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サンウルブズのエドワード・カークキャプテン、日本代表条件クリアへの道は?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
世界中でファンと自撮り。(写真:Haruhiko Otsuka/アフロ)

たった2年足らずで日本のラグビー愛好家のハートを掴んだのが、現在25歳のエドワード・カークだ。

国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズに在籍し、初年度はチーム最多のタックル数をマーク。加入2シーズン目の今季は、立川理道とともにチームの共同キャプテンを任されている。

ファーストジャージィと同じオレンジ色のひげをたくわえ、身長191センチ、体重108キロの身体を肉弾戦にねじ込む。ジャッカルと呼ばれる、接点で相手のボールを奪うプレーを得意とする。

ファンサービスにも定評がある。怪我のため個別調整を強いられていた時のこと。自らのメニューが終わると、網の外で見学するファンのもとへ自ら歩み寄って握手や写真撮影に応じた。

昨季、国内トップリーグでの所属先が決まらなかったことで、短文投稿サイトのツイッター上では「#エドワード・カーク獲れ」というハッシュタグが舞った。今季は一転して、日本でのプレー先も決めた。

6月1日にキヤノンへの加入を発表し、3日のサントリーとの練習試合を見学(21-35で敗戦)。試合後は単独取材に応じ、スーパーラグビー後半節に向けての思いや日本代表入りへの意欲について語った。

日本代表入りへは過去の7人制オーストラリア代表歴がハードルとなっているが、本人は「結果として選ばれればその(代表入りへの)誘いを受けたい」と断じる。

試合会場での前日練習があった24日、共同会見に応じた。

以下、一問一答の一部(編集箇所あり)。

――キヤノンへの加入が決まって。

「トップリーグのチームに入れてエキサイティングな気持ちです。素晴らしい会社で、素晴らしいチーム。加入は、私にとっては簡単な決断でした。今後、キヤノンでプレーする機会をもらえたのはとても幸運なことです」

――ご自身のコンディションは。

「サンウルブズのアルゼンチン遠征(5月上旬)中に手を骨折してしまい、ここでリハビリをしています。できるだけ早くキヤノンにも訪れたかったので。以後2週間はリハビリを続け、その時にどういう状況かを見て、サンウルブズへ合流するかを決めます」

――サンウルブズの活動期間中は、ファンサービスにいそしむ姿が印象的でした。

「キヤノンでも同じことをしようと思っています。会社、チケット代を支払ってくれるファンの方がいないと、ラグビーは成り立たない。最低限のこととして、誠意を見せたい」

――今季はサンウルブズのキャプテンを務めています。

「勝ちこそありませんが(ここまで1勝)、チームの成長は見られます。日本人選手がスーパーラグビーの環境のなかに入っていけているのは、いい状況だと思います。キャプテンとしては、すごく学ぶところが多い。長いツアーに出た時、チームをどうマネージメントするか…。ただ、そのなかでも、自分が自分自身であり続けること、ゲームに集中することが大事。オフフィールドのことはコーチ陣に色々と相談できますが、選手が一番反応してくれるのはフィールドでの自分の姿勢なので」

――シーズン序盤、カーク選手の試合中の喝に日本人選手が反応しづらかった時期もあったと聞きます。

「そうですね。日本語を少し(この箇所は日本語で返答)、勉強しています。時間をかけてお互いのことを知っていって、日本人選手が英語を学び、私たち外国人選手は日本語を覚え、中間点で折り合う形になってきている。サンウルブズの選手たちとは仲良くやっています」

――日本代表も期待されていますが。

「まず、選んでもらわなくてはいけない。代表でも、サンウルブズでも、キヤノンでも、ポジションを確保してもらっていることはあり得ない。どのチームにもいいバックロー(カークの務めるポジション)の選手が揃っています。スーパーラグビー後半戦に向け、自分のゲームに取り組んでいく。キヤノンでも同じことをする。結果として選ばれれば、是非その誘いを受けたいと思います」

――代表入りの条件については、どう認識されていますか。

「7人制代表に3回呼ばれたことがあります(ワールドラグビーのホームページによれば18歳の頃、2010年2月のラスベガス大会、同3月のアデレード大会、香港大会とワールドシリーズ3大会でプレー)。ただ、ルールが変わっている。解決してもらっているところです」

カークが「ルールが変わっている」と指摘する通り、統括団体のワールドラグビーは「協議に関する規定」の第8条(代表チームでプレーする資格)を今年5月に改正している。

そのうち、7人制代表歴を持つ選手に関するルールは2017年7月から有効化。「1,参加当日かそれ以前に20歳を迎えた者がシニアのセブンズ代表でプレーした場合」または「2,参加当日か、それ以前に成年(18歳)に達した者が、セブンズ代表としてオリンピックあるいはラグビーワールドカップセブンズでプレーした場合」が「第8条の対象になる」とある。

すなわち、例えばオーストラリア国内で「1」「2」のいずれかの手順を踏んだ選手はオーストラリア代表入りの資格を取得、および行使していると目される。

カークは「1」に抵触する試合には18歳で出場しており、「2」に抵触する試合には出たことがない。もし上記のルールが適用された場合、日本代表入りへの障壁は少ないのでは、と見られている。

それでも何人かの日本ラグビー協会関係者は、カークの代表歴がジャパン入りの障壁になっていると口を揃える。

今度の7人制代表関連の改正が適用されるのは2017年7月。カークがオーストラリア7人制代表でプレーしたのはそれ以前の出来事だったため、たとえ当時18歳だったとしても「オーストラリア代表歴を持つ選手」と断じられる可能性も強い、というわけだ。

その他の代表入りへの条件は、「国籍取得を経て、7人制日本代表として国際大会に3大会以上出場する」というものがある。もっとも、15人制のワールドカップの日本大会は2年数か月後に迫っており、その時カークは28歳。脂が乗った状態で自国開催の大一番に出るのが、ファンにとっての願いでもあろう。

人気者の夢の実現には、本人の強い意志、もしくは周囲の情報収集力や交渉力などが求められそうだ。日本協会の「解決」を信じるカークは、改めて強調する。

「自分に選ぶ権利があるなら、ここに残って日本代表に入るのが目標です」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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