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ワールドカップ・サモア代表へ 日本代表・リーチ マイケルの「犠牲」になる覚悟【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
大会前、「俺が仕切るところを増やしていきたい」。悔いのないキャプテン生活を。(写真:アフロ)

ラグビー日本代表は10月3日、4年に1度あるワールドカップのイングランド大会の予選プールB・サモア代表戦に挑む。1日、共同取材機会の場に現れたリーチ マイケルキャプテンが抱負を語った。

身長190センチ、体重105キロのリーチキャプテンはこれまで2試合連続でフル出場。ランナー、タックラーとして、攻守両面で活躍している。

北海道・札幌山の手高、東海大を経て東芝入りし、今季は南半球最高峰であるスーパーラグビーのチーフスでレギュラーを獲得。ワールドカップは今度で2大会連続出場となっている。10月7日に27歳の誕生日を迎える。

チームはここまで同プールで1勝1敗、総勝ち点を4とし、5チーム中暫定3位。9月19日の南アフリカ代表戦(ブライトン・コミュニティースタジアム)を34-32で制しながら、続く23日のスコットランド代表戦(グロスター・キングスホルムスタジアム)は落としている。決勝トーナメントに進む上位2チーム以内に入るには、次戦での勝ち点5奪取がほぼマストとなる(勝利で勝ち点4、4トライ以上のダッシュで勝ち点1)。

もっとも今後の2試合で得られる最大の勝ち点を加算しても14に止まり、南アフリカ代表が残り2試合で勝ち点5を獲得すれば勝ち点17。さらにスコットランド代表が南アフリカ代表だけに敗れた場合の最大の勝ち点も17。他チームの状況によっては、ジャパンは残り2試合を勝っても決勝トーナメントに進めない可能性がある。

以下、共同取材中のリーチキャプテンの一問一答の一部。

――チーム状態は。

「チームは4年前(前回のニュージーランド大会)の時に比べたらいい。あちこち、痛いところはあるけど、大きなケガ人はいない。試合には影響しないと思います」

――ご自身の体調は。

「(笑みを浮かべ)問題ないです」

――サモア代表について。

「サモアのチームのなかでも一番気をつけなきゃいけないのは、10番(スタンドオフ)のトゥシ・ピシ、15番(フルバック)のティム・ナナイ・ウィリアムズ。この2人は特にキーになります」

――守備の練習でも、仮想キーマンとなる相手に向かって「ティム」「ピシ」などと名前を叫んでいた。

「名前を出すことが、相手へのプレッシャーになるから。サントリーの選手やエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は、ピシの性格をわかっている(ピシはサントリー所属。ジョーンズHCのサントリー監督時代にも在籍)。プレッシャーにあまり強い選手じゃないから、どんどん彼にプレッシャーをかけたい」

――大一番。何をすべきか。

「自分が一番しないといけないことは、自分の身体を犠牲にすること。タックルだったり、ブレイクダウン(密集戦)で激しくいかないと。相手がボールを持っている時にどこまで前に出られるか。そこがキーになります」

――選手にかけている言葉は。

「常にディシプリン(規律)とハードワークを、と。この2つについて声をかけています。この2つをすれば、大丈夫です」

――試合当日に向け、心身の状態をピークに持ち込みたい。

「南アフリカ代表戦に向けて、(2日の現地入りから当日まで)時間があって、ピーキングがすごく上手くいった。ただ、そこから中3日でのスコットランド戦にピーキングを持って行くのは、大変でした。

今回はまた中9日、ある。方法としては、これまでの2試合を忘れて目の前のサモア代表にどう勝つかに集中。今日の練習の入りはよくなかったけど、練習の時に失敗をして『次はやらないと…』と気持ちを持って行けたから、その意味ではチームの状態はいいです」

――キーワードは他に。

「我慢、こちらが焦っていつもやらないプレーをし出してしまったら、一気に崩れてしまう。それを我慢して、耐えて、いつか相手がばてたら仕掛ける。相手の試合を分析すると、倒れ込みの反則はあるけど、ブレイクダウンは強い。こちらはレフリーにいい印象をつけるため、ディシプリンンのある正しいプレーをする。サモアに勝つためにはワークレートも必要。タックルして、すぐ立ち上がって…。その繰り返し。ハイパントへのチェイス、サポートも含めてです。ずっと4年間、エディーが厳しい目で見てきた。(献身的に動く)いい癖はついています。ただ、それをもう1回思い出すために、練習中からその言葉(ハードワーク)を出しています」

――この試合の持つ意味。

「とても重要な試合です。いまの代表が立ち上がった頃からベスト8を目指してきた。選手のなかでもこの試合の大事さはわかっているし、勝たないと目標を達成できない。ただ、勝つことにフォーカスし過ぎず、やるべきことをやる。結果、勝ったら、次の試合へのメンタルづくりもしやすくなるし、目標にも近づく…と」

――(当方質問)28日月曜、集中力を高めるために必要なプロセスがあったようですが。

「これまで南アフリカ代表とやった後も、スコットランド代表とやった後も、切り替えよう、切り替えよう、と言い続けていた。ただ、何人かが切り替えられてなかったから…。その雰囲気を見て、エディーが『集中しろ』と。それを言われてから、スイッチが入って、サモア代表戦に集中しています」

――久々に見る厳しさでしたか。

「いや、いつも通り厳しいです」

――(当方質問)そこから、変わった。

「それまではまだ南アフリカ代表戦の話題も出ていた。ただ、そのことがあってからは話す内容がサモア代表戦のことだけになった。次の試合がどれだけ大事か。1人ひとりがわかって、集中しています」

――ベスト8進出は、他チームの試合結果次第という側面もあるが。

「そこは自分たちではコントロールできない。ただ、自分たちの勝つことに集中する。それを第一に」

――4トライ以上によるボーナスポイント獲得も必須だが。

「試合が始まったら考えるかもしれないですけど、勝つことに集中」

――3トライを取っていてリードして、残り数分。敵陣でペナルティーキックを得たら、ラインアウトやスクラムなどトライを狙う選択も…。

「残り10分だったら、何が起こるかわからないのでショット(ペナルティーゴール、決まれば3点追加)を選んで確実に勝ちに行く。10分だったら、サモア代表はぽん、ぽんと取れる。10分は、長すぎる。5分だったら、トライを狙うかもしれない」

――(当方質問)では、序盤はペナルティーゴールで加点するイメージか。

「(頷く)チームを落ち着かせるためにもショットを狙う。モールの状態を見たいので、状況によって(直後にモールを組みやすいラインアウトを選ぶことも)考えるとは思いますが…」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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