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どこよりも早い? ラグビーワールドカップ決勝&3位決定戦プレビュー【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
17日、カーディフ・ミレニアムスタジアムでの準々決勝では、3トライのサヴェア。(写真:ロイター/アフロ)

ラグビーワールドカップのイングランド大会は、いよいよ最終週が近づいている。10月30日にはロンドン・オリンピックパークで南アフリカ代表とアルゼンチン代表との3位決定戦が、そして31日には、同・トゥイッケナムスタジアムでニュージーランド代表とオーストラリア代表との決勝戦がおこなわれる。

2大会連続4回目の決勝戦となるニュージーランド代表は、2連覇となる通算3回目の優勝を狙う。一方、ファイナリストとなったのは3大会ぶり3回目のオーストラリア代表は、4大会ぶり3度目の王座を狙う。

<3位決定戦 南アフリカ代表 対 アルゼンチン代表>

予選プール初戦で日本代表に6大会ぶりの白星を献上した南アフリカ代表だが、それ以降、過去2回の優勝をもたらした底力が覚醒か。半身で当たっていたボール保持者が一様に正面衝突を重ねるなど、1対1の制圧を起点に試合を運ぶ。

スクラムハーフのフーリー・デュプレア、スタンドオフのハンドレ・ポラードが空いたスペースにキックを蹴ることで、力自慢が省エネをしながらパワープレーに集中できる。優勝を逃し意気消沈の面持ちだが、これまでの実力を発揮できさえすれば視界は良好。

同国の過去最高に並ぶ3位を狙うアルゼンチン代表は、まず、スクラムに活路を見出したい。両フランカーが極端に中央に力を向ける組み方には、決勝トーナメントでぶつかったアイルランド代表、オーストラリア代表も手を焼いていた。南アフリカ代表のパックも強力ななか、レフリーとの円滑なコミュニケーションも意識し、優勢に運びたい。

攻撃ではウイングのサンティアゴ・コルデーロら快足ランナーが守備網を破れる。直後に二の矢、三の矢を繰り出したら得点が生まれそうだが、起点となる接点では南アフリカ代表のフォワード陣が待ち構えるだろう。正確性と連続性は必須となる。

<決勝戦 ニュージーランド代表 対 オーストラリア代表>

「オールブラックス」の愛称で知られるニュージーランド代表は、24日、トゥイッケナムスタジアムでの準決勝で南アフリカ代表に20-18で勝利。今大会では初めて苦しい接戦を制した格好で、スティーブ・ハンセンヘッドコーチは「今日のようなぎりぎりの試合で、チームの落ち着きぶりには満足している」と振り返る。

圧力がかかるなかでもぶれない基本技術、個々のフィジカル、複数ある選択肢のうちその場で最も的確な攻撃陣形を象る組織的判断力など、チームの総合力は他を圧倒。並み居る守備網を力業で突っ切るウイングのジュリアン・サヴェアは、ここまで今大会最多の8トライを挙げる。決勝戦の働き次第では、競技史に名を残しうる。

一方、「ワラビーズ」と呼ばれるオーストラリア代表は、25日にトゥイッケナムスタジアムでアルゼンチン代表を29-15で制した。マイケル・チェイカヘッドコーチは「チーム全員が国のためにプレーしている。今までの道のりが完璧だったわけではないが、とにかく忠誠心がすごい」と話す。

勝機を見出す鍵は、土俵際での粘り腰か。フランカーのスコット・ファーディー、マイケル・フーパー、ナンバーエイトのデイヴィッド・ポーコックが接点の球に絡みつくことで、どうにか王者の波状攻撃を分断したい。セットプレーは相手ボールスクラムで反則を重ねるなど、数字に表れないまでもかなり苦戦を強いられている。最終局面に向け、どこまで整備されるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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