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「スイッチオフしたら取られる」。サンウルブズ完敗を当事者が語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
悔しい敗戦。肉弾戦でファイトしたマルジーン・イラウアも「全員でやらないと」。(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

【タイトル】

国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦中のサンウルブズは5月27日、東京・秩父宮ラグビー場でチーターズとの第14節に挑み7―47と大敗。要所でのミスなどに泣いた。

ここまで1勝10敗2休だったチームは、相手のミスからボールを奪取もなかなか得点を奪えず。前半は懸命な防御を重ねるも前半40分にこの日2つ目のトライを決められ0-14とされ、仕切り直しを図る後半1分にも蹴り合うさなかのカウンターアタックから追加点を奪われた。その後も要所で防御網を乱し、大量失点を喫した。

サンウルブズは選手、スタッフ、戦術などを日本代表と共有。選手を入れ替えながら国際経験を積んでいる。

リーグ戦はこれから約1か月間の中断期間に突入。6月は日本代表などの各国代表が試合をする「ウインドウマンス」に入る。

以下、フィロ・ティアティアヘッドコーチと立川理道キャプテンの会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――この日のような蒸し暑い天候は、日本のサンウルブズにとってアドバンテージとなるはずだったような。試合の感想をお聞かせください。

立川

'''「全体的にはスコアを取り切るところでなかなか取り切れなくて、アタックのできる時間帯も少なかった。少ないチャンスで取り切ることが、これからの課題になるのかなと思います。ディフェンスでは1対1で止めきれない部分で、相手にうまくアタックされた。

天気については、お互いしんどかったと思いますし、向こうも、目に見えて体力が落ちていたのがわかった。そこのアドバンテージをしっかりと活かさないと、勝ちは来ないのかな、と思います」'''

ティアティア

「前半はずっと7点差で、いいチャンスあったとは思います。どちらかと言えば両チームともにもろい状態で、そこでチャンスを掴めていれば、試合結果が変わっていた。チャンスを掴めなかったのが、現実です。きょうはラグビー日和。そこで我々のプランを遂行できなかったのは残念です。チーターズが立ててきた、オフロードパスをつなぐプランが遂行された試合だったとも思います。常にサンウルブズは成長を積み上げないといけないのですが、最後の2試合はたくさんのポイントを奪われた。集中力の積み上げが大事になると思います」

――序盤は自陣に居続けることとなった。

立川

「前半、なかなかエリア取れなくて我慢の時間帯が多かったですけど、風も影響していましたし、相手のバックスリーがどんどん走って、蹴り合うなかで自分たちのストラクチャーに戻れなかった。最後に取られないのがベストでした。後半、さあこれからというところですぐに取られたのが、この試合の綾になったと思っています。自分たちが少しでもスイッチオフしていたら、ああやって取られる。それがスーパーラグビーなのかなと思います」

――チーターズ陣営はサンウルブズにキックを蹴らざるを得ない状態にしたようです。サンウルブズがボールキープではなくキックを選択していた理由は。

立川

「ビデオを観ないとわからないですけど、やっているなかでこっちが効果的にキックできた部分もあったし、しんどい状況で蹴った部分もある。しんどい状況で蹴ることは少なくしていきたい。いい状況で蹴ってプレッシャーをかけていくというのが、いまのサンウルブズのストラクチャーのひとつ。相手がやることを理解して、試合に応じて、キックするか、キープするかという判断を磨いていきたいと思います」

――春におこなったニュージーランド遠征時には負けたとはいえいい試合もあった。今回、その時と比べて何が悪かったか。

ティアティア

「ニュージーランドではポジティブな部分がたくさんあった。若手もたくさん起用し、毎試合成長できた。クルセイダーズ戦、ハイランダーズ戦と一歩ずつ積み上がり、チーフス戦は勝つべきところに行った。ただ、(怪我や日本代表の方針などから)毎回違うコンビネーションで試合をしなければいけません。1人ひとりにチャンスを与えているつもりです。きょうに関しては60分までチャンスがあった。最後の20分で、いい試合運びができませんでした。学びのたくさんある試合になったと思います」

――中断期間中。日本代表に参加しないサンウルブズの選手には、どんなプログラムが組まれますか。

ティアティア

「代表に関与しない選手には、プログラムを立てています。最初の1週間はリコンディショニングに特化したい。選手によってはトップリーグのチームに戻ってコンディショニングを整える選手もいます。その後、7日間のクボタで合宿をして、南アフリカ遠征に行きます。限られた時間。チャレンジになります。再度申し上げたいが、我々にはベストなファンがついている。結果についてはがっかりしている。ただそこでどう組織として向上できるか。どう人として成長できるか。どうコミュニティに関与するか、ファンと接してゆくか…。日々、挑戦するしかない」

――チャンスの訪れそうな瞬間にミスがあった。それは個々のテクニックか、コンビネーションか。

ティアティア

「チャンスはあったと思います。相手が与えてくれたチャンスもあった。ただボールを保持し切れなかった。相手に圧力をかけ切れなかった部分もあった。コンビネーションの足りない部分、戦術、テクニックを上げなくてはいけないところもあるかとは思います」

立川

「1人ひとりのスキル、コンビネーションもそうなんですけど、そうなってしまった状況(ミスが生じたシーン)に対してなるべくチームでサポートしたい。個人を責めるより、チームとして反省を生かして成長に繋げたい気持ちがある。もちろん、スキル、コンビネーションは、日々、成長していきたいと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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