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南アフリカ生まれのルアーン・スミス、日本代表の「3」へ挑戦か?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
オフィシャルファンブックの46ページを参照。

 ラグビーの右プロップというポジションは重労働が課せられる。スクラム最前列で両肩を相手に囲まれるなか、隣のフッカーと団結して後方の受圧を伝えなくてはならない。

 心身両面でのタフさが求められるこの位置にあって、日本を救いうる南アフリカ人選手がいる。

 ルアーン・スミス。身長187センチ、体重118キロの巨躯を活かした押し込みが長所の27歳。トヨタ自動車へ2015年に加入し今季が来日3シーズン目。2016年度のスーパーラグビー(国際リーグ)でオーストラリアのブランビーズに在籍も、諸条件が整えば日本代表資格の取得(国内居住3年以上)もそう遠くない。

 南アフリカに生まれたスミスは、2006年から両親とともにオーストラリアのキャンベラへ移住。国際リーグのスーパーラグビーでは、オーストラリアのフォース(来季から撤退)、ブランビーズでキャリアを積んでいる。トヨタ自動車では勤勉さ、オンとオフの切り替えなどでも信頼され、同じポジションで入社2年目の浅堀航平(今春、日本代表デビュー)の生きた手本となっている。

 10月7日、岩手・いわぎんスタジアム。国内トップリーグのリコー戦でも、9―6のスコアで迎えた後半22分頃に途中出場。自陣ゴール前右での敵軍スクラムをグイと押し返し、相手の反則を誘った。

 試合後、12―6で勝利したゲームの振り返り、現チームの様子、さらには日本代表への思いなどを明かした。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――勝負のスクラム。見事でした。

「残り20分という時間帯。リコーの選手たちは疲れていて、僕はフレッシュだった。チームにとってベストを尽くしたかった。ペナルティーをもらえてよかった。ひとりひとりではなく、8人で組むことを心掛けました」

――今季はジェイク・ホワイト新監督のもと、出場機会が限られている印象ですが。

「毎週、プレーしたいのが本音。でも、現実はこういう状況。自分が悪いというよりも、他の選手が必要だという風に捉えています。チャンスが来たときにはベストを尽くすという気持ちでやっています」

――あなたはまじめな練習態度でも知られます。

「プレーできない時にポジティブでいるのは、時に大変です。ただ、自分がイライラしてもセレクション結果は変わりません。ここでトレーニングを止めるのかどうかは自分次第。そういう場合は、ハードワークをして試合のメンバーのモチベーションを高めるのが自分の役割だと思っています。セレクションに入れなかった選手のハードワークを、自分が体現する。週末の試合に出ないメンバーも出るメンバーと同じように、準備をしていく。自分の役割を果たしていく…」

――ホワイト新監督が就いたチームは、どう見ていますか。

「全員がそれぞれの力を信じ始めるようになった印象です。それぞれが役割を果たすことでベストチームになれる、と。プレシーズンの時期はハードワークをしました。トレーニングもきつかった。そんななか、信じる心が生まれてきた」

――ボス、厳しいと聞きます。

「それまでのトヨタ自動車と違って、すごく、選手にプレッシャーをかけられています。ただ、選手たちはそのプレッシャーを楽しめる段階に来ています。自分がいいパフォーマンスをしないと、次の人にポジションを奪われる。そのプレッシャー下で戦っています」

――前年度8位からのジャンプアップを期すチームにあって、スミス選手は日本代表入りも期待されます。そもそも、興味はおありですか。

「すごく興味があります。日本にコミットしているので、チャンスがあるだけこの国でプレーしたいですし。ただ、日本にはいい選手がたくさんいる。(代表入りを)意識しすぎて頭でっかちにはなりたくない」

――スーパーラグビーには、日本代表と連携を図るサンウルブズというチームがあります。

「今年はスーパーラグビーを休みました。(疲れた)身体をもとの状態に戻すためです。ただ、来年はまたスーパーラグビーでプレーをしたい。まだ具体的な話はしていませんが、もしチャンスが生まれたら検討したいです。他のチームではプレーしたことがあるので、サンウルブズ以外のオファーは受けないと思います」

 2019年のラグビーワールドカップ日本大会に向け、日本代表の右プロップの座は群雄割拠の様相。今秋の代表候補にはトンガ出身のヴァル アサエリ愛やサンウルブズでプレーする具智元らが名を連ねている。この隊列に、「サンウルブズ以外のオファーは受けない」という愛称「ルー」が加わる日は来るか。

 ちなみに来季のサンウルブズは、10名程度の海外出身選手と契約する見込み。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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