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パナソニック、堀江翔太。トップリーグプレーオフであえて苦言。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
好物は崎陽軒のシウマイ弁当。写真は昨年11月のもの。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

昨秋のラグビーワールドカップイングランド大会で日本代表の副キャプテンを務めた堀江翔太が、1月9日、日本ラグビー界への提言をした。

この日は日本最高峰トップリーグで2連覇中のパナソニックのキャプテンとして、リクシルカップの1回戦に先発。神奈川・ニッパツ三ッ沢球技場でキヤノンを46―6で下し、準決勝に進んだ。もっとも試合後の会見では、両チームのベンチもフラストレーションがたまっていたレフリングについての発言が続いた。チームメイトで日本代表の田中史朗も、同様の発言をしている。

現職3シーズン目の堀江は、身長180センチ、体重104キロのフッカーで29歳。2013年度からは2季連続で南半球最高峰スーパーラグビーのレベルズでプレーした。

深い競技理解のもと好ポジショニングから鋭利なラン、パス、キックを放つうえ、チームのロビー・ディーンズ監督に「ファンがわからない場所、グラウンド外でも素晴らしいリーダーシップを発揮している」と信頼されている。母校である帝京大学の岩出雅之監督をして、「ギターを弾きながら下級生を集めて歌ったり。誰に対しても平等。それでいてスーパープレーをする。だから慕われる」と言わしめる。

以下、当時の一問一答の一部。

――試合について一言。

「勝ってよかった。しっかり準備してきたので。特にフォワードが前に出ようと話していた。ワークレート高く、できたんじゃないかなと。次の試合に向けて、タイトファイブ(フッカーを含めたフォワードの前列5人)の動きはもっとよくならなきゃいけない。コージー(ヘイデン・パーカー=25歳のニュージーランド出身のスタンドオフ)が(元オーストラリア代表のべリック・バーンズの代役として)入って、しっかりやってくれたのもよかった。これまで試合に出られていない選手がどれだけ頑張るかが、この先2試合のキーになるとは思うんで。出ている選手だけではなく、チーム全体で試合に臨みたいですね。

それと…レフリングがあまりよくなかった。聞いたところによると、この日のレフリーはトップリーグであまり笛を吹いていないんですよね。勝つか負けるかのプレーオフでやるには、経験不足だったのかもしれないし、ミスジャッジが多かった。いいプレーがダメと言われると、それが国際試合にも響いてくる。選手は選手で、自分に矢印を向けています。2019年(ワールドカップ日本大会)に向けて、レフリーも、協会も、一緒に成長してほしいと思いますね。『見えなかった』なんて逃げずに。選手たちが成長しようとしているのに、どこかで足を止められると前に進めない。…そのレフリーに対しても、きょうはうまいこと対処できたと思います(笑みを浮かべる)」

――(当方質問)ロックのヒーナン ダニエル選手が前半34分にシンビン(10分間の一時退場処分)を受け、相手より1人少ない状態でプレー。特にハーフタイム直前は自陣ゴール前で守備を重ねていました。しかし、無失点。

「そこで僕らのポジショニングや戦術を変えることはなくて。僕はタイトファイブの人間なので、(残された3人のタイトファイブの選手に)『いつもより1パーセント多く動こう』という話はしました。全員が頑張って動いてディフェンスできました。アタックでも何となくゆっくり時間を使うように、グラウンド上で変化していけた(後半初頭は、接点周辺でじっくりラックを連取)。そこら辺はよかったかなと思います」

――17日、東京・秩父宮ラグビー場で準決勝をおこなう神戸製鋼について。

「前3人(プロップとフッカー)はほぼジャパンみたいなもの(左プロップの平島久照、フッカーの木津武士=故障欠場中、右プロップの山下裕史は前体制下の日本代表での経験が豊富)。息も揃っていると思う。試合の映像をしっかり見直して、癖を見抜いていきたい。ラインアウトでも大きな選手がいますし、個人個人がいい選手。こっちはチームとしていい準備をしたいと思います」

――(当方質問)冒頭の「出られていない選手が鍵」という言葉について。試合に出ていない選手とのコミュニケーションで意識していることは。

「1週おきに試合があるんですけど、その間の1個1個の練習がどうなのかを意識して見ている。(実戦練習では)出ていない選手が出ている選手の相手をしてくれている。その選手のやりやすさを意識してますね。試合に出ている選手同士でどうのこうのするのではなくて。ウチのチームには名レフリーのサダ(チームレフリー兼ITサポートの貞廣泰彰氏)がいるんですが、その名レフリーがついつい僕ら側(が優位となるよう)に吹くんじゃなしに、しっかり公平に吹いてもらったり。コンタクト練習でも向こうが気を遣わないようなやり方をしてもらうよう、その辺の量、質、強度についてスタッフと僕らで話し合ったり」

――(当方質問)要は、控え選手にもレギュラーにフルコンタクトでぶつかれるようにしている。

「そうですね。そこで怪我をしてしまうとしたら、その怪我は試合でも起こるものだと思っていて。しゃあないですよね、そうなったら。もちろん、当たり前のようにバチバチタックルへ入ったら、練習が試合になっちゃう。それはなしにする。どこで(強度を)上げるかを話し合いながらやってます。(フランカーの西原)忠佑選手あたりもその辺(ぶつかり合う加減)の話をしてくれるので、助かっていると思います。ウチはスタッフだけで1週間の流れを決めているわけではない。僕らの意見も聞いてくれる。だから1週間のなかで、うまいこと組み立てられています」

――(当方質問)レフリング。特にどのシーンで疑問を抱きましたか。

「ノット10メーター(反則を犯したチームが10メートル展退しないことによるペナルティー)をしていて明らかに帰る気がないアダム・トムソン選手(キヤノンのナンバーエイト)にカード(シンビン)が出ず(前半6分頃)、うちのヒーナン選手のちょっと微妙なタックルにはカード。相手のモールを崩していないのに、崩したと言われた。ラインアウト(タッチライン際からの空中戦)で向こうが間に入っていて(両チームが平行に並ぶ間には、1メートル以上のスペースが必要)、僕が投げないでいたらこっちに吹かれて(スローイング役の堀江が速く投げ入れないという反則を取られた)、スクラムで相手が膝ついていて、それを『観ていなかった』と。

基準(レフリーのルールの解釈方法)がバラバラに感じました。僕らも、最初(序盤)にある程度示された基準に合わしていくようにはするんですけど…。タックルをした選手がそのままボールを取った。OKだった。次にそれをしたら、ペナルティーと。試合ではレフリーが一番上の存在になるので、そこが成長しないと、僕らも成長しないです。例えば、タックルしてすぐに起き上がってプレーに参加するのはいいプレーですけど、それがレフリーにダメだと言われていたら、止めとこう、となる。インターナショナルレベル(での試合のプレー)に響いてくる。

(日本のラグビーは)企業スポーツですけど、アマチュアの選手も朝5時に起きてウェート(トレーニング)して、会社行って…と、プロ以上に厳しいスケジュールのなかでやっている。それで、負けるか、勝つかで、会社内での見られ方も変わってくる(堀江はプロ選手)。アマチュアも、結構、生活をかけてやっているんです。朝から晩まで。それを1つのミスジャッジで止められると、かわいそうかなと…(以後、全国高校ラグビー大会での不可解な判定についても発言)。で、きょう(終盤に)相手が16人でやっているところもあったでしょう(交代選手が退く前に、途中出場選手がグラウンド入り)。練習試合じゃないんで、止めて欲しいですよね。これが1点を争う試合やったら、ねぇ。

2019年に向け、選手は何とかしたい気持ちでやっている。お互い成長できたらと思います」

直後、会見に参加していたディーンズ監督もレフリングに関してコメントを求められ、こう発していた。

「私も一度、レフリーをしたことがあります。試合後、妻には『もう、2度とやるな』と言われました。自分では、いい仕事をしていたつもりなのですが。キャプテンが言ってくれた通り、ラグビー関係者が皆で次のワールドカップに向けて成長しなければいけない。開幕前、『トップリーグレベルのレフリーである皆が、トップリーグのチーム練習に参加する取り組みをしたらいい』と提案しました。なぜなら、そこでお互いの協力関係ができて、その成果として皆にいい試合を観せられると思ったからです。全てが悪かったわけではなく、きょうも、いい試合ができている。我々は我々でハードワークしていきます」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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