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南アフリカ代表撃破前&撃破後 日本代表・山田章仁はかく語った【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
相手のルワジ・ンヴォヴォを止める山田。守備で貢献。(写真:ロイター/アフロ)

4年に1度のワールドカップで過去24年間も未勝利だった日本代表は、今秋の同イングランド大会で、史上初の1大会複数白星となる計3勝を挙げた。目標としてきた準々決勝進出は果たせないなか、ファンを沸かせた。3勝しながら予選突破が叶わなかった例は今回が初。

なかでも今大会の「最高の瞬間」に選ばれたのが、南アフリカ代表との予選プールB・初戦。9月19日のブライトンコミュニティースタジアムでおこなわれたこのゲームで、ジャパンは過去優勝2回の大国を34-32で下した。

日本代表の背番号「11」は、30歳の山田章仁。22歳の藤田慶和、23歳の福岡堅樹らと定位置争いを強いられていた。

国内屈指の花形選手だった。高く飛び上がったり、相手の目の前で回転したりと、慶應義塾大学時代から奇抜な走りでファンの喝さいを浴びてきた。

2010年度にホンダから三洋電機(11年度からパナソニックに名称変更)に加入すると、日本最高峰のトップリーグで3度の優勝。いずれの折も短期決戦のプレーオフでMVPに輝いていた。結局、このゲームでもタックルの雨を降らせ、続く10月3日のプール第3戦では前半終了間際にトライを奪っている。

以下、南アフリカ代表戦前後の山田の一問一答の一部。

<試合前 9月17日の共同取材時>

――(テレビカメラの前で戦いの見どころを語る)。

「個人的にかゆい所に手が届くのが日本のいい所かなって思うので、相手のミスに逃さないところだったり、最大のチャンスのところへ行くことを…。それをやりたいです」

――(以下、ペン記者の囲みスペースへ移動)大勝負には、強い。

「その通りと言ったらおこがましいですけど、僕自身は観客が多ければ多いほど、舞台が大きければ大きいほど、好きなので。ワールドカップの初戦で南アフリカ…。これまでトップリーグのプレーオフなど大事な舞台で結果を残してきたのも、ここに出たい思いがすごく強かったから。試合をやってしまえば自分がしっかりできるというのもわかっている」

――何が大事になりますか。

「何も心掛けない。流行りのルーティーンなんかも、僕にはありませんし。さすがにスパイクは両足揃えますけど、言い方をちょっと変えると、あまりかしこまった準備をしない(別の場所では「自分と違った考え方の人がいてもいい、というのが僕の考え方です」と発言。つまりルーティーンそのものは否定していない)」

――南アフリカ代表へのイメージ。

「正直。戦ったことがないので、僕の心の画用紙は真っ白なままで戦いたい。情報はありますけど、そこに囚われたりせずに、自由に描きたい」

――対面は、今度が3大会出場となるエース、ブライアン・ハバナ選手です。

「彼より多く、テレビ画面には入りたい。そうやってボールに触りたい、と。終わった時に、観た人が『きょうは山田の方が動いていたな』となればいいな」

――(当方質問)ハバナ選手が対面とわかった時。

「どうせやるならビッグネームとか実力のある選手とやりたい。南アフリカもメンバー代表を揃えているので、嬉しいですね」

――(当方質問)イングランドへ来てから。

「やるべきことはやってきた。あとは試合時間を待つだけですね」

――初めてのワールドカップ。

「緊張はありますけど、楽しみたいなという思いもある。これから(キックオフまで)の48時間は(人生において)この先もやってきませんから、何もわからないまま楽しみたいなと思いますね」

――妻・ローラさんは応援に?

「こっちへ来て時差調整しています」

――キック処理やカウンター(ボールが動くなかで蹴り込まれたボールの活用方法)に関しては。

「ほとんどは五郎丸(歩副将、フルバック、山田が務めるウイングとともに最後尾の「バックスリー」という隊列を形成)の判断に任せてます。信頼して、彼のコールを聞いて判断する。お互い、これまで敵同士、味方同士でプレーしてきている。会場がうるさかったりしても、ある程度は理解し合えるんじゃないかなと思います」

――相手は強い。

「こういう時に思うのは、『お互いに100パーセントの力を出すと相手の方が強い。ただ、相手も人間。80、90パーセントしか出せないこともある』ってこと。勝機をつかむとしたら、まず自分が100パーセントの力を出すしかない。自分自身のパフォーマンスに集中する」

――(当方質問)初戦、個人的にも意味合いは深いはずです。

「全試合フル出場して活躍したいという思いがあるので、アピールする意味でも大事な試合になると思います」

<試合後 なおキックオフ後、ハバナは山田の対面とは逆側のサイドでプレー。質問は全て当方>

――ウォーミングアップのためにグラウンドヘ入った時の心境は。

「まだまだ人が少ないな、と。満員になってほしいなって思いがあった」

――その時、足の先で芝の感触を確かめる仕草をしていました。

「うん。(グラウンドは人工芝と天然芝の)ミックスということで、もうちょっと走りやすいかなと思ってたんですけど…。意外と滑る感じだった。(ウォーミングアップの後)ポイント(スパイクの裏のいぼ)を変えて。長めに」

――だから、選手入場の直後もちょこちょこと動いていた。

「そう、ですね。あれ(交換前のスパイクで)でウォーミングアップをしたので」

――世界屈指のフィジカルを誇る南アフリカ代表とぶつかり合って、どんな感触を。

「えーとね、1対1ではやれた感じはする。あとは、こちらがまとまれた(ことでの)勝利かなと思います」

――タックル、刺さりまくっていました。

「なかなかボールが回ってこないので、タックルくらいにはいこうかなと」

――退いた後、敵陣ゴール前でのスクラムからジャパンが最後の攻撃。ウイングのカーン・ヘスケス選手が逆転トライを決めます。退いた山田選手はベンチで観ていて…。

「スクラムを押し切ってほしいなって感じでした」

――勝った瞬間は。

「嬉しいというか、信じられないってことじゃないですか」

――「交代がなければ、自分が決勝トライ」とは思いませんでしたか(ヘスケス選手は山田選手と交代)。

「…そこは、まぁ、ね。誰が出てもレベルは落ちませんし、よかったんじゃないかなと」

――今回のゲームを受け、残り3試合でトライを取るために必要なものは何か掴めましたか。もちろん、相手が違うため参考になる要素は少ないと思いますが。

「今回もボールがもらえる位置にはいました。田中(史朗、スクラムハーフ)選手の近くでもボールをもらうことができたり。その回数を増やせばいいかなと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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