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今年の顔、五郎丸歩。ワールドカップ効果とフランス移籍報道などを語る【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
当日はタッチキックがスタンドへ飛ぶや、黄色い声援。写真は都内イベント参加時のもの(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

2015年の顔が出場した試合会場の東京・秩父宮ラグビーには、公式記録で「22843人」のファンが集まった。

12月26日、日本最高峰トップリーグのリーグ戦・グループBの第7節があり、五郎丸歩がヤマハのフルバックとし て先発。後半4分のトライを含む18得点を挙げ、キヤノンを33-19で下した。リーグ戦通算83得点をマークし、3季ぶり3回目の得点王に輝いた。

今年の9、10月は、日本代表の副将としてワールドカップイングランド大会で3勝を挙げた。9月19日には過去2回優勝の南アフリカ代表から大会24年ぶりの白星を得るなどし(ブライトンコミュニティースタジアム、スコアは34-32)、ゴールキッカーの五郎丸は時の人となった。

この日は後半4分、敵陣ゴール前右でのラインアウトモールから大きく展開された球を受け取るや、左中間のゲインラインを破ってトライ。他には2本のコンバージョン、2本のペナルティーゴールを決めた。

早稲田大学を経て2008年にヤマハ入りした五郎丸は、今季の国内シーズン終了後は南半球最高峰のスーパーラグビーへ参戦。オーストラリアはレッズの一員として、日本拠点チームのサンウルブスとの対戦も期待されている。

以下は、試合後会見での一問一答。

――まず、大観衆のなかで試合ができた感想から。

「満員のなかでやるのは、大学時代の早慶戦以来です。日本のトップであるトップリーグにたくさんの方が来ていただき、応援していただくのが、スポーツの理想の形だと思います。そういった形のなかで試合ができて、非常に嬉しく思います。バスで会場に入る時、すでに外苑前駅の前から列ができていて…嬉しかったですね。選手としては力になります。キヤノンさんもヤマハも、高いモチベーションで試合ができた」

――五郎丸さんにとって、どんな1年でしたか。

「僕だけでなく、ラグビー界にとって飛躍できた年だと思います。いま、応援に来ていただいている方に、2019年(ワールドカップ日本大会)やその先に向けて注目していただけるか…。選手としてはプレーで魅了できるように、しっかりと努力したいです」

――7戦連続先発中。疲労がたまっているなか、いいパフォーマンスができているように見える。

「先週、神戸製鋼さんにやられまして(12月19日、静岡・ヤマハスタジアムでの第6節で14―43で大敗)、そこからチームとしていいリカバリーができた。短いシーズンながらでもすぐにリカバリーすることは、トップに残るための最低条件だと思います。その意味では、チームとして日本選手権で優勝できた経験は大きかった。まずは昨季に獲れなかったトップリーグ(の王座)を狙って行けるよう、その先の1試合に向けて目の前のことをがんばりたいと思います」

――順位決定トーナメントでのカギは。

「ヤマハは先を見てチーム作りができるわけではないので、目の前の1戦1戦に勝っていくことが大事だと思います」

――後半4分のトライを振り返ってください。

「まずはアドバンテージがあったので、思い切って攻められた(起点のモールで相手が反則も、レフリーの判断で流れが止まるまでプレーが継続できるようになっていた)。(センター宮澤正利からのパスを)僕がもらった頃には(自身の正面からみて相手の対面の守備が)半分、ずれていた。そこで行こう、と判断しました」

――ワールドカップを経験したことでの変化は。

「安定感が増したかなと。波が少なくなりましたし、キックに関しても安定した前半節だったと思います」

――視野が広くなった感覚はありますか。

「どうでしょうか。長年、色々な経験をさせてもらっているので、ゲームの流れは年々、見えるようになってきたとは思います」

――(当方質問)安定感、なぜついてきたように思われますか。

「この4年間、世界で勝つためには…ということでやってきたのですが。世界のトップを見ると、やはり安定感があるというか、波が非常に少ない。悪い試合をした後にすぐにリカバリーできる。そういったところ(境地)を目指してやってきたからだと思います」

――(当方質問)きょうマッチアップしたキヤノンのフルバック、ウィリー・ルルー(現役南アフリカ代表)はいかがでしたか。

「いやぁ、ランニングがいいですね。やっぱり。なかなか止めにくい。僕とはタイプは違うのですが、参考になる。刺激になりました」

――きょうの大観衆のなかには、ソフトバンクホークスの内川聖一選手が「五郎丸選手のプレーを観たい」と来場されていたようです。

「嬉しいです。内川選手にだけでなく、観に来ていただいた方に何かを感じていただけたらなと思います」

――得点王へのこだわりは(取材時は他会場の結果が出る前だったため、未確定)。

「獲りたいですね。こだわらないことはないです。個人のタイトルもチームのタイトルなので、チームの力になれた証を証明したい。その気持ちは常にあります」

――清宮克幸監督は「ノブレス・オブリージュ(社会的地位による責任)で責任感が増した」と褒めていたが。

「環境が人を変えるではないですけど、これだけ注目されているなかで自然と行動も変わると思います」

――注目されることへの疲れは。

「あまり、ないんですよね。僕だけじゃなく、日本代表が2019年に向けて注目されるように色々と取り組んできた。いま注目していただいていることは光栄なことだと思います」

――今年を漢字一字で振り返ると(場内、笑)。

「どうだろう…。飛躍の『飛』ですかね。ヤマハとしても日本選手権で初のタイトルを獲りましたし、ワールドカップでもベスト8へはいけませんでしたけど、3勝を挙げてスポーツ史に残った。これは喜ばしいことです。これほど国民の皆さまに注目していただいたことは過去、なかったことです。ラグビー界が注目されるなか、何を与えられるか、この4年間、考え続けなきゃいけない」

――海外へ行く来年を、漢字一字で表すと。

「初心に返るという意味で『初』ですね」

――自分、およびチームで、これから上乗せする部分を。

「ヤマハとしては、まだ波が激しいと思います。ここから何か上積みを作るのは難しいと思いますが、いかにいいパフォーマンスを出し続けるか、けが人を出さないか…それがキーとなる。(個人的には)先のことは考えないと言いつつも、少し変化をつけないといけないとは思います。その辺(目先の試合への準備と来編以降への準備)のバランスをしっかりと取っていきたいです」

――個人的な「変化をつける」。体重ですか。

「そうですね。そんなに大きくする必要はないですけど、ワールドカップの頃くらいにはできればと(帰国後は公式記録よりやや軽い体重でプレーしているとされる)」

――フランスリーグのトゥーロンがオファーを検討しているという報道があったが。

「初めて聞きました。びっくりしています。まあ、そうなればいいなと。オファーをもらえるのは、どこのチームからであっても嬉しいと思います。トゥーロンだからどうこうではなく、海外からのオファーをもらえるのはありがたい。それが実現すれば喜ばしいことですね」

――フランスリーグへの印象は。

「わかりません!(場内、笑) トップリーグでいっぱいいっぱいなので」

――サンウルブスへの所感。

「僕はいち選手ですし、サンウルブスの選手でもない。僕が何かを言うのは控えたいと思います」

――安定。それを実感するのでしょうか。

「チームや観に来ていただいた方が一番期待していただいているキック。そこに安定感が出ているかと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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