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サンウルブズ稲垣啓太、復帰前に感じた「無茶」の必要性とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
堀江翔太キャプテンからの信頼も厚い。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

スーパーラグビーに日本から初参戦するサンウルブズは、5月21日、オーストラリアはブリスベンのサンコープスタジアムでレッズと第13節をおこなう。リザーブには入った稲垣啓太は、現地時間4月2日のキングスとの第6節(ポートエリザベスのネルソン・マンデラ・ベイ・スタジアムで28-33と敗戦)で右足を故障して以来の復帰となる。

サンウルブズはここまで1勝8敗1分。キングス戦を最後に一時離脱した稲垣は、国内でリハビリに励み、「ベストじゃない」としながらも復帰を決意。5月7日のフォースとの第11節を控えた週から、チームに合流していた。

国内では日本最高峰トップリーグで3連覇中のパナソニックに所属する稲垣は、身長183センチ、体重115キロの25歳。昨秋のワールドカップイングランド大会で歴史的な3勝を挙げた日本代表のメンバーでもある。

南アフリカ代表戦(34-32で大会24年ぶりの勝利)で右手中指を折ったまま、以後の全試合に先発していた。強烈なタックルと突進力、ワンプレーを終えた後に次の動作へ移る機動力が買われている。「ラグビーは自分の可能性を広げるためにやっている」との思いを貫く。国際間の真剣勝負にあたるテストマッチには、ここまで10試合、出場している。

19日、ゴールドコーストでの練習を終えると単独取材に応じた。語ったのは、普段は遵守するチームの規律をあえて打破する必要性についてだった。

例えば、連続攻撃を部是としてきたサントリーにあって、昨季まで在籍した南アフリカ代表スクラムハーフのフーリー・デュプレアは、チーム戦術を把握したうえでそれとは異なるハイパントなどのプレーを選択。チームの関係者から「あえて、ルールを破ってくれる存在」と重宝されていた。

以下、稲垣の一問一答(編集箇所あり。質問はすべて当方)

――レッズ戦でいよいよ復帰です。

「リザーブスタートです。久しぶりですね。途中から入る選手には、インパクトが必要。僕のプレーがそうなのかは…な感じがしますけど、まぁまぁ、そこは(首脳陣に従う)。オーストラリアのチームとプレーした時は、セットプレーで対処できてもそれ以外でやられている。だから、このツアー(レッズ戦後はキャンベラでブランビーズと対戦)は非常に大事な意味を持つと思います」

――状態は。

「ベストではないですよ、そりゃあ。まだ変な感じもしますけど。ただ、確実に治してから…というのは難しい話です。やりながら(故障と)上手く付き合っていくのが一番いい方法、という感じですかね」

――見切り発車に近い復帰。選手生命を考えると、怖い決断ではなかったですか。

「逆に、そこら辺の線はしっかりと引きましたよ。『ここ』の辺のレベルに行けば、徐々に(試合をしながら状態を)戻していける…。ただ、『ここ』まで行っていないのなら絶対に出ない…と。トレーナーさんにもそのことを伝えて、お互いに理解をしながら動いていました。そこについては、問題ないんじゃないでしょうか」

――スーパーラグビーでプレーするには、問題ない。

「そうですね。まぁ…試合をしないと意味がないので。ある程度のリスクは承知で、やる。こういう(身体接触の多い)スポーツですから。

僕、結構、突き詰めていく(冷静に物事を考える)タイプですけど、もう、こういう風にリスクも背負って行かないと先がなかなか見えてこないな、と」

――と、いうのは。

「怪我をしている間に自分のプレーを見返していると…。冷静沈着にやっていて、言われたことをしっかりこなしていた。これをするのは、当たり前のことなのですが。

ただ、自分から…例えば…何と言ったらいいか…無茶をする時も必要かな、と思いましたね。

後半一番しんどい時間帯に逆転される(または突き放される)という試合が多いわけじゃないですか。この前も同点にされましたし(5月14日、シンガポールでのストーマーズ戦はノーサイド直前に追いつかれて17―17と引き分け)。ああいう、皆が疲れているシーンでいままで通り冷静にプレーしていても…ということです。疲れて皆が走れない時に、組織を、規律を…と言われても、無理だったりもする。そんな時、(極端な飛び出しでタックルを仕掛けるなど)1人で判断して、それが結果として成功したら『ようやった』。失敗したら、その責任をかぶる。そういうことを、避けていましたね、自分は。いざというときの判断は、これから必要かと思いました」

――万全ではないなか試合に出るという体調面のギャンブルに加え、グラウンド内であえて規律を破るというギャンブルも必要、と。

「そうですね。普段はそんなこと、絶対にしないですけどね」

――80分中最低78分間は、チームの規律とシステムを守る。そうして試合を運ぶ。

「結局は、(いざという時の)状況判断ができるかできないかです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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