである眞野が立っていた。

 竹山をタッチラインと挟み撃ちできるような位置で、身体を正面よりもタッチラインの方角へ向ける「半身」と呼ばれる体勢で待ち構える。

 竹山としては眞野に向かってゆけば止められる可能性が高く、眞野から逃れればタッチラインから出るリスクが生じる。

 結局、竹山は眞野から逃がれる選択をしたが、その瞬間、一気に眞野に間合いを詰められた。捕まったところで他の防御も寄ってきて、竹山はグラウンドの外へ押し出された。ライバルのうまさにやられた。

 

――あそこの眞野選手、単純にうまかったですよね。

「うまかったですね。うまいな、と、試合後に本人に言いました。ただ、あれと同じようなシチュエーションで取り切らないと、チームからの信頼を得られない。自分のスキルを上げていきたいです」

――改めて、この日のゲームプランは。

「ゲームプランはそれほど多くもなく、これまでやってきたことをやろう、まずはタックルから…と。相手の外国人選手2人もしっかりと止められて、ゲインを切らせることなく終えられたと思います。ただ、自分たちの目標は9連覇することなので、ここでほっとすることなく、ギアを上げて、目標に向かっていきたいです」

――自分が大舞台に強いという感覚は。

「自分が大舞台に強いかと言われればわからないですが、1年間やって来たことを遂行したいと思っています。また、自分が9連覇したら、10連覇という新しい目標ができる。そこへ繋げていきたいという思いがあります」

――3年生として見た帝京大学について。

「1、2年生の頃は何の考えもなく過ごしてきた部分はありますが、上級生の責任というのがひしひしと伝わりますし、帝京大学というチームをよくしたいという考え方が生まれてきているので、だからこのチームが強いのだと思いました。

 僕は学年のリーダーをしています。発言や行動は後輩が見ている。1、2年生の頃に過ごした時間を思い返した時に、もっとしっかりしないといけないなと感じました。やはり、このチームは4年生がしっかりと充実している。3年生はいま、グラウンドのベンチ前掃除を練習の前後にしています。これは続けるというところ、ただ掃除をするのではなく、きれいにして練習に臨むというところが大事。口だけになってしまうと信頼を掴めないので、行動で示したいと思っています」

――ご自身の部屋は。

 

「無茶苦茶、きれいです。部屋は常にきれいにしようとしています。帝京大は環境を大事にしているので、少しゴミが落ちていたら拾いますし、寮のほとんどの部屋がきれいです。週に1度は大掃除もしますし、上級生は点呼をする前に掃除をして、ご飯を食べます」

 取材の過程では、今年はオフの日もそれほど好きではなかったウェイトトレーニングに注力したことも明かしていた。とにかく13分程度の音声データに、膨大な言葉を残した。

 フィールドの空白を見つける身長176センチ、体重85キロのフィニッシャーは、7日、自分との戦いとしての決勝戦に挑む。

――改めて、大学選手権の決勝戦では。

「最後までやり続けること。最後のホイッスルが鳴るまで、楽しみ続けたいと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事