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日本代表・中竹竜二ヘッドコーチ代行、2016年度初陣。「嬉しい」こと明かす。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
提唱するのは「フォローワーシップ」。リーダーを支える人の知性や自主性を求める。(写真:アフロスポーツ)

ラグビー日本代表が4月30日、今年度最初の試合をする。神奈川・ニッパツ三ッ沢球技場で、韓国代表とのアジアラグビーチャンピオンシップ初戦をおこなう。29日、試合会場で最終調整。中竹竜二ヘッドコーチ代行が意気込みを語った。

日本代表は昨秋、ワールドカップイングランド大会で歴史的な3勝を挙げた。しかし、競技人気の沸騰に貢献した当時のメンバーは、今度のジャパンには含まれていない。ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチは、現在務めるスーパーラグビー(世界最高クラスの国際リーグ)のハイランダーズとの契約上、秋以降の着任となっている。スコットランド代表戦などが組まれた6月は、スーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズのマーク・ハメットヘッドコーチが代行を務める。

中竹ヘッドコーチ代行率いる今回のチームは、24日に都内で集合。わずかな時間でテストマッチ(国際間の真剣勝負)に挑むことへは、かねて「遅すぎる。来年以降の課題」と指摘していた。しかし若手主体となった今度のメンバーの態度と積極性に触れ、いまでは前向きな談話のみを残す。

早稲田大学での監督経験もある指揮官は、昨季から20歳以下(U20)日本代表のヘッドコーチを務める。2012年度も同職に就いていた。

以下、共同取材時の一問一答の一部(編集済み)。

――今回の日本代表について。

「僕はシンプルなコンセプトしか言っていなくて、具体的なところは選手たちがアレンジを加えるように…と。そういう提案が生まれるようなチーム作りをしています。リーダーは7人にしました。内田啓介(キャプテン、スクラムハーフ)、森太志(フッカー)、金正奎(フランカー)、安藤泰洋(フランカー)、山中亮平(スタンドオフ)、中村亮土(センター)です。リーダーとは、ミーティングを重ねています」

――「コンセプト」は「アクションラグビー」。

「残念ながら(練習試合などの)試す場がなかった。アクシデントは起こると思いますが、それを乗り越えられるくらい、自分たちのやることを仕掛けていきたい。できることを、やる。韓国代表より早く立ち上がって、動く。それがあれば」

――「アクシデント」の乗り越え方について。

「チームを結成して2日目に、きつい練習をした。パニックの起る状態をわざと作った。『こういうことは絶対に起こる。その場合、どうしたらいいか』。そのパターンを共有しました。きょうのミーティングでも確認しました」

――(当方質問)「アクシデント」で考えられるものに、不安定なレフリングへの選手の苛立ちがあるかもしれません。

「そのあたりの話は特にしていませんけど、結局、やるのは自分たち。敵もレフリーもコントロールできないので、まず自分たちが変わろうとしています」

――ちなみに、今回のコンセプトは6月以降のチームとも一貫するのですか。

「してないですね。共有するのは、来週ですかね(サンウルブズと合同練習を予定)。けど、アクションは、どんなラグビーをするうえでも矛盾しないと思います。ハマーやジェイミーが『それは止めてくれ』と言ったら検討はしますけど」

――(当方質問)準備期間が短いなかでは、セットプレーの連携がよりタフになります。

「準備期間が短いのは言い訳にならない。1年ぐらいやっているんじゃないかというセットプレーをお見せしたいです。まだ敵とやっていないのですが、練習を見る限りでは、この1週間でよくここまで仕上げたなと思っています」

――20歳以下日本代表について伺います。去年のチームでは、シェイプ(陣形)による攻撃など、ジャパンのヘッドコーチだったエディー・ジョーンズのプランをある程度は踏襲していました。今年は、どうですか。

「いまは上がないようなものなので…。基本的なシェイプはこれまでと一緒ですが、使い方は違います。エディーさんがやったラグビーと全く同じかというと、違うんじゃないですかね」

――今季の20歳以下日本代表といまの日本代表との関連性は。

「戦い方などのベースは一緒ですけど、20歳以下で本当にフォーカスしていることはここではできません。時間がないので。20歳以下では走り方、立ち上がり方というテクニカルなところをやっている。そのテクニカルについて日本代表でやっているのは、エッセンスの部分だけ。それを知っている(日本代表入りした)20歳以下のメンバーが見本を示すこともある。若い選手にとっては、いい勉強ですよね。年上にものを教えるなんて」

――(当方質問)かつて20歳以下日本代表で指導した選手が、今度のジャパンに入っています。成長、感じますか。

「もちろんです。頼もしくなった。前はミーティングで一切、喋れなくていじっていた選手がいた。いまはその選手が期待を裏切って喋っている。嬉しいですね」

――(当方質問)ちなみに、誰ですか。

「東恩納寛太(プロップ)です。あの時は、『伝えた戦術を彼が語れたら、全員が理解したことになる』という基準を持っていました。ただ、今年はミーティングで当ててもちゃんと喋る。昨日、本人とも『成長したね』と話しました。これは個人的なことですが、前にやった選手ともう1度やれるのは嬉しいです。準備期間が短いと言われますが、僕はそれを一切口に出すつもりはない。いま与えられた状況に感謝したいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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