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日本代表にリーチ マイケルら。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ意気込み。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:アフロ)

日本ラグビー協会は5月29日、都内で会見し、6月に国内でルーマニア代表戦、アイルランド代表戦をおこなう日本代表のメンバー33人を発表。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチと薫田真広強化責任者が意気込みを語った。

2019年のワールドカップ日本大会での8強入りを狙う日本代表にとって、アイルランド代表は予選プールAでも戦う相手。ルーマニア代表も同組の「ヨーロッパ予選1位」の最有力候補とされている。

チームは6月2日から福岡で合宿を開始。10日に熊本・えがお健康スタジアムでルーマニア代表戦に挑む(9日に現地入り)。11日に再び移動し、静岡・エコパスタジアムで17日のアイルランド代表戦に臨み、18日から都内でキャンプを張り、24日、東京・味の素スタジアムでアイルランド代表と再戦する。

以下、会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

薫田

「今回の試合に関しては、すでにご存じの通り、2019年に対戦する、もしくは対戦するであろうチームとの貴重な機会。2019年に繋がる試合をしていきたいと思います。

昨年までとの違いは、PRC(20歳以下日本代表プラスアルファで編成されたジュニア・ジャパンが、3月に挑んだパシフィックチャレンジ)、ARC(若手中心の日本代表が4~5月に戦ったアジアラグビーチャンピオンシップ)、サンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦)、ジェイミーヘッドコーチ肝いりのプログラムであるNDS(3~4月、サンウルブズの遠征不参加者やARC出場候補者が合宿をおこなった)。これがしっかり連動したなかでのセレクションがおこなわれた。これが成果だと思います。

これまで、エディー体制(2015年のイングランド大会で3勝を挙げたエディー)66名の選手を対象としながら選んできた。今回は85名を見極めながら選んだ。これは2019年に向けてジョセフ、そしてコーチングチームがしっかりと見極めるためのセレクションです。これからジョセフがメンバーを発表しますが、マネジメントとしてはそういう成果が出ている」

ジョセフ

「お越しいただきありがとうございます。薫田さんの仰る通りPRC、ARC、PRC、NDSと、我々の強化プランに計画性や深みを持たせたいと思っていました。もちろん、私の仕事の大きな部分を占めるのは代表チームのコーチですが、日本に少しでもいいラグビープログラムを落とし込んでいきたいという思いもあります。NDSから触れますが、この大会を通じて次の層の選手の強化を図れたと思います。それとサンウルブズの活動もあったので、サンウルブズにベストの選手を供給する役割もあるチームだったので、リコンディショニングをして、サンウルブズに戻すことができたと思います。いい例が、サンウルブズの戦ったブルズ戦です(4月8日に初勝利)。いいパフォーマンスをしたのは5名のリザーブ組です。そのなかの稲垣啓太、布巻峻介、田村優は4週間のNDSを経てそこへ戻ったのですが、当日の活躍で、ホームでの勝利を挙げた。あの形が我々の目指していたことです。

スーパーラグビーに参加することで、選手にタフなラグビーに触れる機会を与えられている。この数週間、怪我が成績、結果へ顕著に影響していると思います。ただ、ARC、PRC、サンウルブズのアライメントを確実に得られています。一貫したコーチングという意味でもです。

ここでもうちょっとスーパーラグビーの話をしますが、私もサンウルブズ、スーパーラグビーの試合を観ています。スーパーラグビーはラグビーマラソンのようなものと取られています。遠征で10万3000キロ、130時間を費やしています。ハイランダーズの3倍。他のチームと比べても2倍です。それだけのことを彼らは経験している。

その一方で、6月の3つの試合はラグビースプリントと捉えています。3試合ともホームで移動も最小限。家族、友人の前でパフォーマンスをする。6月のテストマッチ。私自身、ワクワクしていてモチベーションも高いです。セレクション基準のひとつは、日本代表を背負うのに最適な選手と捉えています。その意味ではいいスコッドを選べた。しっかりと準備します。天候は暑いことが想定されます。初戦の場所は九州。非常に楽しみです。

今回戦うルーマニア代表とアイルランド代表はそれぞれタイプが違う。日本とも違う戦い方をする。ルーマニアはパワフルで、アイルランドは経験豊富。暑い気候のなか、少しでもテンポを早くし、やりたいことに終始していければ自信も生まれ、いいものができるのではないかと思います。

次にスコッドの読み上げをおこなう前に、3人ほど特記したい選手がいるのでその話もさせていただきます。

この3人に関しては6月に選ばれるべき選手でしたが、選考されなかった選手。小澤直輝、布巻峻介、アニセ・サムエラ。小澤選手に関しては代表で最初のチャンスになるはずだったのですが、残念ながら土曜の練習で怪我をしてしまったということです」

<以下、ジョセフヘッドコーチ自ら口頭で選手名を読み上げる>

■フォワード=18名

左プロップ

石原慎太郎(サントリー/181/105 /26/4) ★

稲垣啓太(パナソニック/186/116/26/13)●▲

山本幸輝(ヤマハ/181/118/26/3)●

フッカー

庭井祐輔(キヤノン/174/102/25/―)●

日野剛志(ヤマハ/172/100/27/4)●★

堀江翔太(パナソニック/180/104/31/49) ●★▲◎

右プロップ

浅原拓真(東芝/179/113/29/5)●

伊藤平一郎(ヤマハ/175/115/26/4)●

知念雄(東芝/184/125/26/6)★

ロック

梶川喬介(東芝/188/105/29/4)●

ヘル ウヴェ(ヤマハ/193/115/26/3)●

真壁伸弥(サントリー/192/119/30/34)●▲

谷田部洸太郎(パナソニック/190/107/30/12)●★

フランカー

ツイ ヘンドリック(サントリー/189/110/29/38)▲

徳永祥尭(東芝/185/100/25/4)●★

松橋周平(リコー/180/99/23/6)●★

ナンバーエイト

アマナキ・レレイ・マフィ(NTTコム/189/112/27/13)▲

リーチ マイケル(東芝/189/105/27/28/47)▲

■バックス=15名

スクラムハーフ

内田啓介(パナソニック/179/86/25/21)●

田中史朗(パナソニック/166/72/32/58)●▲

流大(サントリー/166/71/24/4)★

スタンドオフ

小倉順平(NTTコム/172/80/24/2)●★

田村優(キヤノン/181/91/28/42)●▲

松田力也(パナソニック/181/92/23/7)★

ウイング

江見翔太(サントリー/180/95/25/―)●

福岡堅樹(パナソニック/175/83/24/17)●▲

山田章仁(パナソニック/182/88/31/21)★▲

センター

デレック・カーペンター(サントリー/183/94/28/―)●

立川理道(クボタ/180/95/27/51)◎●★▲

ウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ/187/101/26/―) ●

ティモシー・ラファエレ(コカ・コーラ/186/98/25/4) ●

フルバック

野口竜司(東海大学/177/86/21/8)★☆

松島幸太朗(サントリー/178/87/24/22)●▲

カッコ内は(所属チーム/身長/体重/年齢/キャップ(テストマッチ出場数)

◎はキャプテン

●はサンウルブズの2017年メンバー(追加招集期間修了者は除く)

★はARCへの参加者(試合出場者のみ)

☆はPRCへの参加者

▲は2015年のワールドカップイングランド大会出場者

<以下、質疑応答。回答者はすべてジョセフヘッドコーチ>

――ルーマニア代表戦にどんな試合をしたいか。

「違うタイプのチーム。昨秋に戦ったジョージア代表もそうでしたが、強いスクラム、モールも長けている。一方で私たちも一貫した自分たちのラグビーをしたい。強みをなるべく出す。マインドセットも変えずにやりたい。ハイテンポなラグビーをしていきたい。そこへの姿勢はそんなもの。スクラム、ディフェンスは避けては通れない。そこがチャレンジになります」

――リーチ マイケル選手について。選んだ理由と期待は。

「彼がいまプレーするポジションでベストなプレーヤーであることに尽きる。今回の参戦シリーズでリーチに戻ってもらって、日本代表がどんなプレーをしたいのかを一緒にやることで学んでもらいたい。他にも何人か戻って来た選手がいますが、彼らにはラグビープラスアルファのところで戻って来た意味を見出したいと思います」

――サンウルブズでプレーしていた選手以外にとっては、チームで合わせる時間が限られているが。

「サンウルブズにいなかった選手は、むしろNDS、ARCを通じて一緒に過ごした時間が長い。例えば石原は私が直接コーチングしているし、野口はPRCにも参加しています。私たちのラグビーをするのに適切なスキルセットを持った選手です。

(リーチら海外組に関しては)彼らはラグビーの色々な経験をしてきている。少し時間はかかると思いますが、一定のポイントで然るべき影響を及ぼしてくれるともいます。私たちがしっかりとコーチングができれば、ですが」

――100キャップ取得に迫った大野均選手、ニュージーランドでのプレー経験のある茂野海人選手の落選に関して。今後のことも含め。

「80人以上の選手を見てきたなか、この2人に限って選ばない理由を語るのはアンプロフェッショナルかと思います。その一方で是非皆さんにお伝えしたいのは、選手選考がハードだということ。多くの選手が選考にぎりぎりまで残る力を持っている。ただ、そこで誰かが決めないとスコッドは決まらない。そこでがっかりに思う選手が出るのは、いいことだと思います。がっかりした選手たちと私が話して、コーチがフィードバックを与えることで、成長を続ける。それがラグビーかと思います。

大野選手について申し上げると…。彼は98キャップを数えています。もちろん私たちの選考対象の1人でしたが、途中で怪我があり、選考に十分な試合数がなかった。それが今回の結果。そうはいってもサンウルブズで絶大な存在感を放っているの。怪我が治れば、活躍の場があると思っています」

――昨秋と同じ堀江選手と立川選手の共同キャプテン制について。

「一貫性のあるチームを強化するには、コーチング、パフォーマンス、リーダーシップにも一貫したものが必要。昨秋決めた立川、堀江の2名のキャプテンはあとで考えてもベストな選出だったと思っています。リーダーをサポートするのも、スタッフの仕事です。彼らのパフォーマンスも評価してこの2人がベストプレーヤーで居続けてくれることが大事だと思っています」

――連敗しているサンウルブズへの意見は。

「サンウルブズの印象について、私の意見を述べさせていただきたいのですが、シンプルなことです。庭井さんを例に挙げれば、トップリーグで毎試合出場し、すぐにサンウルブズに招集されて11試合中9試合に出場している。また、10万3000キロ旅をして、年中活動している。これは準備として決していい準備の仕方とは言えないと思うんです。ただ、それでもスーパーラグビーに居続ける。2019年を鑑みた時には、どうしてもこのタフな戦いが必要だからです。短期的には犠牲となりますが、長期的に見てこの戦いは必要だと思います。

サンウルブズ以外のチームを見た時、彼らには4週間のレストがあり、8週間のプレシーズン期間がある。さらにサンウルブズには2~3倍の移動距離がある。準備、いまいい準備ができているわけではない」

――以前、薫田さんは「サンウルブズ参加しない選手は日本代表へ呼ばない」といった発言をされています(本人は「一言も言っていない」と返答)。リーチ選手らがこのスコッドに入っているということは、来年サンウルブズに加わるという認識でよいか。

「五郎丸(歩)選手を含めての話ですが、海外でプレーする選手についてはケースバイケースと考えています。他のチームで成長する選手もいると思っていますし、かつての田中選手のハイランダーズでの活躍がそうだった。もちろん、ゆくゆくは代表選手全員がサンウルブズでスーパーラグビーを戦う形には持っていきたいと考えています。私の仕事のひとつに挙げられるのは、この考えを選手に伝えること。ワールドカップも、サンウルブズも一緒に戦うという考えを浸透させたい」

――この時期にワールドカップで戦うアイルランド代表とぶつかる意義は。相手は英国連合軍に主力を取られているものの、経験者も残っている。どんなラグビーで勝つか。

「私、アイルランド代表側も含め、この6月のテストマッチを戦うコーチ陣は、チームに経験を授けようとしています。アイルランド代表にはそれなりの経験者もいる一方、未来を見据えた選手選考をしている。私も今回の機会を通じ、野口選手のような選手の能力を高めたい。油断はできず、チームとしては強い。どんな選手たちであれ厳しい挑戦だと思っています」

――今回のアイルランド代表戦は、英国連合軍に人を裂き6月に来日しているという点では4年前にウェールズ代表に勝った時とほぼ同条件。ファンは勝利を期待しています。

「我々は通常通り、多くの場面で一貫性を持ちたいと申し上げていると思います。そのなかで最近のサンウルブズの数字を見ると、相手へプレッシャーをかけている部分がある。それを多く出したいと考えています。セットプレー、アンストラクチャー、ディフェンス。この3つを特化したいです。

ウェールズ代表について触れておられました。彼らが当時どんなチームだったかは私の知るところではありませんが、今回のアイルランド代表に関しては以前とそっくり様変わりしたチームになった。ジョー・シュミットヘッドコーチのもと、効果を出し始めている。その裏では多くのハードワークもあった。アイルランド代表にも厳しい時間があっていまがある。厳しい対戦相手になるのは明らか」

――近年のテストマッチでは、試合によってはレフリングとかみ合わないこともあるようです。今後、どうクリアにするか。

「昨年11月に取り組んだことがありました。立川、堀江と両キャプテンと、試合前日の夜にミーティング時間を割いて、『ゲームのなか、特に圧力を受けるなかで選手がどんな対処をするか』の話をしたのです。それをした理由は2つ。まずは私とキャプテンとの関係を作ること。もうひとつは、フィールド上でマッチオフィシャル(レフリー)とのコミュニケーションをうまく取ってもらうためです。この機会を通じて、外国語での会話のやり取りにもっと慣れて欲しいと思っていました。あの時の遠征で両キャプテンに関する収穫があったと思っています。

もうひとつ、レフリングに関する印象を申し上げます。昨年6月のスコットランド代表戦(国内で2連敗)には、ものすごくゲームがスローだと感じました。それはスコットランド代表がスローな展開を目指していたから。それに対する我々のミステイクは、我々もまたそれと同じペースでプレーをしてしまったこと…なのですが、加えて、レフリーも試合をスローにしてしまいました。(スコットランド代表のゲームプランに)付き合ってしまっていた。今度の6月は、我々はレフリーも含めてテンポの速いゲームにしていきたいと思います」

――リーチ選手の所属先のチーフスは、英国連合軍との試合を控えている。リーチ選手は代表活動に専念するということか。

「全選手が今週末から福岡に集合します。そこに彼も含まれます」

――サンウルブズなど各種活動に参加しない日本人選手は、選考対処にして選ばなかったのか。選考対象にならなかったのか。今後、各種活動に参加していない選手は選ばないという解釈でよいのか。

「活動に入っていない選手も見てはいます。でも、こういうスコッドを選んだ、ということです。ARC、NDS、PRC、サンウルブズ。どの活動も、我々の活動に寄与する選手を育む場と捉えています。(国内の)トップリーグ、サンウルブズ、その他活動、さらに6月(テストマッチ)…となるのが一番いい流れ。そこを見ていくのが私の務めです。もちろん国の代表を選ばないといけないので、そこに入る選手は一定の枠に絞られると思います」

昨年11月のツアー時は招集に関する調整の不一致などで経験者が相次ぎ辞退。その当時と比べたら「一貫性」は担保されていよう。結果にコミットできるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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