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サンウルブズ稲垣啓太、大量失点の事情と解決のヒントを語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
6月のテストマッチ期間にはスコットランド代表と激突。(写真:アフロスポーツ)

国際リーグであるスーパーラグビーに日本から初参戦しているサンウルブズは、7月2日、東京・秩父宮ラグビー場での第15節で一昨季王者のワラターズとぶつかり、12―57で大敗した。チームは2月からの13戦で、1勝11敗1引き分け。この日のうちに南アフリカへ飛び、残りの2試合に備える。

「テストマッチ(国際間の真剣勝負)の3連戦はキツい。ここまで試合が続いたら、正直、疲れます」

試合前にこう語っていたのは、稲垣啓太。6月は日本代表に加わり、3つのテストマッチに先発していた。

身長186センチ、体重116キロの26歳。スクラムを最前列で組む左プロップにいながら突進力や運動量、タックルスキルでも存在感を示す。昨秋のワールドカップイングランド大会でもジャパンの一員として歴史的な3勝を挙げ、今季はサンウルブズでも守備リーダーとして主戦を張る。

テストマッチ期間明けのこの日は、後半6分から出場。試合後のミックスゾーンでは、グラウンド入り前後のターニングポイントを語った。一気に点差を離された時間帯に、何が起こっていたのか。数字には表れない勝負の駆け引きへの分析は、観戦者の視野を広げる。

以下、試合後の稲垣の一問一答(編集箇所あり。全て当方質問)。

――出場した時間の前後、サンウルブズは一気に失点していました。

「後半に入ってから、相手がフォワード(密集近辺の選手)同士でパスを交換して、バックスの裏通し(おとり役の背後へ長いパスを放つ)を加えてきた。それは僕らが(事前に)イメージしていたパスと、少し違ったんです。キャリア(パスの出し手)がいて、その向こう側に(受け手が)2人が立っている。キャリアは、1人(手前側の受け手)を飛ばして、その向こう側にパスを出していた。そうして、こちら側のディフェンスのフォワードとバックスのリンク(連携)が切れたところを狙って来ていた(フォワードとバックスでは守備範囲や瞬発力に違いがある場合が多く、隣同士で並ぶ間を狙われることもある)。それに対して、こちらが最後まで修正できなかったですね」

――その意味では、相手は分析に基づく用意したプレーを遂行していた、と。

「はい。僕らもそれを想定していたんですけど、あそこまでパスが違うとは思っていなかったです」

――前半は、相手も暑さに苦しんでいた(この日の東京の最高気温35度だった)。

「だからこそ、前半のトライ(計26失点)はもったいなかったですね。全部、イレギュラーなミスから始まったものです(相手ボールのセットプレーからのトライも、その背景にはサンウルブズの攻撃中のミスがあった)」

――体調はいかがですか。

「今週は少し休めて、きょうもリザーブということでした。(笑いながら)まさか、あんなに早く出るとは思わなかったですね。何なら、きょうは出ないみたいな感じだったので(マーク・ハメットヘッドコーチは「元気なプロップを入れたかった」と説明)。ただ、今日のうちに南アフリカへ行くんですが、あと2戦、切り替えていい準備をしていきたい。怪我人がどうこうという問題もありますけど(離脱者が続出)、いる人間がどう行動するかです。きょうもハルさんが抜けた時(立川理道ゲームキャプテンが退いた後)、誰が舵を取るかといったところでうまく機能しなかったところがある。それは、これから選手同士で考えていきたいですね」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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