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元エディージャパンの田邉淳バックスコーチ、パナソニックの好調&代表選手秘話を【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
現役時代の田邉。プレースキッカーとしても活躍した。(写真:アフロスポーツ)

ラグビーワールドカップイングランド大会の日本代表を5人擁するパナソニックは、今季の日本最高峰トップリーグで開幕4連勝を飾った。12月5日、埼玉は熊谷ラグビー場。NTTコムとの全勝対決を35―28で制した。

かつてオーストラリア代表を率いたことのある就任2年目のロビー・ディーンズ監督が率いるチームは、現在、トップリーグで2連覇中。前年度にプレイングコーチを始め、今季から始動に専念する田邉淳バックスコーチが強さの秘訣を明かした。

田邉は現役時代、パナソニックの正フルバックとしてプレー。身長171センチ、体重76キロと小柄ながら、陣地を取り合う際の的確な位置取りや正確なプレースキックで存在感を示した。2010年に32歳で初の日本代表入りを果たし、12年、エディー・ジョーンズヘッドコーチが率いるジャパンへも参画経験がある。

15歳の頃から約9年間、ニュージーランドへ留学していた。語学力を活かし、代表選出の前には時の指揮官に選考基準を英語で質問していた。

現在はディーンズ監督のもとで選手の指導にあたり、イングランド大会を戦った堀江翔太キャプテン、田中史朗の影響力を客観視。「日本人初のスーパーラグビー(南半球最高峰リーグ)のコーチ」を目指している。

以下、NTTコムを破った直後の一問一答(すべて当方質問)。

――強いですね。

「(会釈)」

――相手も局面ごとに粘っているが、結果的にパナソニックが攻撃を継続してトライを取っている。なぜ、そうできるのでしょうか。

「一番、大きいのは、メンタルの部分ですね。例えば今週の試合。前半は取れるところで取れなくて(球を回しながら、相手の守備に阻まれ落球する場面があり)、フラストレーションはたまるところでした。ただハーフタイムに、自分たちの形(練習で積み上げたスキルや戦術を遂行する状態)に戻すよう修正できた」

――課題は。

「失点、ペナルティーが多すぎる。昨季は最も失点の少ないチーム(リーグ戦期間中、1試合平均14.4失点)だったのですが、今年はちょっと多いですね(ここ4戦で1試合平均22.0失点)。フェアプレー賞(トップリーグで年間の反則数が最も少ないチームへ贈られる)からもいまのところ程遠い。それが、いま苦しんでいる理由です」

――ペナルティーについては、適正なジャッジがなされないことへのフラストレーションも聞かれますが。

「そんなこと、コントロールできないですからね。人がさばいているのだから。ワールドカップでも、1つや2つのミスジャッジはあったじゃないですか。コントロールできないものを、コントロールしようとしない」

――ディーンズ監督と仕事をして感じることは。

「人との付き合い方は勉強になります。特に選手との、です。選手主体にさせようとしている」

――ジャパン組がチームへ合流したことでのプラスアルファは。

「かなり、あります。僕の現役時代の頃もそうですけど、小さいことを積み重ねていっていまに至っている。大きく変化しているわけではないけど、この積み重ねがこのチームのいいところだと思うんです。そこへ、今回ワールドカップで成功(史上初の1大会3勝)した選手たちが新しい積み重ねをしている。今季は(リーグ戦が)7週間しかない。全体練習が週に3回だとしたら、(7週間で)21回しかない。その練習をただの練習にしない。試合を見据えてやっていかないとだめだということをわかっているんです。僕らとしては、助かります」

――練習中、皆が1つひとつのプレーの緊張感や精度を保てるよう促す存在、ですね。

「そうですね」

――そういえば…。日本代表の活動期間中、堀江選手は田邉さんに「バックスのディフェンスの仕方」を聞いていたようですね。何人かの選手は「似ていただけ」と言いますが、堀江選手は「全てではないが、(代表の守備システムには)少しパナソニックの血を入れた」と各種インタビューで振り返っています。

「ああ、そうですね。ちょくちょく質問されましたね。僕も(ジョーンズヘッドコーチの代表では)プレーしていたので、スタイルもわかりますし(ジャパンの状況を踏まえた指導の仕方を伝授できた)」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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