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ヤマハ・清宮克幸監督、サントリーへ挑んだ「攻めた采配」語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
フルバックの五郎丸歩(右)はこの日、トップリーグ通算100試合出場を達成。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 今季の日本最高峰トップリーグにあって、ここまでのベストゲームだろう。

 

 東京・秩父宮ラグビー場で9月2日にあったサントリーとヤマハの第3節では、ノーサイドのホーンが鳴った直後にサントリーの小野晃征が逆転トライ。接戦だった。

 試合後に手ごたえを明かしたのは、24-27で屈したヤマハの清宮克幸監督だ。24―27で落とした前年度の直接対決時よりも、看板のスクラムが安定。力強い防御網がサントリーのミスを誘い、振り子のように球を回す攻撃で計3トライを奪った。

 この日、清宮監督は「攻めた采配」をしたという。この試合を制するだけでなく、今後のシーズンに向けた成長を促すためにタクトを振るったようだ。堀江恭佑キャプテンとともに、会見に出席した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

清宮監督

「最後、ああいう結果で負けはつきましたけど、選手たちの胸には負けというものはない。昨季の敗戦(24-41)から成長した姿を見せることができたと思います。これからシーズンは長いですが、自信を持って先に一歩進める敗戦だったと思います」

堀江

「前半は風下の戦い。ディフェンスの時間が多くなることはわかっていたんですけど、しっかりヤマハのディフェンスをして我慢して前半を折り返して、セットプレーも基本的にはは良かった。最後、勝負どころの反則(逆転トライを喫する直前にハイタックルの反則)や、我慢しきれなかったところ…。いい反省ができる部分があった。まだ先は続くので、これを活かせたらいいなと思います」

――きょうの試合展開や互いの得点は、試合前の予想と合っていたか。

清宮監督

「7:3でサントリーが7アタックするという予想で、実際にそうなりました」

――勝負を分けたのは。

清宮監督

「我々は今日、チャレンジしたということ。勝負どころでメンバーの変更をしたのですけど、あれは自分のなかではかなり攻めた采配で、どういう結果になるにせよ、この試合で前進したかったんですね」

 17-17の同点で迎えた後半19分。スタンドオフの大田尾竜彦に代え清原祥を投入する。

 大田尾は早稲田大学出身の35歳で、プレイングアドバイザーを務めるなど大きな存在感を誇る。それに対して清原は関東大学リーグ戦2部の東洋大学から加入の24歳で、鋭い仕掛けなどで期待される若手。上位チームとの接戦では大田尾を引っ張るところだが、清宮はあえて清原にキャリアを積ませた格好か。清宮監督は談話を続ける。

「前半に戦ったメンバーでギリギリしのいで勝つよりも、チャレンジするメンバーを出していきながら…という試合になった分、収穫は多かった。ゲームメイクは、清原出してからはボロボロですね(場内、笑い)。でも、こういう舞台を経験しないと。

 チャレンジはしたけど、成果が出なかったので考えなくてはいけない。若手も含めた新しい選手には、化学変化を起こして欲しいなという思いがありました。もう少し変わらないと、日本一にはなれない。いまのままでは、今日の試合を我慢して抑えていたとしても、次にやったら勝てなくなる。もう1つ、2つ、こちらが変わらないとだめだと思います」

 今季のトップリーグでは、この日の勝者であるサントリーや一昨季まで3連覇を果たしたパナソニックなど、分厚い選手層とゲーム理解度を誇るクラブが好調をキープ。昨季2位と進化をアピールしたヤマハの清宮監督が「もう少し変わらないと…」と感じるのも、自然な流れかもしれなかった。その発露が、この日の「攻めた采配」なのだろう。

 ちなみに指揮官は、スクラムについてこんな逸話も残していた。

「(左プロップの)山本幸輝。彼は去年のサントリー戦のスクラムについて、僕から辛辣な言葉で可愛がられていましたので、そこに対し、彼は1年で成長を見せてくれたと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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