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最後のスコットランド代表戦へ。日本代表トンプソン ルークが決意込める【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
南アフリカ代表戦勝利後の談話は「まだ、信じられへん」。

ラグビーワールドカップ開催地のイングランドに来て残念なことは、刺身が食べられないことだという。

――刺身。好きなんですね。

「ああ。もちろんだよ!」

トンプソン ルーク。ニュージーランド出身の34歳だ。南アフリカ代表を34-32で下して話題沸騰中の日本代表の一員で、ワールドカップへは今度で3大会連続出場となる。ラグビー発祥の地であるイングランドでは「国内と比べ食事に難あり」とされていたが、周囲のスタッフの計らいもあって「問題ない。ふりかけもあるよ」とトンプソンは笑う。

ブライトンで自身の大会初勝利を挙げる前に、こんな風に語っていた。

「むっちゃ、楽しみ。ワールドカップは、一番レベルの高い大会だから…」

会話が続けば、自然と大阪府民然とした口調となる。別に謝る必要はないのだが、「あ、ゴメンナサイ。また関西弁、出てしまった」と標準語で言い直すこともある。

ニュージーランドはクライストチャーチで生まれた。当時の国内州代表選手権では、名門とされるカンタベリー州の代表にも選ばれたことがある。しかし、プロとしての選手生命には限りがある。短期間でキャリアアップのきっかけを掴むべく、さらなる存在感を示す場所として日本を選択する。2004年のことだった。

国内在籍2チーム目となる現所属先の近鉄では、クラブ史上初となる海外出身者の主将も経験した。2010年には日本国籍を取得。身長196センチ、体重108キロの体躯で空中戦、地上戦に身を投げる愛称「トモさん」は、今年で来日12年目となる。

現指揮官のエディー・ジョーンズヘッドコーチにはこう評される。

「毎回、身体を張って戦っています。足首もねじ曲がっていて、それでも毎週100パーセントで戦っています」

――ボロボロでも、戦える。なぜ。

「周りの人のおかげだよ。代表やチーム(近鉄)のメディカルやスタッフ…。おかげで大きなけがをしないでできているから。いままで、すごくいい選手なのに怪我で引退している人もいるのに」

決意がある。「めっちゃ、楽しみ」との談話を残した共同取材機会では、聞かれるでもなくこう明かした。

「今度は、僕の最後のチャンス…」

ワールドカップは、今度が「最後」だ、と。周囲の記者が「4年なんてあっと言う間だよ」などと軽口を叩いたところ、「トモさん」は下を向いたまま「いや、最後」と続けた。

「楽しみ。そして、勝ちたいって感じる。いまのチームはすごくいい感じ。私たちの準備は、前よりもレベルアップしている」

決然たる思いは、間違いなく他選手も気づいていよう。例えば…。

「すごく頼りになる選手。キャッチング、本当に正確ですよね。チームの戦術を理解して、そこへ忠実に動いてくれる」

同じロックでこちらも3大会連続出場の大野均は、こう、共闘宣言をしていた。

「まさか、3大会連続で一緒に出られるとは思ってなかったのですけど、彼と試合に出られるのは嬉しいです。一番激しくなきゃいけないロックのポジションで、一緒に役割を果たしたい」

23日、グロスターはキングスホルムスタジアム。ワールドカップの予選プール第2戦をおこなう。スコットランド代表とぶつかる。苛烈な肉弾戦が続いた南アフリカ代表戦からわずか4日後に、欧州6強の一角を相手にするわけだ。簡単ではあるまい。初戦でフル出場した34歳の「トモさん」は、次も、先発する。

「私、30過ぎてるけど、元気です」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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