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中3日でスコットランド代表戦…ワールドカップ取材日記2【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
スコットランド代表戦で先発したマフィ。(写真:アフロ)

ラグビーワールドカップのイングランド大会が9月18日~10月31日まであり、ニュージーランド代表が2大会連続3回目の優勝を果たした。日本代表は予選プール敗退も、国内史上初の1大会複数勝となる3勝を挙げ、話題をさらった。

以下、日本テレビのラグビーワールドカップ2015特設サイトでの取材日記を抜粋(2)。

【9月21日】

「歓喜」の南アフリカ代表戦から中3日でおこなわれる予選プールB第2戦、スコットランド代表戦のメンバーを発表します。

空からは雨が降っています。ブツ。ブツ。ブツブツ。力感ある粒。僕は針金のはみ出た折り畳み傘を広げました。

早めについたつもりの会場へ行ったら、不覚にも、すでに質疑応答が始まっていました。チームスケジュールは前日に発表済みで、それをチェックしていたつもりが、どこをどう読み間違えたのか…。

それにしても、記者室には国内外のテレビカメラがざっと15~6台。立ち見の記者は僕以外に7~8人いました。アジアの小国が南アフリカ代表に勝ったことで、俄然、注目を浴びているわけです。

会見終了後はトランクを受け取り、電車に3時間以上ゆられて次なる滞在先へ。ジャパンの合宿地に合わせ、ウォリックに移ります。

【9月22日】

ウォリックの定宿から徒歩とで電車で計2時間。グロスターにたどり着きました。キングスホルムスタジアム。ロンドンの大型スタジアムとは違ったスペース感覚を味わいます。もっとも、真っ白なクラブハウス併設のグラウンドはレンガ造りの街の景観になじんでいて、この国におけるフットボールの価値を再確認できます。

この日は日本代表の試合前日練習。そう。23日に予選プールB第2戦があります。先立ってスコットランド代表戦も練習と記者会見があり、「日本の警戒すべき選手は」との質問には「ナキ」。19日の南アフリカ代表戦で途中出場した、ナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィ選手のことです。

午後1時15分ごろ。スタンドでジャパンの選手入りを待ちます。開始時刻から15分ほど押していましたが、バス到着の遅れがあったようです。

問題がひとつ、ありました。当方、「冒頭15分公開」の前日練習を観た直後に、日本のラジオの電話生出演という仕事があったのですが、この調子で「冒頭15分」を待っていたらオンエア時間に収まらない可能性が出てきました。先方のディレクターさんと電話で話すなか、「選手は来ていないですが、もう、繋いじゃいますか」との運びに。「お! いま選手が出てきましたよ! といった臨場感ある雰囲気も出していただければ」とも。

前日に用意した想定問答を頭のなかでリフレインし、スタジオとのやり取りのなかでリーチ マイケル主将の「学生時代はしばしグラウンドに落ちていた忘れ物を預かっていた」というエピソードを伝えたら一瞬、間があり、「あー、これ、伝わりませんでしたね」と話をぼかし、どうにか、終了。最後の最後には「お! いま選手が出てきましたよ!」も言うこともでき、何とか役目は果たせたでしょうか。

【9月23日】

ジャパンの相手はスコットランド代表です。よく晴れたスタンドで、キックオフの時を迎えます。

結論。10―45と敗戦です。中3日のゲーム。後半23分に攻め込んだ先で、インターセプトからトライを奪われました。肉体的疲労云々というより、「(スコットランド代表戦に向けて)ボールを回すプランだったのですが、それに引っ張られすぎたかな」と某選手。試合ごとに打ち出すゲームプランの共有、状況を見定めてそのプランを覆す修正能力の醸成…。そのあたりが、短期間では準備しきれなかったのでしょう。田中史朗選手は、ミスした理由を「コミュニケーション」だと言っています。雑然としたミックスゾーンで声を絞ります。

「インターセプトされたところも、外(パスした選手から観て、パスを受け取るはずだった選手よりも向こう側に立つ選手)から『ボールキープ』と声を出していたら起らなかった。疲れている時でもしっかり喋って…」

もちろん、試合ごとにゼロからプランを組み立てていたわけではありません。いまのチームは、南アフリカ代表戦勝利でワイドショーに取り上げられる4年も前から個人スキルおよび組織のベースを練り上げています。今回の準備の祖語は、例えるならこういうことでしょうか。

慌てて出かける朝。自分のワードロープからお気に入りの服を順に身に付けて出かけて、電車に乗ったあたりでコーディネートのちぐはぐさに気づく…。あ、違うか。

最も大きな懸念材料は、相手にも注視されていた「ナキ」ことアマナキ・レレイ・マフィ選手の故障による退場でしょうか。やや足を引きずりながら、強烈なラインブレイクを2発、決めた直後、プレーの合間に耐えきれず、うずくまりました。そのままタンカで退場…。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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