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サンウルブズ初のパブリックビューイング、どうでしたか? 次回は連休中に「2本立て」【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
あいにくの空模様だったが、意義はあった。

国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズは、グッズの収入やチケットの買い取り金額などで生計を立てるプロクラブ。1人でも多くのファンを増やそうというアクションを重ねるなか、この春、新しい試みに着手した。ホームの東京・秩父宮ラグビー場でのパブリックビューイングだ。

実施されたのは4月22日。ニュージーランド遠征中のチームが、同地インバーカーギルでおこなった第9節をライブ中継した。CSスポーツチャンネルの「J SPORTS」が放映する画像を、ゴール裏の電光掲示板に映し出す。

元日本代表の今泉清氏が場内の司会を担当。サンウルブズのメンバーで海外遠征に参加していない金正奎、松橋周平、江見翔太の3選手と掛け合いを演じる。

最初は「J SPORTS」の中継をそのまま流していたが、場内で音響調整をしていた元同局社員のスタッフが機転を利かせる。都内のスタジオで収録している日本の実況音声を切り、スタンドには現地音声のみが聞こえるようにした。来場者に、目の前の選手の言葉をしっかりと聞いてもらうためだ。

サンウルブズがテンポ良い攻めでスコアを取った時は、金が「ハイランダーズはラックに人をかけてこない(密集周辺に人数を割かない)」とその攻撃の背景を分析。後半開始早々にギアを入れてきたハイランダーズに対しては、「サンウルブズのディフェンスを前に出させないようテンポアップしてきた」と松橋。場内に集まった1300人のファンも、時間を追うごとに拍手や歓声のボリュームを上げてゆく。前半途中から雨が降ったが、ファンに屋根のある席への移動を促すなど、スタッフの臨機応変さも見られた。

会場整理などでは7月に「みなとラグビー祭り」を開催する港区の協力を仰ぎ、「今回はグッズやウエアをつけたファンだけではなく、港区さんに誘われてきた子どもたちもいて、客層がいつもと違いました」とチーム関係者は言う。場内に集まったファンは1300人と決して多くはなく(秩父宮は約20000人収容可)、 試合は15-40と一昨季王者のハイランダーズに惜敗したが、周知活動としての役割は果たされたか。チームはかねて近隣の清掃活動に参加するなど、地域におけるサンウルブズの認知度アップに力を注いでいる。

課題は、サンウルブズサイドでの対外的な周知活動か。参加選手へのインタビューを予定しなかったことなどもあってか、国内に滞在していた報道関係者の出席者はわずか1名。従来のラグビー界にはないトライアンドエラーを通してクラブをプロモートする立場としては、この結果は寂しかったろう。

次回はゴールデンウィークの4月29日、やはり秩父宮で第10節を流す。その直前までは若手中心の日本代表が韓国代表と試合をしており、楕円球ファンにとっては「注目映画作品の2本立て」といった趣きがあるはずだ。一般紙やスポーツ紙のラグビー担当記者は代表の試合後の取材につきっきりになるだろうが、場内の歓声なら耳にするだろう。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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