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プレミアムフライデー。東芝、NTTコムの波状攻撃にトラブル起こせるか?【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
6月に日本代表へ復帰したリーチ。今季初先発へ(写真は2015年)。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 日本最高峰のトップリーグが8月18日、各地で開幕。25日からの2日間は各地で第2節がおこなわれる。

 金曜日にあたる18日は実施された開幕節5試合中2試合が17時キックオフと、勤め人をやや困らせたか(スーパーラグビーの準備期間確保のための措置)。今度も東京・秩父宮ラグビー場での一戦が金曜(25日)17時キックオフだが、今度の25日の金曜日は、15時の帰社が促されるプレミアムフライデーにあたる。プレミアムフライデー自体は実施率の伸び悩みが報じられているものの、トップリーグのホームページはこの催しを踏まえ集客を促している。使える手はすべて使う。

 当該のカードは、今節注目とされる一戦。東芝対NTTコムだ。

 東芝は過去5回優勝も前年度は9位。一方で、近年徐々に順位を上げていたNTTコムは昨季5位と史上最高位をマークしている。最後の直接対決時は34-29とNTTコムに軍配が上がっている。

 前年度こそ苦しんだ東芝は、2010年度以来の復帰となる瀬川智広監督のもと筋持久力とスタミナの強化を再徹底。昨季苦しんだ実力者たちを蘇生させつつある。

 今季は開幕節(19日、秩父宮)でNECを20-0でシャットアウト。瀬川監督曰く「春から練習してきたスタンディングラグビー(倒されずにボールを繋ぐ攻撃)ができなかった」ものの、守りで魅した。

 タックルした選手が素早く起き上がって次の標的を探す(リロード)など、意識とコンディションに裏打ちされたパフォーマンスを徹底。日本代表経験者と定位置を争うロックの松田圭祐、オープンサイドフランカーの藤田貴大はその象徴で、2試合連続の先発機会を得る。

 一方でロブ・ペニーヘッドコーチ率いるNTTコムは、翼を大きく広げたような攻撃ラインを駆使して陣地を問わず展開する。

 もっとも18日に挑んだ前節(秩父宮)では、オープンサイドフランカーの金正奎キャプテンが「消極的だった。普段やらないことをやってしまった」と反省することとなる。キックを蹴った後の防御を乱したり攻め出しても落球したりと、リコーに13-17で屈した。

 NTTコムが原点回帰すれば、自らのランでも光るスタンドオフの小倉順平が左右へパス。大胆な攻撃で、ファンを楽しませるだろう。

 ここで焦点となるのは、東芝の防御か。タックルした選手が素早く起き上がり、肉弾戦に入る選手が配球を鈍らせる。そうしたコンマ数秒のせめぎ合いいかんで、NTTコムの攻撃テンポに変調を加えられる。

 

 その意味では、防御時の密集戦で働くフォワード第3列が鍵を握りそう。特に今季初先発となるブラインドサイドフランカーのリアム・メッサムには注目が集まる。「フィジカルにできたかどうかが(自身の)バロメータ」と話すニュージーランド代表経験者は、強烈なタックル、球の出どころへのぶちかましで存在感を示せるか。

 ナンバーエイトに入る日本代表のリーチ マイケル、ロータックルで光る藤田とともに、NTTコムの連続攻撃にどこまでトラブルを与えられるか。接点で相手の球出しを遅らせることは、味方のリロードを促すことにもつながる。我慢の防御で攻めに転じれば、立ってボールを繋ぐ「スタンディングラグビー」の出番である。

 裏を返すと、NTTコムのボール保持者とサポート役がいい形で球を出し続けられれば、東芝の防御にトラブルを与えることとなる。ナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィ、ロックのヴィリー・ブリッツら、速さと強さに定評あるスーパーラグビープレーヤーたちの大規模なラインブレイクが期待される。

 攻め手が球を回すか、守り手が球を回させないか。格闘技兼球技と言われるラグビーの愉しさが伝わりそうだ。

<第1節私的ベストフィフティーン>

1=左プロップ

杉浦敬宏(サニックス)…低いスクラム。フィールドプレーで奮闘したコカ・コーラの右プロップ徳重元気の懐へ刺さる。

2=フッカー

星本泰憲(サニックス)…攻めてはタッチライン際で粘り腰を示し2トライ。スクラムをけん引。

3=右プロップ

石澤輝(サニックス)…スクラムで優勢に立つ。相手を掴み上げるチョークタックルでコカ・コーラの攻めを分断。

4=ロック

グラント・ハッティング(クボタ)…身長201センチながら地上戦で魅す。相手の攻撃テンポが遅れた場面では、たいてい起点でこの人が暴れていた。

5=ロック

ヒーナン ダニエル(パナソニック)…横幅の広い攻撃ラインで球をもらい、再三ゲインラインを破る。

6=ブラインドサイドフランカー

ベン・ガンター(パナソニック)…ハーフタイム直前などに強烈なタックル。タッチライン際でのスピードあるランも。肉弾戦での援護が激しかった布巻峻介キャプテンとともに快勝劇を下支え。

7=オープンサイドフランカー

スコット・フグリストーラー(豊田自動織機)…足元へ刺さって倒し、ボール保持者を掴み上げる。複数種類のタックルでロースコアゲーム(12-13で惜敗)を演出。強い。

8=ナンバーエイト

姫野和樹(トヨタ自動車)…新人キャプテンは、1つの攻撃シーンで2度ボールをもらうなど出現回数の増加を意識か。空中戦の競り合いでも相手の落球誘う。

9=スクラムハーフ

アンドリュー・エリス(神戸製鋼)…接点で球を拾えば、防御の薄い箇所へラン、パス、ハイパント。軽やかに指揮。

10=スタンドオフ

小野晃征(サントリー)…防御の逆を突くプレー選択。落球の増える酷暑の芝で32得点を演出。

11=ウイング

アンドリュー・エブリンハム(サニックス)…懐を活かしたオフロードパス、鋭いラン、キックチェイス。

12=インサイドセンター

マレ・サウ(ヤマハ)…再三の中央突破。

13=アウトサイドセンター

ニコラス・クラスカ(東芝)…大外からせり上がってのビッグタックルに強烈なラインブレイク。

14=ウイング

山田章仁(パナソニック)…接点際に飛び込んでトライを取ったり、防御の穴を埋めたりと神出鬼没。

15=フルバック

コンラッド・バンワイク(東芝)…ロングキックの名手が、防御の隙間を素早くえぐるカウンターアタックを披露。相手は守りづらい。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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