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エディー・ジャパン初代副キャプテン、佐々木隆道が語る離脱の背景【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
2012年度のジャパンでプレーする佐々木。トンガ代表のパワーを痛感。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

4年に1度のラグビーワールドカップは9月18日、イングランドで開幕する。日本代表は19日の南アフリカ代表戦を皮切りに予選プール計4試合に臨み(以後はスコットランだ度代表、サモア代表、アメリカ代表)、6大会ぶりの勝利と初の準々決勝進出を目指す。

現指揮官のエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)が就任したのは2012年。その新チーム発足時に副キャプテンを務めた1人が、フランカーの佐々木隆道だ。

ジョーンズHCとは前年度まで、所属先のサントリーで監督と選手の間柄だった。身長184センチと決して大柄ではなかったが、運動量と接点での巧みなサポートプレーで指揮官からも「世界で通用するオープンサイドフランカー(フランカーのなかでも、密集でのサポートプレーに徹する)に…」と期待されていた。

同年春のツアーを最後にジャパンからの離脱を余儀なくされたが、現代表の大舞台での躍動を心待ちにしている。

以下、単独取材による一問一答。

――31人の登録メンバーを見た時の印象。

「強いなぁ、と思いますね。コンタクトで世界と戦える選手。バックスは足が速くてスキルフルで、一番うしろには、スーパーキッカーがいますから」

――スーパーキッカーは、早稲田大学の2学年後輩でもある五郎丸歩副キャプテンのことです。やりとりはありますか。

「ないです。もともと、メールだの電話だのをする後輩がいないんですよね。僕。あまりまめなタイプではないので。でも、いつも応援しています」

――2012年の現体制発足時、佐々木選手と五郎丸選手の2人で副キャプテンを務めていました。

「ゴローは、一貫して芯が強い選手。ぶれずに成長したんだな、と思います。リーダーシップもありますし、自分のルーティーンをしっかり持って、いつもいいパフォーマンスを出すところに成長を感じますね。ここ最近、すごくいいんじゃないですか」

――9月5日、ジャパンは現地でジョージア代表戦とウォームアップマッチをおこない13―10で勝利。五郎丸選手も安定したプレーが光りました。

「期待できますね」

――本番でも、本来の力が発揮できそう…。こう思わせてくれたような。

「いまのジャパンのメンバーって、全員、その辺は大丈夫だと思いますよ。最近のリーチ(マイケル、キャプテン)の言葉を聞いても、歴史を変えるんだという意志が伝わる。観ていてもわくわくします。上手くいっているな、と。

…でも、ジャパンのキーは、スクラムですからね。スクラム推し、しといてください。スクラムに勝ったら、ゲームを支配できます。本当に試合を左右すると思いますよ」

――ジャパンのスクラム。どうなりそうですか。

「押すと思いますよ。ある程度。サモアまでは何とかなります。注目して観て欲しいですね。(複雑なため観方は)難しいですけどね」

――ジョージア代表戦。反則を取られたものも含め、決して悪い内容ではなかった。

「そうなんですよ。中に入ってプレーしていた選手は違った意見を持っているかもしれませんけど、めっちゃでかいジョージアとあれだけイーブンで組めるって、大分、いいですよ。期待できます」

――そのスクラムをリードするフッカーの堀江翔太副キャプテンは、南半球最高峰であるスーパーラグビーでプレーした経験から雑誌の取材で「南アフリカ代表を押せる」と発言しています(その後、当方取材に「言ったことは覚えていないけど、そのつもりでやる。まとまりゃ押せるってこと」と返答)。

「それくらいの自信はあると思うんです。フィールドではコンタクトの強さをもろに受けるかもしれませんけど、(お互いが塊になってレフリーの合図で組み合う)スクラムは、そういうものでもないですからね」

――スクラムでも、後方からのフランカーの押し込みが重視されています。

「(マルク・ダルマソスクラムコーチ就任後の)いまのチームに関わっていないのでわからない。ただ、ハタケ(畠山健介、プロップ)は(所属先の)サントリーに帰って来てからも、スクラムで『フランカー、押せ』と言ってくる。それだけ、8人全員で押すという意識が必要なんじゃないですかね。(フッカーとプロップは)後ろからの重みをいかに相手に伝えるか。僕の押しは、まだ(畠山ら)皆さんには満足いただけないようですが! 彼らが帰ってきた時に『押し、いいね』と言ってもらえるように成長しておきます」

――チームは公式発表の5日前、登録メンバー31人を決定。合宿に参加していたそれ以外のメンバーを、離脱させました。

「エディーは勝つために必要なことをする監督なので。エディーがその判断をしたのだったら、何か意図があってのことと思いますし、それに関しては何も意見はないです」

――「勝つために必要なことをする」。そう確信したのは。

「サントリーの時からそうですし。自分が代表に定着できない理由は…そこにもあったのかな…とは思います」

――と、いうと。

「ナキ(=アマナキ・レレイ・マフィ、ナンバーエイト)とか、観てください。むっちゃ、すごいじゃないですか。コリさん(=ホラニ龍コリニアシ、ナンバーエイト)も、リーチも、ツイ(ヘンドリック、フランカー)も、(フランカー、マイケル・)ブロードハーストも。日本代表としていま向こうに行っているバックロー(フランカーを含めたフォワードの第3列)は、そういう、人なんですよね。これは国籍に関係なく。勝つためのメンバーです。自分は、そこのレベルに全然、行ってないなと思うんです。普通のパフォーマンスではなく、いいパフォーマンスを出さないと、テストマッチでは勝てないんです」

――佐々木さんが外れたあたりから、ジョーンズHCは「日本にオープンサイドフランカーというポジションはありません」と言うようになった。同時に、佐々木選手が挙げられたようなナンバーエイトやブラインドサイドフランカー(フランカーのなかでも好守で力強いプレーが求められる)を務める選手を並べています。

「そうですね。僕もエディーとはメールでやり取りはしていた。『こういう部分を伸ばせば、インターナショナルレベルに入っていける』とか。でも、そこに到達できなかったんですよね。それは日本人全体に言えること。強くするのは、自分たち。選ばれちゃうような選手になっていきたい」

――指針に挙げられていた「体重3ケタ」は到達した。

「でもね、ぎりぎり3ケタじゃきついですよ」

――例えば、同じフランカーのリーチ マイケルキャプテンをひっくり返すようなインパクトが必要。

「ほんと、そうです。いまの日本代表って、スーパーラグビーで活躍する選手がごろごろいるじゃないですか。リーチも、田中フミ(史朗、スクラムハーフ)も、堀江も。そういう選手の集団なんですよ、日本代表って。だから、期待してるんですよね」

――そのメンバーに加わろうとは。

「やろうと、努力はしました」

――以前、いまのジャパンを「全力で応援する」と語ったことがあった。それは再び仲間に入ろうと努力したからこそ、強くそう思えるのですね。

「すごいな、という選手ばかりなんで。尊敬の意味を込めて全力で応援しています。こんなにハードワークしているのは、日本を含めて、世界中で彼らだけだと思うんです。特に誰に、という個人的な感情はないです。ただ、このチームには期待しています」

――田中選手がチームメイトに「勝つ気があるのか」と問うなどしても、おそらくチームワークは保たれている。

「それは、皆が田中を認めているからじゃないですか。勝ちたい選手の言葉でチームがばらばらになるとは、僕は思えないです。学校の部活とかやったら話は変わりますけど、皆、日本のラグビーの代表選手ですよ。それでばらばらになったら…日本のラグビーの価値って、本当にしょうもないですよ」

――田中選手の「エディーとは一度、(練習方針などについて)話をしたい」といった旨の発言を取り上げた記事には、「不協和音」という見出しも踊りました。

「不協和音って思うんだ、って感じでした」

――絶対君主でいてもいいはずのジョーンズHCが、田中のエネルギーの発散を許している。

「それは、田中がスーパーラグビーで結果を残しているから。他の選手が言ったら、雷を落とされますからね。ふふふ。役割はあるんですよ」

――力がある選手の強烈な個性は、スポイルしない。

「何かあれば、直接話すと思うんで」

――いずれにせよ、苛烈な選手が1人いると物語が生まれます。

「僕も、ああいう選手がどんどん出てきてほしいですよ。僕も、いいな、と思います。ああいう選手」

――最後に、日本最高峰のトップリーグでのお話を。母校の早大で直接指導したこともある布巻峻介選手がパナソニックの新人としてプレーします。同じオープンサイドフランカー同士、直接対決の可能性もありますね。

「楽しみですね。日本を代表する選手に成長してもらいたいです。ちょっと痩せましたよね。いいと思います。パナソニックには西原(忠佑、パナソニックの正オープンサイドフランカー)君がいますから、その競争に勝って出てくるのだとしたら、布巻もトップ選手なのだと認めざるを得ないです」

――その意味では、西原選手への評価も高い。

「いい選手だと思いますよ。というかね、この年になると、皆、いい選手だと思っちゃうんですよね。皆、すごいなぁ。そういうなかで自分の色を出して、若い奴には負けない…。こういう感じでやっています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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