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ワールドカップ日本大会へ。日本代表・堀江翔太、役割を身体で示した決勝トライ。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
跳ねる動きで攻撃を先導。(写真:アフロスポーツ)

ラグビー日本代表は5月6日、東京・秩父宮ラグビー場で香港代表とのアジア・ラグビーチャンピオンシップ(ARC)第3戦目に挑む。29―17のスコアで白星を得てに王手をかけたが、格下とされる香港代表に2度リードを許すなど苦しんだ。

今回の日本代表は若手中心の編成。主力候補は日本のサンウルブズに入って国際リーグのスーパーラグビーに参戦中というこの日、昨秋のツアーで共同キャプテンだった堀江翔太が実戦復帰していた。コンディション回復のため3月から休養を得ていた31歳は、フッカーとしてハーフタイム明けから登場した。

それは17-17の同点で迎えた後半28分、敵陣中盤の自軍スクラムからの攻撃だった。

左へ展開されたボールを受け取った尾崎晟也が、タッチライン際を快走。鋭いカットインを交えて接点を形成する。

ここからは右へ、右へとユニットを形成し続け、インゴールを割る場面。特にフッカーを含めたタイトファイブ(前列5人)がハードワークし、相手に身体をぶつけるところである。2つめのフェースで堀江が球を受け、直進。出されたボールをほかの選手が持ち込んだところ、再度、堀江がパスを待つ場所にいた。

スクラムハーフの流大の真後ろから、「横に、おるよ」と声掛け。流は冷静に空いたスペースへパスアウトし、堀江がとどめを刺すに至った。直後のゴールキックも決まり、スコアは24-17。

試合後、堀江が取材エリアに登場し、例の場面を語った。いわば、チームのすべきことを体現したつもりだったようだ。

以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――あのトライシーン、何度もボールをもらいにいった運動量が光りました。

「あれくらいの運動量を、ベーシックに。他のフォワードも、もっともっと動いて欲しいかな、と思います」

――それを身体で示した、という意味ですね。

「あそこはチャンス。運動量でどれだけ勝るかというところ。変に迷うこともない部分です。わかっているはずですが、まだ、ついつい動かない選手もいるのでは…。練習も(試合の1週間前からしか)出ていないので、何でかはわからないですが」

――総じて、苦しい試合内容だったが。

「まぁまぁ、こうなるんじゃないですか。経験豊富な選手が多かったわけではないですし。…思った通りの感じではあったかな、と思います」

――前半をベンチで観ていて。

「出てみて、どんな感じかなという感じでした。実際にグラウンドに入ってみたら、僕自身は大丈夫ではあった。ちゃんと基本的なプレーをして、チームの目指すラグビーをどれだけやれるか…となれば、勝てるかな、と。(それまでは)若い選手がバラバラにやっている部分はあったので」

――どんな修正を施したか。

「いや、もう、自分のプレーだけに専念しました。それが一番、流れを変えられるだろうし、若手もやりやすいだろうな、と」

日本代表は6月にはベストメンバーを編成し、ルーマニア代表やアイルランド代表などと戦う。それに先立って5月10日、2019年のワールドカップ日本大会の予選プールの組み合わせが決まる。

これら未来の事柄についても、おおらかに応じた。

――ワールドカップで対戦したい国について(この共同取材の前のテレビ取材では、イングランド代表やニュージーランド代表の名前を挙げた)。

「ニュージーランドは一番、強くて、イングランドはエディーさん(・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ)がいる。メディア的に…という感じです(一同、笑)。あまり、どことやりたいというのはないんですが、その方が書きやすいですよね? あそこがええな、あそこがよかったな、と言う前に、決まった相手に対してどんな準備をするかが大事。『あそこがよかった』とか言うと、そういう準備ができなくなると思うので」

――対戦相手が決まれば…。

「ヨーロッパと南半球ではスタイルが違いますし、(準備の内容は)変わっていくと思いますよ。選手もミーティングなどで、相手をイメージしていけると思うんで」

――6月にぶつかるアイルランド代表にはどんなイメージか。

「まだ詳しくは見ていないですけど、ヨーロッパのなかではボールを動かしてくる」

――対戦に向け、現状をどう見るか。

「いま(指揮官は)若い奴がどれくらいいけるかを見ていると思う。あとはサンウルブズ(スーパーラグビーの日本チーム。堀江も参画)で修業している選手も帰ってきて、メンバー、チームの感じも変わってくる。(この日の内容は)そこまで気にすることではないかな、と思います」

堀江は以前、「そこに楽しい試合があるなら、やりたい」。相手が誰であれ、動いて、身体を張るのみだ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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