Yahoo!ニュース

再開一発目の好カード。神戸製鋼対NTTコムは攻撃型対決も、かえって防御に注目?【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
元ニュージーランド代表のエリスは神戸製鋼の心臓。(写真:アフロスポーツ)

 国内最高峰トップリーグは12月2日、約1か月の中断から再開。同日からの2日間に渡って各地で開催される第10節は、2つあるカンファレンスでの順位争いをより厳格化させるか。

 特にレッドカンファレンスの2位と5位の対戦にあたる神戸製鋼とNTTコムの一戦(東京・秩父宮ラグビー場)は、各組上位2チームによる日本選手権進出をかけた者同士のカード。接戦が期待される。

 

 ここまでの勝ち点は神戸製鋼が29でNTTコムが23。一戦で得られる最大の勝ち点数は3トライ差以上での勝利による5とあって、一層より必勝の空気が漂うのはNTTコムか。もっとも神戸製鋼も、休止前最後の試合まで3連敗と苦しんでいた。いいリスタートを切りたい。

 両者とも攻撃を売りにする。グラウンドの左右へまんべんなく人を散らせ、スペースへ効果的にボールを配しにかかる。

 NTTコムはそれまでスクラムハーフやウイングを務めてきた友井川拓を司令塔のスタンドオフとして2戦連続で起用。陣形配置の妙で相手防御が広がっていれば、持ち前の速さでその間を突っ切れそう。

 神戸製鋼はスクラムハーフにアンドリュー・エリス、フルバックにアダム・アシュリークーパーと要所に国際級の大物を配列。エリスが蹴って、蹴り返されたところへアシュリークーパーがいるとなれば、海外の試合に親しんでこられた方にとってはたまらないシーンが見られそうだ。

 とにかくスペクタクルの競演が期待されそうだが、そのスペクタクルを阻止する防御も勝敗を分けそうだ。

 

 神戸製鋼は前節、13―15と屈している。リコーの飛び出す防御に流れを断たれたためだ。それに対し、ここまでのNTTコムの防御網は極端な前進が少ない傾向か。攻守逆転の糸口をどこに見出すかが注視される。フランカーの金正奎キャプテンのジャッカルなどが、相手の接点からの球出しを乱せるか。

 一方、神戸製鋼にとっての今季一番の会心の勝利は、ヤマハを38-19で制した第6節だろう。序盤から中盤にかけ鋭いシャローディフェンスが機能。その折出色の働きだった前川鐘平キャプテン、橋本大輝前キャプテンの両フランカーは次戦では欠場も、アウトサイドセンターに入る新人、重一生の思い切った飛び出しは試合を引き締めそうだ。

<第9節私的ベストフィフティーン>

1=左プロップ

山本幸輝(ヤマハ)…お互いにミスのあったクボタ戦の前半、自陣での相手ボールスクラムで杭を打つような押し込みを連発。向こうの反則や落球を誘った。

2=フッカー

種本直人(NTTコム)…コカ・コーラ戦のスクラムで優位に立ち、自らのトライなどで76―7と大差で勝利。

3=右プロップ

浅原拓真(東芝)…サニックス戦。崩れぬ姿勢でスクラム成功率を100パーセントとした。後半12分ごろの1本は自身の側からせり上がり、相手の反則を誘発。これでチームは敵陣ゴール前へ進み、間もなくスコアを27―20とした。

4=ロック

ケイデン・ネヴィル(豊田自動織機)…トヨタ自動車に惜敗も、接点へ身体を強烈に打ち込む。

5=ロック

アイザック・ロス(NTTコム)…猛攻に彩を添える突破やパス。

6=ブラインドサイドフランカー

マイケル・ブロードハースト(リコー)…神戸製鋼に15-10と守り勝ち。後半10分台に自陣に押し込まれた折は、タックルしては起き上がってもう一度タックル。武者大輔、松橋周平という他のフォワード第3列とともにハードワーク。

7=オープンサイドフランカー

デービッド・ポーコック(パナソニック)…サントリーとの全勝対決では要所でターンオーバーを連発。文句なしのヒーローだった。

8=ナンバーエイト

姫野和樹(トヨタ自動車)…豊田自動織機に後半から出場した新人キャプテン。防御ラインが揃ったところへ駆け込み、そのまま前進。

9=スクラムハーフ

矢富勇穀(ヤマハ)…防御の裏へのキックは、味方に再獲得を促すピンポイントの精度。自慢の走力でトライもマーク。

10=スタンドオフ

パエア ミフィポセチ(NTTドコモ)…キヤノン戦で攻撃を先導。本来は重量級センターとあって突進力が目立つものの、大外のスペースへのフラットなパスでも得点を演出。

11=ウイング

ヘンリー ジェイミー(トヨタ自動車)…長距離を走ってのキックチェイスで、相手の蹴り返しの距離を短縮化。攻めては前半終了間際のトライで一時勝ち越し。後半も鋭いカウンターアタックで得点をおぜん立て。

12=インサイドセンター

ヴィリアミ・タヒトゥア(ヤマハ)…セットプレーからの最初の攻撃で防御を勝ち割ったり、密集の後方で球をもらってそのまま駆け上がったり。とにかく前に出られる。

13=アウトサイドセンター 

タマティ・エリソン(リコー)…要所での鋭いタックルやジャッカルで魅せる。5点リードで迎えた後半35分ごろの球への絡みで、勝利を手繰り寄せたか。

14=ウイング

山田章仁(パナソニック)…左側の福岡堅樹のノーホイッスルトライのひとつ手前のフェーズは、右端でこの人が相手防御に囲まれながら着実にボールを活かしたラック。以後は時折相手に球をプレゼントするも、1点リードで迎えた後半21分には抜け出した松田力也に並走してのトライで16―10(直後のゴール成功で18―10)と勝負を決めた。

15=フルバック

ジオ・アプロン(トヨタ自動車)…好カウンターアタックと堅実なキック。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事