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勝てないサンウルブズの堀江翔太の言う「勝ちたい」が本当である証拠を探してみた。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
ホームの東京・秩父宮ラグビー場での堀江。次にここでプレーするのは4月23日。(写真:アフロ)

南半球主体の国際リーグであるスーパーラグビーにあって、日本から初参戦するサンウルブズは試合のなかった第2節を挟んで開幕6連敗中だ。

初戦の約4週間前に初顔合わせをした新興チームにとって、かねて苦戦は予想されていた。それでもキャプテンの堀江翔太は「いい試合をするために来たわけじゃない。勝ちを目指す」と言い続ける。公の場ではそう言うほかないのだろうか。否。この人はいかなる立場でも、真に己の勝利と成功を信じる人だった。

大阪府立島本高校の頃から、器用さで鳴らした。地元の花園ラグビー場でおこなわれる全国高校ラグビー大会には、しかし、選手としてではなく会場の手伝いとして参加した。スコアボードの裏に回って数字の板を取り換えながら、ぽつりと呟いた。呟いてしまった。

「これなら、俺らでもイケるやろう」

帝京大学にはセレクションを経て入った。いまでこそ大学選手権7連覇中の常勝集団だが、当時は新興クラブのひとつだった。早稲田大学の五郎丸歩や慶應義塾大学の山田章仁など、同い年の伝統校のエースの影に隠れたところがあった。

ただ、その折から世界を意識していた。少なくとも、現状の居場所より高いステージを見据えていた。身長180センチでずんぐりした体躯で、「豪快な突破」が持ち味に映った。しかし、キャプテンを務めていた大学4年時、長野県菅平であった専門誌のインタビューで本人はこう笑った。

「自分のなかではよけて、よけて、前に出てるつもりなんですけど。周りからは全然そんな風に見えへんと言われますね」

前を見る。相手守備網の綻びを探す。そこを最も破りやすそうな立ち位置とボールのもらい方を想像する。パスを受け取れば、持ち前の技術で相手をかわす…。力比べで負けない相手に、あえて技術と戦術眼で勝負していたのだ。歴史的な3勝を挙げたワールドカップイングランド大会の日本代表の副キャプテンとしても、スーパーラグビーではレベルズに続き通算2つめのチームでプレーするいまも、その意識は貫かれていよう。

「トップリーグでもスーパーラグビーでも、地元のローカルのクラブでも、考え方は変わらない。どの試合でも必死になっている」

このフレーズは、国民を盛り上げたワールドカップが開幕する前に放たれていた。関西弁での軽い語り口は、熱い心の隠れ蓑だ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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