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日本代表有数のタックラー布巻峻介は、反則減のために「余裕」を求める。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
フーパーと「対峙」した場面。写真下が布巻。(写真:アフロ)

 ラグビーワールドカップ日本大会を2年後に控える日本代表は、現在、フランス遠征中。18日にはトンガ代表、25日にはフランス代表とそれぞれぶつかる(ともに現地時間)。ジョン・プラムツリー新ディフェンスコーチが鋭く前に出る防御を提唱するなか、オープンサイドフランカーの布巻峻介が好タックルで存在感を示す。

 4日は神奈川・日産スタジアムで、ワールドカップ過去2回優勝のオーストラリア代表に30-63と完敗。CTBのテヴィタ・クインドラニらに走られた。布巻はこの日の取材エリアに現れ、チームの現在地や上昇への糸口を語っている。

 布巻は、タックルの強さやボール奪取への嗅覚を持ち味とするオープンサイドフランカー。東福岡高校、早稲田大学を経て、入団3年目のパナソニックではキャプテンを任されている。この日は相手の対面が世界的名手とされるマイケル・フーパーキャプテンだったが、対峙した実感はどうだったか。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――オーストラリア代表の印象は。

「強かったですね。個々が強いと思いました。アタックはシンプルでしたけど、強いランナーがボールを持ってくる。そこをどうしようかな、とは思いました」

――フーパー選手、いかがでしたか。

「そんなに対峙した覚えはなかったですけど、いい人間なんだろうな、と。常に(周りに)声をかけていましたし、キャプテンだな、と思いました」

――日本代表は前半、反則を犯かさねてボールを確保できませんでした。改善には。

「ディフェンスで余裕を持てるようになれば、反則をしなくても止められるという風になる。ゲインされても余裕を持っていれば、気持ちが焦らないから(反則も)どんどん減ってゆくとは思います。個人の意識を変えるだけですぐにレベルが上がる部分はあります。ただ、そこから上に行くにはチームとして強くならないと、規律は保たれないと思います」

 相手の首に手をかけてしまうなどの「個人で修正するペナルティ」を各人の努力で防ぐと同時に、チームとして攻防のシステムをより深い密度で共有。そうすれば、もし相手に突破を許すなどしても「余裕」を持ってプレーの規則性を保てる。その延長で、肉弾戦周りで慌てて反則を犯すという現象を減らせるのではないか…。布巻の考えは、こういうことだろう。

――防御システムが機能する場面はありましたが、結果的には失点を重ねてしまいました。その背景には何があったのでしょうか。

「タックルで止めているけど、(その後の接点から球を)速いテンポで出されてしまったから、(次の局面で)人数的な負けが起きた。…というシーンもあったんじゃないですかね。(相手の球出しを遅らせる動きは)できなかったです。相手の(接点への)寄りも早かったですね」

――とはいえ6月に2連敗したアイルランド代表との連戦時(布巻は不出場)に比べ、日本代表が攻守逆転を決めるシーンも多かったですが。

「僕の観た感じ、アイルランド代表は狭いエリア(で球を保持し)ミスをしないラグビーをしていた。だからボールも取れなかった。ただオーストラリア代表はある程度ボールを動かしていたので、(ランナーが)孤立する部分もあった。その差は大きいと思います」

 激戦の直後、両軍の様相をかくも俯瞰して説明した布巻。芝に立てばひとつひとつの局面に激しく挑みつつ、「余裕」も保たんとする。得難きファイターは、欧州の地でチームにどんなアプローチをしてゆくだろうか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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