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トヨタ自動車は、自分との戦いに勝てるか。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
姫野は11月、フランス代表とも真っ向勝負。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

 国内最高峰トップリーグは、各組2以上が進めるプレーオフ進出枠の奪い合いが佳境に入ってきた。

 特に争いが激しいのはレッドカンファレンスの2位争いである。現在その位置につくのは、トヨタ自動車。かつて南アフリカ代表を率いたジェイク・ホワイト監督が新人の姫野和樹をキャプテンに指名するなど、開幕前から話題を集めてきたチームだ。

 3試合を残し、3位の神戸製鋼に勝ち点2差、4位の東芝には5差で追われている。12月9日にはホームの愛知・豊田スタジアムでNTTドコモと激突。相手はレッドカンファレンス7位と苦しんではいるが、やはり南アフリカ出身のダヴィー・セロンヘッドコーチのもとトップリーグから降格した一昨季とは違う生気を宿しつつある。快適さを奪われると難儀しそうななか、トヨタ自動車は自分たちとの戦いに勝てるだろうか。

 序盤戦こそ選手の吟味に時間を割いてきたホワイトだが、徐々に最適なコンビネーションを見極めつつあるか。特にバックスラインでは、自らとともに加入したスタンドオフのライオネル・クロニエ、フルバックのジオ・アプロンがランとキックで引き締めを図る。蹴り、ぶつかるという南アフリカのクラシカルな戦法をベースにしながら、キーマン2人が端的にスペースをえぐる。

 前節のコカ・コーラ戦は55-24で大勝。もっとも選手を入れ替えた終盤にはやや失点を重ねた格好。10月の第8節では、前年度王者のサントリーに大量リードをひっくり返されているだけに、攻防の規律を最後まで守れるかが見どころとなりそう。後半20分以降の防御ラインの並びやタックルした選手の起き上がりのクオリティは、もしトヨタ自動車がプレーオフへ進んだ際の結末を占いうる。その時のスコアにかかわらず、注視されたい。

 注目選手はやはりキャプテンの姫野か。11月のツアーで日本代表デビュー。3つのテストマッチにフル出場を果たした。タフな経験のもとコンディションも心配されるなか、生来の突進力は発揮されるか。

<第10節私的ベストフィフティーン>

1=左プロップ

三上正貴(東芝)…ホワイトカンファレンスで上位争いをするヤマハを下し、5連勝。前半29分ごろにはセンタースクラムでヤマハの反則を誘発。勝ち越しトライのチャンスを作った。

2=フッカー

彦坂圭克(トヨタ自動車)…強く速いランナーとして躍動。コカ・コーラ戦でのチーム3本目のトライは、この人が自陣深い位置から駆け上がったのがきっかけで生まれた。

3=右プロップ

浅原拓真(東芝)…三上、湯原祐希副キャプテンとともにスクラムを優勢に運ぶ。試合終盤には敵陣深い位置での一本で点差を7から10に広げるペナルティーゴールを獲得。チェイスラインでの好タックルもあった。

4=ロック

北川俊澄(トヨタ自動車)…コカ・コーラからはセットプレーを起点とした攻めでトライを量産したが、そのセットプレーの軸はこの人。ラインアウトの跳躍は安定。守っても防御の穴埋めに走ったりランナーをつかみ上げたりと渋く光る。

5=ロック

小瀧尚弘(東芝)…攻撃時は相方の梶川喬介とともに、防御の分厚いエリアへ果敢に突っ込む。腰を落としてのコンタクト。

6=ブラインドサイドフランカー

デービッド・ポーコック(パナソニック)…大勝したNEC戦でオープンサイドフランカーを務めた。まだ勝負が動く前の序盤、自陣でのターンオーバーを連発。攻めに転じた際もグラウンドのやや端側でのチャンスメイクを重ねる。

7=オープンサイドフランカー

藤田貴大(東芝)…ブラインドサイドフランカーの山本紘史とともに、地面上での仕事や低い姿勢での突進役を全う。シンビンで仲間を1人失った直後、自陣ゴール前でのピンチをターンオーバーで救った。

8=ナンバーエイト

リーチ マイケル(東芝)…人垣へ突っ込みながらのオフロードパスでスコアをもたらし、その前後でも好ランを連発。5点リードで迎えたラストワンプレーではバッキングアップからのジャッカルでターンオーバー。

9=スクラムハーフ

藤原恵太(東芝)…抜け出したリーチへの援護でトライを奪ったほか、ループなども交えた緩急自在のさばきでフェーズの増えやすい東芝の攻撃に彩りをつけた。

10=スタンドオフ

小野晃征(サントリー)…ループでグラウンドの端側へ抜け出したり、対角線上へのキックパスを繰り出したりと「スペースへアタックする」というチームの方針を貫く。

11=ウイング

アダム・アシュリークーパー(神戸製鋼)…NTTコム戦にフルバックとして先発。勝ち星こそ逃したが、ひとつのステップで複数の防御を引き付ける走りなどで前半のリードをもたらす。

12=インサイドセンター

マット・ギタウ(サントリー)…小野とともに、対する近鉄防御網の裏側へロングキックを飛ばす。蹴った先へ駆け上がって接点に圧力をかけるなど、ハードワーカーぶりも。わずかな隙間を見定めてのランも交え、じりじりと点差を離していった。

13=アウトサイドセンター

 

シオネ・テアウパ(クボタ)…サニックス戦では、インサイドセンター立川理道キャプテンとともにチャンスメイク。フットワークが光った。守っても腕力を活かしたチョークタックルなどで引き締め。

14=ウイング

カーン・ヘスケス(サニックス)…問答無用のぶちかましで得点を演出。

15=フルバック

ジオ・アプロン(トヨタ自動車)…自由自在な走りでスコアラッシュを支える。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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