日本代表&サンウルブズ・田村優、指示出しで目指す「普段」って何?【ラグビー旬な一問一答】
ラグビー日本代表の田村優が出す指示に、注目が集まっている。
3月、代表チームを底上げするためのナショナルデベロップメントスコッド(NDS)の第1~3回キャンプがおこなわれた。
国際リーグのスーパーラグビーに加わるサンウルブズの選手、大学生などの若手選手が一堂に会す。ジャパンのジェイミー・ジョセフヘッドコーチが陣頭指揮を執り、ナショナルチームに必要な資質をインストールする。
ここでは、サンウルブズから参加していた田村への声が集まった。パスやキックの起点となるスクラムハーフ、スタンドオフの選手が、「優さんの指示があってやりやすい」「指示の出し方が勉強になる」と口を揃える。
例えば、松田力也の場合。帝京大学の副将で、この春からパナソニックへ進むスタンドオフの松田は、代表デビューを飾った昨年6月以来約半年ぶりに田村優とともに練習をし、こんな感想を語った。
「動きながら的確な指示をされていて、その指示が速い。一緒にやっている選手が迷わないと思います」
スタンドオフはラン、パス、キックで攻撃をコントロールする司令塔と言われている。ただ、それらスキルと同時に、そのスキルを首尾よく運用するための無形の力も求められる。
無形の力とは、空いたスペースを見抜く眼力や適正なプレー選択をする判断力、さらには、味方の位置取りや攻めの方向性を周りに伝える「指示」のことである。
いったい田村は、どんな声掛けを意識しているのだろうか。NDSのキャンプ中、やや端的な言葉に正直な思いをまぶした。取材時はNECからキヤノンへの移籍を公式に発表する前。新天地に挑むスタンスも明かした。
以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
――練習中の指示、わかりやすいと評判です。
「あ、本当すか!? …まぁ、自分が楽をしたいので、人を動かします」
――その「人を動かす」要諦は。
「とりあえずコミュニケーションは取ります。具体的に名前を言って、一方通行にならないように。普通に、いつも喋るようなテンポで指示を出す」
スタンドからの声や相手の激しいコンタクトが折り重なるグラウンドで、どんな話し方なら伝わるのか。それを考えた結果が、選手名やコールなどを「具体的」に伝えることや「いつも喋るようなテンポ(ボリュームではなく、テンポ)」で声を出すことなのだろう。
そう言えば、日本代表のトライゲッターである山田章仁も、あえてささやくような口調でパスを呼び込む時があるという。確かに、大声ばかりが飛び交うグラウンドでは、そちらの方がかえって耳に残るかもしれない。
田村は続ける。
――キヤノンへの移籍が濃厚と言われていますが…。
「噂は、好きに回してもらっていい。ただ、僕はどこでプレーしてもスタンスは変わらない。いまは色んなチームに声をかけてもらっています。もちろん、キヤノンさんからもオファーはあります」
――NECの仲間と離れることへの寂しさもあるのでは。
「もちろん、(古巣の同僚のことは)ずっと好きです。ただ、僕だけでどうにかできないところもある…」
サンウルブズは今季のスーパーラグビーで現在、開幕5連敗中。4月8日には、東京の秩父宮ラグビー場での第7節(対ブルズ)を控えている。復帰時期を問われた田村は「気が向いたら…」と明言を避けるが、その時が待たれる。