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山口に新チーム「ながとブルーエンジェルス」発足。ビジョン&未来は?【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
オリンピック出場時の冨田はスポット参戦。(写真:ロイター/アフロ)

 2019年のワールドカップ日本大会を2年後に控え、同大会キャンプ地にも立候補する山口県長門市に新しいチームが生まれた。ながとブルーエンジェルスという7人制ラグビーの女子チームだ。

 カラフルなジャージーをデザインしたのは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」のアニメーション監督、前田真宏氏(株式会社カラー)。エンブレムは、長門の美しい海から飛び出した7人の天使をイメージしているとのことだ。

 比較的関東圏にチームが集まる女子ラグビー界にあって、村杉徐司ハイパフォーマンスディレクターは、「西日本には強いチームがない。練習会も開催されていない。山口を中心に西日本のチームの交流を深め、盛り上げていきたい」。未来の選手にとっての主要プレー先として認識されるなか、15人制に挑戦んだり日本代表選手を育てたり、さらにはホームタウンで国際大会を開いたりしたいと夢を広げる。

 チームを物心両面で支えるのは、地元で超高層ビル向け鉄鋼を製作するヤマネ鉄工建設。山根正寛社長は「スポーツへの造詣もないのですが、話を承った時に直感的にこのチームを応援したいなと思いました。(その理由は)日が経つにつれて腑に落ちるものがありました」。支援を通し、社会生活における女性の活躍機会を増やすためのメッセージを発信したいと思ったようだ。すでに県内施設を多目的練習場に変えるなどサポートに着手している。

 選手の雇用もヤマネ鉄工をはじめ県内企業で賄われる模様。チームは直近までおこなっていたニュージーランド遠征から帰国したてだった11月13日、羽田空港近辺のホテルで会見。その日のうちに地元・長門市でもメディア対応をするという過密日程下、チームをサポートするヤマネ鉄工建設の山根社長はその両方に出席した。

 

 企業の支援をバックボーンとするクラブ運営は、業績や景気の影響とは切っても切り離せない。さらに2021年以降は、オリンピック東京大会開幕という各企業にとってのスポーツ支援の大義がひとつ失われる。

 そんな仮説に対し、山根社長は「社員を守ること」を第一としながら、スポーツの祭典が終わってからもチームに携わると話す。加えて、自身の見立てた人物をチームの事務局長に据え、将来的にはクラブ単体で活動できるよう促したいという。

 短期的な目標には、国内リーグである太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ参戦がある。同シリーズに挑むための入れ替え戦は11月18日、19日に神奈川・日本体育大学健志台グラウンドであり、11月1日からのニュージーランド合宿はその準備だった。

 同チームのメンバーとして登録(スポット参加)。元男子7人制ニュージーランド代表選手のエドウィン・コッカー新ヘッドコーチのもと、14選手中8名をニュージーランド人選手で揃え、オリンピックリオデジャネイロ大会日本代表の冨田真紀子もスポット参戦する。人口を徐々に拡大している最中の女子ラグビー界の国内リーグ入れ替え戦にあって、代表選手や王国のメンバーをそろえるチームは間違いなく脅威となろう。

 楕円球界の希少なブルーオーシャンを開拓しそうなプロジェクト。行く末が注目される。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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