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堀江ら36名、2月から。サンウルブズ2017年スコッド発表会見ほぼ全文。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
スタジアムを埋められるか。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズが12月12日、発足2シーズン目となる2017年度のスコッド36名を発表した。

フィロ・ティアティアヘッドコーチ、選手との契約や諸般の準備を進める上野裕一・業務執行理事(CEO)、今季から着任の渡瀬裕司・CEO代理が都内で会見。その後は、スコッドのなかから堀江翔太、大野均、田村優、三村勇飛丸、内田啓介、エドワード・カークがトークセッションに参加。意気込みを語った。

メンバーは前ハイランダーズの田中史朗、前レベルズの松島幸太朗ら、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが欧州遠征をした日本代表メンバーから19名(怪我で遠征を辞退した矢富勇毅を含む)がリストアップされた。2季連続でサンウルブズと契約したのは、ジョセフ率いる日本代表で共同キャプテンを担った立川理道ら18名。スーパーラグビー初参戦の選手は、東京ガスのヘイデン・クリップスら15名である。

日本代表の山田章仁ら、選出が期待されながらスコッドに名前のなかった選手のなかには、諸条件の交渉を重ねている選手、他の海外クラブからのオファーとの兼ね合いで契約を即決しかねる選手など、さまざまいる。

チームは昨季の通算戦績を1勝13敗1分けとした。選手個々がタフさを醸成し、ファンは狼の鳴きまねをする応援方法を確立。一方、遠征時の食事が不十分だったことなど運営面で課題を残した。

サンウルブズは、2019年のワールドカップ日本大会に向けた代表強化を命題とする。今季も昨季と同様、4つあるカンファレンスのうち南アフリカカンファレンス1に参戦。強豪の揃うニュージーランドカンファレンスのチームとも試合をする予定だ。

2月25日には東京・秩父宮で開幕節に挑む。相手は前年度王者でニュージーランドカンファレンスのハリケーンズ。参加選手の多くが国内シーズンを終えて事前合宿を始められるのは、2月5日から。11日まで福岡・宗像市で最初のキャンプがあり、12~19日には壮行試合を含めた福岡・北九州市での第2次合宿が開かれる。

以下、会見中の一問一答(編集箇所あり)。

上野

「今年2月にサンウルブズが結成されて以来、多くの課題を抱えながら2016年度シーズンを終えることができました。約2か月後には、スーパーラグビーの2シーズン目に参戦します。

来たるシーズンに向けては、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチの掲げる『ONE TEAM』の理念に基づき、ジャパンとの連携をさらに強固にしたい。サンウルブズはジャパンの飛躍はもとより、ラグビー全体の普及発展に繋がる戦いをしたいと思っております。

最初は1勝1分け13敗、評価は様々にあろうかと思いますが、私はシーズンを戦った選手やスタッフにはきわめて高い評価をしています。我々運営スタッフの準備不足や能力不足があったにも関わらず、よく戦ってくれた。精神的、肉体的にタフになってくれたと考えています。このタフさこそが、スーパーラグビーの真骨頂です。

2015年のワールドカップイングランド大会で世界を驚かせたジャパンの背景にも、エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチという棋界の鬼軍曹の半年間にわたるタフな訓練と指導がありました。

いまわれわれは、スーパーラグビーという極限の実戦、半年間のタフなシーズンに再び臨みます。高度な実戦レベルでの強化で、2019年に向けて本当の意味でのラインブレイクをし続ける。もちろん次から次へ迫りくる難題、課題、難敵をブレイクし続けるのは選手だけでなく、スタッフだけでなく、日本ラグビー界全体にとっての問題です。まさにその姿を見届けていただきたく、お願いを申し上げます。

我々サンウルブズはファンの皆様に喜んでもらうための取り組みも新たに実践します。ファンクラブの創設、ジャージィの刷新、皆様に喜んでいただく最大限のサービスやエンターテイメントを実施します。我々の成長を厳しく、温かく見守っていただきたいと思っています」

渡瀬

「選手選考に関して私からお話しします。日本代表の連携が求められるなか、ティアティア、日本代表のジョセフヘッドコーチ、薫田真広強化責任者と密にミーティングをおこなっています。前回のジャパンのスコッドに選ばれた選手、選考に入っていたものの辞退した選手、それに加え、2019年に向けた可能性のある外国の選手、また2016年度に活躍してくれた選手を観ながら選出しました。

40名を超える選手から合意をもらっています。ただ、そのなかですべての条件で合意をもらっているわけではない。ここにある36選手以外とも細部の交渉をおこなっていって、適宜、そういった選手(追加招集選手)を発表できたらと思っています。

参加2年目のチーム。他の強豪よりも歴史が浅いチームですが、チャレンジをすることが第一。選手を発表させていただきます(以下、下記のスコッドを読み上げる)」

<左プロップ>

稲垣啓太(パナソニック ワイルドナイツ)●

三上正貴(東芝ブレイブルーパス)●〇

山本幸輝(ヤマハ発動機ジュビロ)●〇

<フッカー>

木津武士(神戸製鋼コベルコスティーラーズ)●〇

日野剛志(ヤマハ発動機ジュビロ)〇★

堀江翔太(パナソニック ワイルドナイツ)●〇

<右プロップ>

浅原拓真(東芝ブレイブルーパス) ●

伊藤平一郎(ヤマハ発動機ジュビロ)〇★

具智元(拓殖大学)●

<ロック>

大野均(東芝ブレイブルーパス)●

梶川喬介(東芝ブレイブルーパス)〇★

真壁伸弥(サントリーサンゴリアス)●

リアキ・モリ('16サンウルブズ)●

<フランカー>

ヴィリー・ブリッツ(NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス)

エドワード・カーク('16サンウルブズ)●

ヘル ウヴェ(ヤマハ発動機ジュビロ)〇★

三村勇飛丸(ヤマハ発動機ジュビロ)〇★

<ナンバーエイト>

徳永祥尭(東芝ブレイブルーパス)★

松橋周平(リコーブラックラムズ)〇★

マルジーン・イラウア(東芝ブレイブルーパス)〇★

<スクラムハーフ>

内田啓介(パナソニック ワイルドナイツ)〇★

小川高廣(東芝ブレイブルーパス)〇★

田中史朗(パナソニック ワイルドナイツ)〇

茂野海人(NECグリーンロケッツ)●

矢富勇毅(ヤマハ発動機ジュビロ)●〇

<スタンドオフ>

田村煕(東芝ブレイブルーパス)★

田村優(NECグリーンロケッツ)●〇

ヘイデン・クリップス(東京ガス) ★

<インサイドセンター>

立川理道(クボタスピアーズ)●〇

ティモシー・ラファエレ(コカ・コーラレッドスパークス)〇★

<アウトサイドセンター>

デレック・カーペンター(サントリーサンゴリアス)●

<ウイング>

後藤輝也(NECグリーンロケッツ)★

福岡堅樹(パナソニック ワイルドナイツ)●〇★

<フルバック>

笹倉康誉(パナソニック ワイルドナイツ)●〇

松島幸太朗(サントリーサンゴリアス)〇

リアン・フィルヨーン(NTTドコモレッドハリケーンズ)●

※備考

●=前年度サンウルブズスコッド

〇=日本代表2016年秋遠征メンバー

★=スーパーラグビー初参戦

ティアティアヘッドコーチ

「2016年のサンウルブズの選手を含め、スーパーラグビーの経験者が21名います。昨シーズン、経験者が(試合出場経験のない選手を入れて)6名のみだった最初のシーズンと比べると、そこはポジティブな材料です。また楽しみなのは、17名の新しい選手が加わったこと。彼らはどこかでジャージィをまとう時が来ると思います。

海外経験のある選手もいます。一方で、トップリーグで活躍する若手選手もいます。

ゆくゆくは日本代表に手を挙げる選手がいます。それは、現時点で日本代表資格はなくとも、2019年にその資格がある選手のことです。

その一例はブリッツ選手。スーパーラグビー23キャップを持っています。フィルヨーン選手は64キャップ。そしてカーク選手は54キャップ。リアキ・モリ選手は38キャップ。ヘイデン・クリップス選手はスーパーラグビー経験こそないものの、ウェリントン州代表でのキャップ数を数多く持っています。新しい選手とともにスタートを迎えることは楽しみだと思います。

他にも2人、重要な選手が入ってくれました。田中史朗選手。ハイランダーズでスーパーラグビー経験を多く積んでいます。松島幸太朗選手はエキサイティング。我々と一緒にプレーする姿を観るのが、楽しみでなりません。若手選手も、どんどんサンウルブズで活躍する予定です」

<代表質問>

――具体的な目標。

ティアティア 

「スケジュールは日本選手権が終わるのは1月末。プレーヤーを十分な状態にするのがひとつの目標です」

――鍵を握るのは誰ですか。

ティアティア 

「新しい選手になると思います。大枠だと思いますが、新しい顔ぶれと経験のある選手と比較するのはアンフェアな状態。新しい選手を含め、1人ひとりを理解し、知ってゆくのが楽しみです。今日、36名の選手が発表されましたが、全ての選手にハリケーンズ戦に手を挙げる資格がある。誰が選ばれるか、楽しみにしている部分です」

<各社質問>

――海外のチームは、この12月にプレシーズンキャンプをおこなっています。他方でサンウルブズは、国内リーグのスケジュールとの兼ね合いから準備期間が限られます。今季も前年度と同様、短時間の準備で開幕節に挑みます。この件を来季以降、どうしてゆくか。今季はこの状態でどうチーム力を最大化させるか。そのあたりをお話しください。

渡瀬 

「その辺につきましては、日本のシーズンストラクチャーの問題になるかと思います。スーパーラグビーだけで観てどう考えるか、というなかで、『2日間だけでも短期キャンプはできないのか…』という話をされることもあります。ただ、そうはいっても、トップリーグ(国内)の期間中でもあるので、難しいとは思っています。

何か具体的にどうこうというものはないのですが、限られた時間で効率的にやる。そのうえで、これからトップリーグのチームとどう連携するかが鍵になるかと思います」

――数値目標はありますか。

ティアティア

「よく指導者が受ける興味深い質問ですが、私は何勝…というものを決めるコーチではない。一番大事なのは、チームのなかにいる人間をいかに成長させるかです。

正直に話せば、我々にはスーパーラグビーの経験が実質的に7か月しかない。他のチームは22年間の歴史を持っています。

その一方で楽しみにしているのが、スローガンの『RISE AS ONE』を掲げながら、1つひとつの戦いを、成長する絶好の機会としてアプローチする。毎日、あらゆるチャンスを活かして、成長し続けていくことが大事。私たちの周りには学ぶことがたくさんあると思います。

2年目のシーズン。開幕前は昨年と同じような状況です。前年度は2週間ほどの準備でライオンズ戦に。今年の準備期間は少し長いですが、相手は王者です。このチャレンジがどういうものかは、理解しているつもり。このチャレンジをありがたいものだと受け止め、挑んでいく。どんなプレーを作り上げたいかを積み上げていく。お約束できるのは、毎週ベストを尽くすということです」

――選手の疲労、出場時間が問題になっています。スコッドにギリギリで入れなかった選手の扱いはどうなりますか。スコッドと一緒に練習するなどの措置はありますか。

上野 

「これは我々にとっての大きなチャレンジ。シーズンストラクチャーを変えることを含め、どうしたら選手が最大限のパフォーマンスを発揮し、より良い成績を出せるのか…という視点で仕組みを変えていくチャレンジです。それはスタッフに求めるところではなく、日本ラグビー全体で考える問題だと思います。いつも質問されることですが、立ち止まっているかと言われればそうではなくて、1歩1歩進んでいる。その状況だと、ご理解いただければと思います」

渡瀬 

「長い遠征がある。全部の選手が全試合に出るのは不可能だと思っています。必然的に選手のコンディションを留意したうえで、ヘッドコーチがコントロールをする…という議論を進めています。昨季のシーズンがいい経験となって、準備できると思います。

また、ご質問にもありましたように、若い選手をなるべく多く呼んでいきたい。けが人が出た時のことを考えると、(スコッド外の選手を含め)ある程度の人数でやっていくのが大事だと、現場とも話している。そうできるように進めていきたい」

<以下、選手セッションでの談話>

カーク

「2年目、またプレーできることを楽しみにしています。私にとってのサンウルブズは、自分の好きなことをするチャンスをくれたチーム。他の選手にとってもアクティブ、スピーディー。ファンの人と戦えるチームです。これまでニュージーランド、オーストラリアなどの会場で戦ってきましたが、秩父宮はいままでと全く違う会場。狼の鳴き声を送って下さって、選手たちの名前も叫んでいただいた。これには勇気づけられた。遠征からホームに帰ってくると、いいなと思えた。ベストのスタジアムだと言えます」

内田

「昨季はファンとして観させてもらっていて、次の機会は…という気持ちがありました。素晴らしい仲間とともに競争しながら、番号(レギュラー)を勝ち取りたい。すべてのチームでいい選手が揃っているので、どのチームとの戦いも楽しみです」

田村

「凄いきつい、レベルが高いリーグ。自分たちのスタイルを持って、自分たちのスタイルを信じて戦うだけです。疲れはたまるので、しっかりリカバリーをして、どれだけ100パーセントに近い状態で試合に臨めるか…ですね。あと、(遠征には)日本食を持って行かないと」

堀江 

「昨季はタフでしたよ、結果が全然でなくて、仲間に助けてもらいながら毎試合、毎試合やった感じです。他からのオファー、色々ありました。どこかは言えないですけど。(サンウルブズ入りは)2019年にいい結果を残したい、それと、去年のキャプテンとしての経験を伝えられたらいいか、と思って決めました」

三村

「昨季は(国内の)全試合で会場に足を運んで、ファンの1人として応援していました。

どのチームにも自分よりレベルの高い相手が揃っている。すべてがチャレンジ。個人的にはサム・ケイン(チーフス、ニュージーランド代表)とトイメンになりたい(対戦したい)」

大野

「また呼んでもらえて光栄。嬉しく思います。どの選手も力がある。セットプレーが安定しないことには意図するゲーム運びができない。それは昨季、痛いほどわかりました。ロックとして、そこを安定させるのが第一使命だと思っています。(38歳という)年齢のことは色んな方から言われますが、考えないようにして、1選手として競いたいと思っている。(この日発表された新しいジャージィについて)カッコよくて。いいと思います。カーキーのお腹が出ているのは気になりますが」

カーク

「オフなので…。ただ、いまはオーストラリアでトレーニングをしています。皆とプレーできるのが楽しみです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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